第4話_チュートリアルクエスト?

なるほど。チュートリアルを兼ねた討伐ミッションかな?

そう考えていると、目の前にポップアップが表示される。

  

  [クエスト:ワイバーン殲滅]

  [達成条件:目標の全滅]

  [町の被害状況に応じて報酬の減額]

  [報酬:金貨100枚]

  [クエストを開始しますか?]

  [はい][いいえ]


報酬の欄で目が止まる。うーん、金貨100枚ってどのくらいの価値なんだ?

まあ、最初の最初なので、そんな大金ではなさそうだけど。

………とりあえずやってみるか!


僕は[はい]に触れた。


その瞬間、上空を黒い影が横切った。


直後強風が吹きつける。


「うおお!?」


空を見上げると、ワイバーンが上空を旋回しているのが見えた。


ワイバーンて名前だけはよく聞くし、なんとなく小さい雑魚恐竜ぐらいのイメージだったが、実際見てみると黒くて大きな翼をもつかなりデカいやつだった。


あんなの倒せるのか?


「まずい。みんな!早く家の中へ!魔導士様はこちらに!」


兵士が走っていってしまうので僕も後を追う。


たどり着いたのはそこそこ大きな広場だった。


概ね避難は完了したようで、このあたりに町民はいない。


「ここなら少々派手に戦っても大丈夫です。やつは火球も撃てるので気を付けてください」


「え!」


「ここにいてもお邪魔でしょうから、私は残った町民を非難させてきます!」


そう言って兵士は走っていった。


おいおい、マジかよ。彼が何か説明してくれるのかと思っていたのだが、そういうわけではないらしい。


どうしたらいいんだ?


空を見上げると、さっきまで飛んでいたワイバーンが見えない。あれ、どこに?


周囲を見渡していたその時だった。


「――――――――――――!!!!」


怪獣の咆哮が響いた。


そして僕の真上をかすめるような低さで低空飛行して、それは広場に着地した。

漆黒の鱗、大きな翼、鋭い爪と牙、長いしっぽ。体長はしっぽを含めると10メートルぐらいだろうか。これがワイバーン……


「でっか……」


あれを討伐?魔導士一人で?


その問いかけに答えるように視界が一瞬赤く光り、視界の角に戦闘用のUIが現れる。


右上には自分の体力などのスタータスが表示されている。


ワイバーンの方を見ると[ワイバーン(黒):LV89]と表記が……って89レベル!?

おいおい、こちとらプレイ開始15分やぞ……


ヤバい。何か攻撃手段はないのか?


左手を見るとなにやら円形のエフェクトが表示された。手のひらを見てみると、それはダイヤル式のUIになっているらしくタッチ操作で動くようだ。ダイヤル部分には様々な属性のアイコンが表示されている。


えっと、とりあえずこれはどうだろう。なんとなく強そうというイメージだけで炎のアイコンを選択し、さらに技の種類を選択する。


くるくるとダイアルを回していると、再び咆哮が聞こえた。すぐ近くで。


「あ、やb」


最後まで言い切ることはできなかった。


新しい機能に夢中になっていたが、今は戦闘中。それも昔懐かしのコマンドバトルではなく、フルダイブゲームなのだ。敵がこちらを待ってくれるはずがない。


僕は防御することもできずにワイバーンの一撃を食らい、広場の中央付近から端の壁まで吹き飛ばされた。視界が赤く点滅している。わずかに残ったHPバーがかろうじで生きていることを教えてくれた。


痛みはない。確かにどこもいたくない。凄い。だけど辛い。叫びたい衝動に駆られる。全身が痛い気がする。死にかけているという焦りがそうさせるのだろうか。


ともかく時間がないことはよくわかった。僕は左手のダイヤルをすぐに選択した。効果はよくわからないが、ともかく使ってみなければどうにもならない。


選択が完了するとダイヤルのようなUIは広がり大きな魔法陣のようになった。どうやら発動体制が整ったらしい。


左腕をワイバーンに向けて照準を合わせる。


「たのむぜ!なんか強いやつ発動してくれ!」


開いていた手を強く握りしめる。


「行け!!」


合図と同時に魔法陣に赤い光が収束したと思った瞬間、一筋の赤い光がワイバーンへと延びる。


ワイバーンは何かを察知したのか羽ばたき浮かびあがろうとする。

だが、そうはさせない。


その動きに合わせてエイムを調整する。


「逃がすか!」


レーザーポインターのような赤い光線がワイバーンに触れたその瞬間、魔法陣に収束していた光が開放される。


火炎系最上級魔法

【爆炎劫火】ブラスト・スレイブ

物理的な距離に関わらず、ロックオンした対象を内側から・・・・瞬時に焼き尽くす。


だが、この時の僕はそんな大魔法が発動していたなんて知らなかった。

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