06〜ひとりで帰ると死ぬらしい…
数々の事件が私を襲った、あまりにも唐突に世界が変わったように思えた今日も何とか全ての授業を終え、ようやくあとは帰るだけとなったのに、本来は喜ばしい事なのに、全く憂鬱な気持ちは晴れてはいなかった。
家に帰れば視線など気にする必要もないのに、帰り支度は遅々として進まない。
それもそのはず、これから教室を出て家に着くまでの間は、いく
言うまでもなく、貴族の御曹司でイケメンで超難関な調合師クラスの彼ともなれば、その人気もこの学校だけで収まる訳もなく、近隣の学校にも恋焦がれる人も多くいたりする。
考えれば考えるほど斉藤さん人気に恐怖するしかない。
こんな冴えない乳首の色だけが取り柄の地味の代名詞のような私が、何で彼の想い人なのか疑問でしかないだろう。
しかも彼は私の乳首の色など知る由もないから尚更謎でしかない。
そして、そんな災いを振り撒いた張本人は、いつもは帰り際にも話かけてきていたのだけど、異様な空気を察してか、これ以上私に話かけるとマズいと思ったのか、そくささと帰っていってしまった。
いや〜貴方のせいでとんでもない事になってるんだから、私を想うなら嘘でもいいから、恋愛感情はないと宣言してから帰って欲しかった、などと思うも、一度湧いた噂など消す方が大変なので、今日の下校時斉藤さんガチ恋勢地味女刮目問題はどうにも回避出来ないから、諦めの心境ではあったりする。
とにかく、もう人が減るのを待つしかないという考えにしか至れないので、時間が落ち着くのを待つべく、帰路の準備も半ばにして暫く椅子でぼんやりしようと天井を見つめていた。
が、そんな私の間抜け面を、マジマジと透き通るような美しい瞳の坂倉さんが覗いてきて、
「おめー口ぐらい閉じろよ」
などと親みたいに注意をしてきた。
「ごっごめんなさい…脱力に集中しすぎてて」
などと意味不明な言い訳をするも、後ろでは彼女の取り巻きが大声で笑いながら、
「山本〜一緒に帰ろうぜ」
と誘ってきた。
そんなお誘いなんて人生で初めてだったし、それよりも何で彼女たちが私にこんなに構いたがるのかが分からず、返事出来ないでいると、坂倉さんが
「まだ外じゃお前の話題で
と脅しなのか親切心なのか測りかねるような口調で問いただしてくる。
死んじゃうのか…
「死ぬのが嫌なので一緒に帰ります…」
と私も謎の回答をしてしまうも、今の自分が帰り支度の途中だったことを思い出して、慌てて教科書を鞄に入れて席を立った。
「しかし斉藤も馬鹿だよな。自分が校内でどれだけファン抱えてるか分かってないのかって」
「あんま悪口言ってると、そのファンに呪い殺されるぞ」
「こえー!!!」
そんなたわいもない話で笑っている彼女たちに囲まれながら、護衛というか私も取り巻きの1人のような感じで学校を後にする。
ああ…さすがヒエラルキー最上位に君臨する坂倉さんとその取り巻きなのだ。
周りも絡まれたくないという一心でか視線をこちらに向けることはあまりない様子だった。
「私たちはいつも香林坊寄って帰ってるんだけど、お前はどうする?」
右に行けば私の家の方向、逆に行けばその香林坊、という交差点で坂倉さんは訊いてきた。
香林坊…そこは学校帰りの学生がお店でショッピングしたりクレープやらたい焼きなどのデザート買って食べたりと青春を謳歌するようなオシャレな繁華街だった。
しかし、そんな学生がキラキラしているようなところなんて私は場違いでしかないのは明白だ。
行きたくないと言うより、行ってはいけない聖地なのだ。
「行きたくないなら、お前を家まで送ってやるぞ?」
そんなイケメン彼氏みたいな心遣いを告げる坂倉さんの言葉に、私はとてつもないプレッシャーを感じていた。
そこそこ距離がある家まで私を送り、彼女たちはそのあとに香林坊向かうと考えると申し訳ない気持ちだし、かと言って、香林坊に行けばきっと私を知っている人もいるだろうし、斉藤さんの件もあって例の運動場でのステルススキル無効化現象を体験した
でも、どうして斉藤さんファンが私に注目してるこの状況で、そんな学生がいっぱいいるとこに誘うのかと少しの疑問もあって答えずに目を伏せていたら、視線の先には白い綺麗な坂倉さんの太腿があったので眼福と眺めていた。
「周りの奴らが気になるなら、着替えて化粧すりゃバレないだろ?」
その太腿も持ち主は、そういうと近くの公園のトイレまで私を連れて行くのだった。
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