第5話_ノーマルモードですよ
爆炎が上がるのとほぼ同時に轟音が轟く。
衝撃波で周囲の壁が崩れ、石畳はめくれ飛んだ。
僕も風圧で飛ばされそうになったがなんとか耐えた。
爆心地となったワイバーンがいたあたりには、地面がクレーターのようにえぐれ、地形が変わっていた。
魔法が直撃したワイバーンは肉片すら残っていない。おそらく瞬時に消し炭になったのだろう。
「LV89を一撃って………火力おかしいでしょ……」
適当に選んだつもりだったのに、なんかとんでもないことになってしまった。倒せたのは良かったけど。
なんだか足の力が抜けて尻もちをついてしまった。
どうやら終わったようだ。
しかし、視界は赤く点滅したままだ。先ほどのダメージは戦闘が終わっても自動回復したりはしないらしい。
うーん、回復魔法とか使えるのかな?
「おーい、魔導士さまー」
声がした方を振り向くと、先ほどの兵士が走って近づいてきた。
「うわあ、ひどい怪我だ。これを飲んでみてください」
兵士は僕の恰好をみて驚いたようだ。改めて自分の体を見てみたが、このゲームは全年齢対象なのでグロ表現は実装されていない。出血という概念も無いので、ぱっと見は変化はないはずだ。このNPCは固定文言なのか、もしくは僕のステータスを参照しているのだろう。もし、これが現実だったら血だらけの全身複雑骨折だったかもしれないが。
兵士から小瓶を渡された。エメラルドグリーンの液体で満たされている。
話の流れからすると回復薬なのだろうが、冷静に考えるとちょっと怖いな。成分がわからない。でもここはゲームの中。
一瞬躊躇したが、僕は勢いよくそれを飲み干した。
「……………」
何故だろう。現実ではないので、もちろん味はしないはずなのだが、とても不味い気がする。口の中が嫌な感じだ。脳が錯覚しているのかもしれない。
しかし、効果はてきめん。赤く点滅していた視界は正常な状態に戻り、HPバーも最大近くまで回復したようだ。
あれ?
HPバーがあるという事は、まだ戦闘用UIが表示されたままになっているということだ。
そう言えばクエスト報酬を受け取っていない。
まさか?
ちょうどその時、少し離れた場所で爆発音が聞こえた。
「南門にワイバーンが出たんだ!どうやら群れだったらしい。今は腕利きの剣士が押さえているがじきに突破されてしまう。あんたも来てくれ!」
なるほどねぇ。そういえばクエスト選択画面に1体だけとは書いていなかったし、殲滅しろって書いてあった気がする。
殲滅とは残らず滅ぼすこと。皆殺しにすること。
このワールドやシナリオを作ったのは自分だ。僕の脳波を読取って、それをベースに作られている。
レベルデザインや難易度も僕が決めているはずなんだけど。
「これ、まあまあ難しくない?」
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