07〜個室に連れ込まれ服を脱げと言われた!

私はスカートから伸びた細くて白い太腿の誘惑に抗えずに、美人の坂倉さんの言われるがままに公園の公衆トイレに連れ込まれていた。


「脱げよ」

魅惑の太腿で私を誘い込んだ彼女の綺麗で可愛い声が、トイレの個室に響き渡る。


この状況、学校内で最強の美貌を誇る女子が、それとは正反対の並以下の容姿で乳首の色だけが取り柄の女子に脱衣指令を出すというシチュエーションが、どう理解すればいいのか分からずに棒立ちしていると、

「やっぱ家帰るか?」

と、気を遣って言ってきた。


「き…今日は…ダサい下着だし…」

などと言い訳をしたら、坂倉さんは呆れた顔をしたかと思えば、少し下を向いてちょっと震えている。


そして、おもむろに顔を上げれば、笑いを堪えてるような表情で、

「分かったよ、これだから処女は」

などと私の性経験がないのを馬鹿にするような言い方で脱衣指令を取り下げたのだった。


坂倉さんは私の怪訝な顔を認めたのか、優しい表情で頭を撫でて、取り巻きの持っていたバッグの中から他の高校の制服を取り出すと、それを渡して個室から出て行った。

いや、最初っからそうしろよ、とか思いながら着替えを始めると、外から

「残念だったな!」

と取り巻きが笑っていた。


何が残念…?


その取り巻きの中には、私と背格好が近い人もいたので、多分そののものだろう、着替えたらサイズは多少大きめだけどちゃんと着られたので、自分の制服を畳んで個室を出ると、坂倉さん以下取り巻き全員が一斉にこっちを向いた。


「山本、似合うやん!」

と何故かみんなに褒められた上、坂倉さんは私の肩に手を回して鏡の前に連れて行った。


「これで化粧すれば山本って分かんねーだろ」

私の横に顔を置いて彼女はそう言うが、それより不細工な顔の隣にそんな綺麗な顔置かれたら、めちゃ悲しいんですけど…


そうやって、ふたつ並んでいる、それぞれの顔面構造の段違いっぷりに哀れんでいると、ほんのり坂倉さんの頬の温もりといい香りが漂ってきて、悲しみよりも少し嬉しさが上回ってしまっているのを感じる自分がいた。


しかしそんな至高の時も長くは続かず、私は取り巻きのひとりに坂倉さんからひっぺがされてしまい、前髪をヘアクリップで留め上げられて動かないように言われていた。

いよいよ化粧をされるのである。


「山本、肌荒れてるな〜ちゃんと手入れしないからダメなんだぞ」

などと言われるも、大きなお世話だと思うけど、そうだよなぁ女の子はみんなスキンケアしてるんだろうなと、ちらっと究極に綺麗な肌の坂倉さんの顔を見てしまった。


「私は化粧したことないぞ」

透き通るような白い肌にぷっくら浮いた桜色の甘い味のしそうな唇から衝撃的な言葉が飛び出した。

そんな坂倉さんの言葉に取り巻きのひとりは、

「羨ましいよな〜莉里りりはすっぴんで私たちより可愛いし」

そう言って坂倉さんの顔をマジマジと見ている。


女子の人生の80%は顔で決まる。


昔に誰かが嫌味でそういうことを言ったのを思い出すが、確かにここまで差があると、あながち間違いでもないとか妙な説得力を私は彼女に見出すのだった。


「私は山本の顔の方がいいけどな」

またもや衝撃的な言葉を言い放つ美人の坂倉さん…

まぁ人には好みとかあるけど、それはこんな顔で人生送ってないから言えるセリフですよ…ほんと顔を交換できるならしてもらいたいです…


そんなことを話しながらも、つつがなく化粧は終わったようで、再び坂倉さんが私の肩に手を回し鏡の前に連れて行くのだった。

その鏡に写った自分は別人のようになっていた。


化粧は魔法。


魔法学校に通うのに授業に付いていけない出来損ないが、そんな感想を持つのも変だけど、あの不細工がここまで可愛くなれるのは本当に魔法のようで自分でもびっくりするのだった。


しかーーーーーーし、隣に並んでる究極の美貌な坂倉さんのすっぴんには全く及ばないのは、もう天が嫌がらせしてるレベルですね…


「これで髪型も、ちゃんとすれば…」

そう言って普段の何も手入れしてないボサボサな髪にブラシを入れて、前髪をヘアピンで留められて、完全に別人と化した自分がそこに写っていた。


「おめーっもしかして自分で結構イケるんじゃね?って思ってるだろ?」

などとすっぴんで遥かに美人で格の違いを遺憾なく発揮している坂倉さんが言っており、それは嫌味でしかないんですけど、と思っていたら、

「これじゃ斉藤に襲われるな!」

と取り巻きたちが騒いでいる、ああ、そういえば斉藤さんのせいで酷い目にあったのだ、と思い出して、少し憂鬱がぶり返してしまう。


他の人たちも別の制服に着替えて、私に制服を貸した人はそのままだけど、とりあえず準備ができたのでみんなで香林坊に向かうことになった。


むぅ…私もとうとう学生らしく青春するんだなーと、化粧で変わった自分と未知なる出来事に、多少は期待を膨らませずにはいられない。


取り巻きたちは、どこの店に服を見に行こうかとか、私に美味しいデザート屋さんの話とかしながら、やがて目的地近くにやってきた。


おしゃれな店がいくつも並び、ショーウィンドウにはこれまたおしゃれな服や小物を購買意欲を掻き立てるようにディスプレイして、それを学生が何やら会話しながら覗き込んでいる。


所々ところどころには先日の戦勝記念式典の飾りもまだ残っており、その為のセールだろうか、歩道に安売りと銘打った商品もいくつも並んでいた。


ああ…これが学生の青春を彩る香林坊か〜と色々興味深く眺めていたら、今までノリノリだった取り巻きの笑顔は消え、会話も止まっていた。


学生がたむろするその繁華街で女学生の黄色い声が響いていて、坂倉さんの顔が若干険しくなると同時に私を自分の後ろに隠して取り巻きも囲うように並んできた。


そんな女子たちがざわめく状況を一瞬で作り出せる人はひとりしかいない。

あの斉藤さんがそこにいるのだ。

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