第9話_杖職人の店
力が抜けて僕は座り込んでしまった。
僕の眼前には[クエストクリア]の文字が表示されていた。
なんとかクリアできたようだ。
[クエストクリア]
[成果:ワイバーンの群れ、殲滅成功]
[町の被害度:78%]
[報酬から復興資金を減額:金貨-95枚]
[クリア報酬:金貨5枚、ポーション×2]
やべえ。町、めっちゃ壊れてる。
後ろを振り返ると、ワイバーンのせいなのか、僕の魔法の余波なのか、門や塀は崩れ去り、町中もいたるところで煙が上がっている。
町の人たちは無事だろうか。いくらNPCとはいえ、死なれると寝覚めが悪い。
僕が立ち上がって町の方に行こうとすると、さっきのイケオジが声をかけてきた。
「安心したまえ。人々は無事だ。一応な」
「…よかった」
これはゲームだと頭ではわかっていても、心からそう思った。
「さて、その杖は返してもらおうかの」
[悠久の杖をムスタに返却した]
うわあ、一瞬で杖を奪われた!なんだ、貸してくれただけなのか。この杖、滅茶苦茶強かったなぁ。
ていうかこのNPC、ムスタって名前なのか。チュートリアル用のキャラなのかな?
「君の発動体は指輪型のようだが、杖もなかなか悪くないぞ。この町に有名な杖職人がいる。あとで訊ねてみるといい。わしの名前を出せば多少は図らってくれるやもしれん」
はえー。確かに杖は狙いをつけやすいなと思った。見に行ってみるか。報酬も手に入ったしな。
財布を確認すると金貨が5枚入っていた。
うーん報酬がだいぶ減ってしまった。杖っていくらぐらいなんだ?
「では、少年。またどこかで会おう」
そういうと、ムスタは一瞬で消えた。
魔法で移動したのか、イベントが終わったから消えたのかよくわからないが、空間に溶けるように消えてしまった。
何か他とは違う雰囲気のあるキャラクターだったな。
そのあと、僕は町にある杖職人の店とやらに行ってみた。
プレイヤーにレベルの概念が無いということは、装備を強化していかなければならない。装備は重要だ。
店は大通りから一本入った路地にあった。見た目は普通の一軒家のようだが、ドアの横に立派な杖が一本置かれている。
僕は恐る恐る、ドアを開けて中に入った。
「いらっしゃい」
一瞬誰もいないのかと思ったが、しわがれた声がカウンターの奥から聞こえてきた。
どうやら屈んで作業をしていたようだ。
現れたのは腰の曲がったお爺さんだった。彼が噂の杖職人だろうか?
「おや、新顔だね」
選択肢がポップアップする。
[ムスタに聞いてきた]
[杖を探しに来た]
[何でもない]
迷わず一番上の選択肢を選ぶ。
「ほほお、やつの知り合いか。珍しいこともあるもんだ」
そういうと、彼は壁のレンガブロックを手のひらで押し込んだ。
すると、どうだろう。何か機械仕掛けが動き出すような音がしたかと思えば、店の隅に地下へ通じる階段が現れた。
「ついてきなされ」
店主のお爺さんは意外と早い速度でスタスタと先に行ってしまう。僕も慌てて後に続いた。
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