第7話_ノーマルモードのはず……

「いや、流石に無理でしょ……」


南門に到着した僕が見た光景は壮絶だった。

優に50体を超えるワイバーンの群れが上空を旋回している。どれもこれもレベル80クラスだ。地面には襲われたのであろう町民や兵士たちが倒れていた。


門の前には巨大な盾を構えた騎士達がいて彼らがひきつけてくれていたおかげで町中の被害は抑えられているようだ。ワイバーンが火球を飛ばしたり体当たりを仕掛けてくるのをかろうじで防御しているが、もう長くは持ちそうにない。


あの無数のワイバーンを全滅させるのがクリア条件?

さっき使った爆炎劫火を撃てば数体巻き込めるかもしれないが、あれは魔力消費が大きすぎる。連打できないのはきつい。

一撃で大部分を巻き込めるほど広範囲な攻撃でなければならない。


急いでダイヤルを操作する。

今度は雷属性。特性は直進。追加効果は①広範囲+②拡散+③爆発。

カチンとダイヤルがかみ合わさり一つの魔法陣となる。

どうやら新たな魔法を作ることに成功したようだ。


しかし、どんな魔法なのかは使ってみなければわからない。

左腕を上げ照準を渦巻くワイバーンの群れに合わせる。

頼む、強い魔法来てくれ!


「吹っ飛べ!」

拳を握る。それがトリガーとなって魔法は発動した。


雷系上級魔法

【雷電爆撃】ライトニング・クラスタ

無数の雷が放たれ、広範囲に被弾する。光の速さで放たれた雷撃は広範囲に命中するので回避は実質不可能である。しかし拡散しているため威力は控えめ。


無数の雷撃は大多数のワイバーンに命中し、花火のような派手な爆発が発生した。

やった!と思ったのもつかの間。ワイバーンたちはいきなりの魔法攻撃に驚き混乱した様子ではあったが、ダメージはあまり無かったようだ。しかし、怒らせるには効果的だったようで、僕にヘイトを集めることになった。


怒り狂ったワイバーンたちは次々に火球を発射した。


「うわあああ!」


まあ、こうなるかもとは思ってたけども!想像よりもさっきの魔法は火力が出なかった。すぐにダイヤルを操作し防御魔法を選択。このまま着弾したら周囲の人にも被害が出てしまう。広範囲化を3つ重ね掛けする。

だが、ダイヤルがかみ合わない。何故だ?

その時視界右上のステータスバーのMPがほとんど残っていないことに気づいた。

雷電爆撃は広範囲化していたので、その分魔力消費の多い魔法だったのだ。

その上、今発動しようとしている防御魔法も広範囲。到底足りない。

ヤバイヤバイヤバイ、なんかないのかアイテムとか、スキルとか、何か………

僕は必死で対策を探したが、何もなかった。


そして、無情にも無数の火球は人々の上に降り注いだのだった。











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