第8話_ここまでがチュートリアル
爆音が鳴りやんだ。
どうやら、まだ死んではいないようだ。
いや、それどころか無傷………?
目をゆっくりと開く。
辺りは土煙に覆われ、何がどうなったのかよくわからないが、僕にダメージは無いようだ。
一体何が?
「やあ、少年。怪我は無いかね?」
頭上から声がして、驚いて見上げた。
知らない人が立っている。
歳は60前後だろうか。白い髭に白髪で魔導士のローブを羽織り、フードを被っている男性だった。いわゆるイケオジだ。
右手には緑色の宝石のはめ込まれた杖が握られており、宝石の部分が内部から発光しているように光を放っている。
「……あなたは?」
「ああ、そうだな。だが話始めれば長くなる。またの機会にしよう」
イケオジは持っていた杖を僕に渡した。
「少年、君は色々と忘れてしまっているようだ。君の本当の実力はこんなものではないだろう?さあ、これを使いなさい」
[米俵丸太郎は【悠久の杖】を手に入れた]
杖を受け取るとそんなメッセージが表示された。
そして、同時にステータスが更新される。
[悠久の杖:E]
[レアリティ:★6]
[MP:300→1,300]
[ATK:5→205]
[INT:200→1,200]
[RES:100→1,100]
[特殊効果:①②③]
[①精霊の加護EX:あらゆる属性の威力が上昇するが消費MPも増加する。]
[②EXメモリー:魔法1種類を杖に記録し、任意タイミングで発動できる。]
[③所有者は時の魔法の影響を受けない。]
おいおい、これ伝説の武器レベルの強さじゃないの?
くれるのか?
「君の特性はデュアルエンジン。二つの魔法を合成する能力だ。思い出せそうか?」
特性?固有スキルってことか?
答えるようにポップアップが眼前に表示される。
[特性について:チュートリアル]
[特性とはプレイヤー固有の能力です。キャラクターエディット時に入力
したステータスを元に自動で選定され、決定後は変更できません。]
[特性は状況に応じて発動するパッシブスキルです。]
[特性【デュアルエンジン】]
[魔法の発動に必要な発動体を二つ装備することが出来る。]
[通常では不可能な二つの異なる魔法を同時に発動することが可能となる。]
[特定の組み合わせで二つの魔法を合成することが可能。]
なるほど、ここまでは負けイベだったという事か。
「さあ、もうすぐ防壁が割れる。君の出番だ」
「よっしゃ!やってやるぜ!」
左手のダイヤルは[風属性、直進、収束]
右手に持った杖にもダイヤル状のUIが表示されている。
こちらは[炎属性、爆発、広範囲]
その二つの魔法陣を重ねるようにすると、繋がって一つの魔法陣となった。
ちょうどそのタイミングで、おそらくイケオジが上空に展開していた防壁が砕け散る。
砂煙も晴れて、視界は良好だ。
杖先に展開した魔法陣をワイバーンの群れに向ける。
さあ、覚悟しろ。
「消し飛べ!」
炎系、風系混合
ロストマジック
魔法陣に集中した魔力が変換され、一気に開放される。
竜巻がまるでビームのように撃ちだされて、その射線上のあらゆるものを巻き込んでゆく。竜巻の内部では地獄の業火と言えるほどの爆炎が高速で渦巻いており、脱出は困難。
その一撃は飛行するワイバーンの群れに命中し、残らず消し炭にしたのだった。
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