第12話_おやすみ
とりあえず僕は【剣の杖】だけ購入して店を出た。
発動体が二つ無ければ僕の固有スキルは意味をなさない。とりあえず、1本は必要だった。
もっと安い杖もあることにはあるのだが、この杖に一目ぼれだった。
せっかくこんなファンタジー世界に来ているのだから剣の一本でも買わねば損だ。
普通の剣のように腰に下げられるのだが、それだけで冒険者感が増して良い。
魔力が切れても多少は戦えるというのもメリットだ。
しかし、これで残金は金貨3枚。
まあ、杖の店の店主の依頼をクリアする道中で何らかの金策は可能だろう。
さて、次の目的地は……ガスタ山の神木の枝と海底洞窟の魔石、あとは魔獣の爪、怪鳥の羽、スライムの体液etc………多いな!
つらつらと素材が列挙されている。
なるほどね。沢山の素材を渡せばそれだけ値引き率も上がるが、最低限の素材だとちょっとしか下がらない。そういう契約になっているらしい。
仕方ない。まあ、お金を稼ぐためにはこういう作業も必要だ。なんとなくあの店主とは仲良くしておいた方がよさそうだし。
とりあえず、ガスタ山という山を目指してみるか。
メニューを開き、マップを見てみる。
えーと、ここかな?
距離にしてざっと5kmか
「………………」
遠い。そら億劫にもなるわ。
普通のよくあるオープンワールドゲームでもマップの端から端までせいぜい5km程度だ。それ以上は広大すぎて移動に時間がかかりすぎてしまう。多くのゲームにおいて移動は冒険の過程であって、それがメインのコンテンツではない。
最寄りのイベント地点まで5kmというのは相当破格のスケールというか、よくも悪くもイカれてる。
これはあくまでゲームなのでこの世界で歩こうが走ろうが現実の肉体は疲労しない。
しかし、精神は疲労する。
ファストトラベルや乗り物に乗れば早いはずだが、最序盤の今はそれもできない。
うーん、とりあえず近くの大きな街まで数百メートルなのでそちらに向かった方が良いのかもしれない。
とりあえず当面の旅の目標はお金稼ぎと装備の強化にしよう。
そしてのんびりクエストは消化する。
でもそれは明日から。
なんだか時間がかかりそうなので、今日はもうログアウトすることにした。ちょっと疲れたし。
セーブを行い。ゲームを終了させる。
世界が徐々に暗くなり、やがて真っ暗になった。
同時に顔を覆っていたヘッドギア全面のパーツが自動でスライドして開く。
目を開くと見慣れた天井が見える。
僕の家だ。
「うーん」
体を起こして伸びをする。
「なんか長い旅から帰ってきた感あるな」
枕元の時計を見ると深夜三時四十五分を指していた。十二時ジャストから始めたので、四時間弱プレイしていたことになる。
僕はよくゲームをする方で、長いと1日10時間ぐらいはするが、今日はやけに疲れた。もう深夜というか明け方なのも理由の一つだが、フルダイブゲームはやはり負担が大きいらしい。
今日はもう寝よう。
そして、明日色々と調べてみよう。
そんなことを考えながら僕は毛布に包まった。
その日はとてもリアルな夢を見た。竜を魔法で倒す夢だ。ああ、これさっきのゲームじゃんとすぐに気づいた。そして同時に
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