まだまだ始まったばかりの今作、けれど私はたった二話で引き込まれてしまった。
作者様の深い造形に裏打ちされた、知欲の満たされる読書体験。
それを決して阻害することなく、私たちへきつけてくれる美しい文章。
今、続きを一刻も早く読んでみたいと思うのは、まさにタイトル通り『誘惑』に近い感情だろう。
主人公の性格もいい。
鬱屈とした精神性と。こんなもんじゃないんだと言う暗い燻りは、異世界へつき進む、確たる動機となっているし。
彼を誘引する黒猫の、老獪な口ぶりも非常に好みだ。
皮肉として「ニヒルじみた」と黒猫が発言するシーンがあるが、私はむしろ、その黒猫にこそニヒルじみた魅力を感じた。
ぜひ皆にも一読してほしい作品。