03〜地味で不細工な少女、イケメンに…???
私を嘲笑していた荘厳な化粧室から教室に無事帰還し、とりあえず奥の目立たない自分の席に座って、ひとりの空間を満喫しようと企むのだが、それを
「お前昨日式典にいなかったけど、どこ行ってたんだ?」
と、私のステルススキルを証明するかのような言葉を頂戴してしまった。
しかし本当にそうなのか、嫌味で言ってる可能性は?
とか思うも、彼は先の美人の取り巻きのように嫌味を言う人ではないので、それは本当にそう思って言っているのだろうが、しかし私は彼の顔を直視出来ないので、真意は測りかねていた。
「いっいっいちぃおういたけどっ?」
声が上ずり、自分でも顔が
「マジお前毎日顔赤いけど大丈夫なのか?」
と彼は一応心配してくるが、大丈夫なのか大丈夫じゃないのかといえば後者じゃね?とか思いつつも何とか、
「だっだっ大丈夫」
と答えるのが精一杯だった。
地味目マックスを行く私は男子と会話することなどほぼなかったので、異性に話掛けられるだけで何でもないのに赤面してしまう。
しかも相手は女子の間では超人気の貴族の御曹司で結構なイケメンな斉藤さんという存在である。
まぁ彼からしたら話し掛ける
そう、彼女が私に粗略な態度を取るもうひとつの理由がこれなのだ。
斉藤さんが私に話し掛けると、美人の坂倉さんが冷たい視線で、
「お前よくそんな醜い女と喋れるな」
などと嫌味というか事実を言い放ったり、顔が赤い私を指差して笑ったり、そして次第に当たりがキツくなり、あからさまに不機嫌になって
「おめーらウザいくらい仲いいなー」
などと今度は完全な嫌味を言ってきたりするようになって、私のステルス性能を破壊してしまってクラスで注目を浴びる羽目になる。
今はそんな彼女はここにはいないからいいけど、いつ帰ってくるかとヒヤヒヤするので、赤面してる上に、滝のような冷や汗、動悸めまい腹痛とストレスが半端ない。
しかし、そんなことはお構いなく女子に100万回は告られているであろう斉藤さんは私に話し掛けるのだった。
「どこにいた?結構一生懸命探したんだけどな」
そんな彼に、めっちゃど真ん中にいたよ!とか心の中でツッコミを入れるも、とにかく早くどっか行って欲しいとシカトをしていたら、廊下の方から人の話す声が聞こえてくるのだった。
自分の顔が赤色から一瞬で青色に変わるのが分かる。
美人の坂倉さんとその取り巻きが、いよいよ帰って来たのだ。
木製の装飾の施された教室の扉が、それはそれは静かに開き、そこで時が止まってくれたらいいのにと願うのに、現実は無慈悲だった。
彼女たちが談笑しながらゾロゾロと入ってくると、周りの生徒もこれから起こりうる事態を想定してか、若干聞き耳を立てるように声のトーンが一段、小さくなる。
そんなことはお構いなしに、私に普通に話し掛けるイケメン男子、それをシカトしている顔面蒼白地味女子、そしてそれを見た美人とその取り巻き、その彼女らはそれまでの談笑が嘘のように静かになり、教室内も今から起こる事態を刮目せんと静まり返る。
私は周りを見渡すことなどしていないのも関わらず、教室内の全ての生徒の視線が自分に集中しているのが分かっていて、もうこのまま消えたい気持ちになるも、どうにも出来る訳もなく固まっていた。
しかし視線を一身に浴びるのも嫌だが、明らかに坂倉さんからの殺気の方が教室内全てのそれを凌駕して私に突き刺さっているのが分かってしまい、恐怖を感じざるを得なかった。
「斉藤、お前山本に気があるのか?」
いきなり、そんなストレートな質問を坂倉さんは彼にぶっかけていた、いつもはそこまでは言わなかったのに。
いや、どう見ても彼は赤面女子が面白くて話し掛けてるだけでしょうに、とか思うも、彼女にはイケメン斉藤さんが鼻の下を伸ばして語り掛けているように見えるのか?
恋は人を惑わす。
多分、美人の坂倉さんはその斉藤さんに気があって、謎バイアスが掛かってしまっているから、そんな気があるとか訳の分からないことを訊いちゃうのだ。
彼にそんな気などないのは誰の目にも明らかなのに、やたら私に話し掛けるのが気になって、それでいちいち突っかかってたりするんだよね?
安心して坂倉さん、私のこの異性に慣れてないから赤面しちゃう出来損ないの顔が面白いから、彼は話掛けてるだけなんだよ!
そう思って、早くこの教室内の異様な雰囲気が収まってくれないかと願っていたら、そんな空気どころの話じゃない言葉がイケメンの口から飛び出て来た。
「そうだよ、だから話し掛けてるんだよ」
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