第4話 知らんけどの使い方が増えてきて、関西以外でも、面白いことになっています。無責任な言い方じゃないのかと、いわれそうですが?

 「やられた。日本には、白浜ってよばれる地名が、いくつもあるんだよね?」

 「それ、やられたの?」

 「つか。自爆じゃないの?」

 「それな!」

 「甘いなあ。和歌山の人が勘違いしたわけじゃあ、ないでしょ?あんたが、勘違いしただけでしょ?」

 「あ、ハヤナも、手が黄色くなったな」

 「ばれたか!」

 「めでたし、めでたし」

 「そうかなあ?」

 「そうだ」

 「何?」

 「めでたしめでたしといえば、おとぎ話とか」

 「はい?」

 「あるところに、おじいさんとおばあさんがいましたとかってわざわざ言うの、何なんだろうって、思ってた」

 「何で?」

 「当たり前なんじゃないのかな、って?」

 「いや、違うな」

 「違うの?」

 「おじいさんやおばあさんのいない子の気持ちも、考えろ」

 「むむっ!」

 「無責任だ」

 「無責任といえば、知らんけどの、言い方も」

 「はい?」

 「最近、何かを言った後に、知らんけどって付ける人が、増えているっていう」

 「ああ。それ、この前も言わなかった?」

 「今どきの話し方講座」

 「知らんけど」

 「もともとは、関西の言い方だったよね。知らんけど」

 「それが、東京とかにも、こんなに入ってきたのには、きっと、理由があるんだよ。私も、気付けば、言っちゃってるっぽい。知らんけど」

 「東京とかでの、大きな、発見ですな!」

 「東京とかの、とかっていう言い方にも、責任逃れの匂いがするけどさ」

 「何?気付かれた?」

 「知らんけどと、とかの、戦い」

 「とか」

 「とか」

 「とかなくて死す」

 「何、それ?」

 「とかなくて死すを、知らないとは。授業で、寝ていたでしょ?」

 「責任逃れの言い方が、増えている。いつから、こんな日本になったのか」

 「うん。東京とかじゃあ、特にね」

 「とか」

 「とか」

 「何か言った後に、知らんけどって言うのって…。やっぱり、責任逃れのようにも、聞こえちゃうなあ。本場の関西は、どういうニュアンスで使うんだろう」

 「きっと、関西では…」

 「何?」

 「関西では、どんな思いをこめて、知らんけどを、言葉の後ろに、つけるんだ?」

「ちょっと言いすぎたなあとか、ちょっとしゃべりすぎちゃったかなあ、偉そうかなあって感じたときに、会話の場を、なごやかに整えるために、付け加えるみたいだよ?知らんけど」

「知っているのか知らないのか、どっちなんだろうね?」





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