第27話
どっかで見た事のある、いつもよりボロい天井に、いつもより固いシングルベッド、軋む床。何よりも隣りにテスがいないのは寂しさの極みだな。
俺の転生生活はこのアパートから始まったんだっけな。魔法が使える事にはしゃいでたら、ドア破られて襲われそうになったりしてさ。
お、ドアが直ってる。大家さんがやってくれたのか……そうであってほしいよ。
俺は恐る恐る玄関から外を覗く。日の光が眩しい。こんなに日が差しているんだ、死体の腐敗も進んでいるだろう。
そう思って家の前を見回すと、そこにはゴミ出しや配達、通学など日常をおくる人々の姿があった。
この気持ちが安堵なのか、それとも失意なのか。俺は複雑な心境に苛まれてそっとドアを閉めた。
戻りがてら、下駄箱の上に堂々と置かれたレコードを掛ける。脱力感から再びベッドに横たわって冷蔵庫をボーっと見つめている内に、ふとあるものを思い出して引き出しや押し入れ、ベッドの下などを探し回る。
それはクローゼットの隅で、封がされた箱の中に入っていた。これまでにも見た、金の魔法陣による封。中身は、そう。
そこに入っていたのはとある家族の日常を写した写真。妹の手を握る幼い兄、おもちゃの取り合い、机に向かい勉強に励む姿、夜中のつまみ食いが親にバレた瞬間、同じ学校への入学式、卒業式、家族旅行、成人式――彼等は、幸せを掴んだんだ。
1枚ずつ写真を見ている最中、空に金色の波が伝った事に気付き、窓越しに空を見上げた。
良い写真だよ、ほんとに。俺もあんたみたいに生きる事が出来れば、こういう幸せに辿り着けるのか。はは……それまでの間、俺の事を支えてくれよ。
黒龍にそぐわぬ神の座 Ottack @auto_22
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