第3話 状況整理(なお、なにもわからない)
腰が爆発してから
(実際に爆発したわけではないのだが、激痛の形容が爆発としか思えなかったので、以後腰に激痛が走った瞬間を『腰が爆発した時』と呼称する)
とりあえず見つけた『土下座フォーム』のままじっとしていると、痛いには痛いが、先刻の爆発したかのような痛みからは少し逃れることができた。
正直全然まだ痛い。だが、先ほどよりは事態をゆっくり考えられるくらいには痛みの度合いが違うのだ。
「うぅぅ…うう…」
なお、マシになったとは言っても口からは相も変わらずうめき声が勝手に漏れ出る。
いまだに半泣きである。
だが状況を整理しなければこの痛みに対する対策もたてられない。
まず、痛みの出どころ。
これはまぁ間違いなく腰が原因だと思われる。
左脚の付け根、つまり股関節からつま先までの肉離れのような痛みの説明はつかないが、爆発したと錯覚するような痛みは腰からきている。
次になぜ爆発した…というかなぜこんな痛みが走ったのか。
直前の姿勢が悪かったのはあるだろう。
あぐらをかいて前のめりになりながら友人とのゲームに熱中していた。
おまけに夜食を取りに行ってから、いつもの癖で腰からヒップドロップの要領でベッドに腰かけた。
おそらくこれらが引き金で腰が爆発したのだろう。
「うぅぅ…なんで…うー!!」
ちなみにこのあたりで痛くて枕に拳をばしんばしん打ち付けている。
なんでこんな目に…と少々の苛立ちを感じる…イライラする?
普段からおなかが弱く、私はひどい腹痛に見舞われたり、過去にストレスから胃潰瘍になってなかなか消化器がひどいことになったりしたことがあるが、それらの痛みの時は泣きそうになりはしたが、この謎のイライラ感は無かった。
だがどうしようもなくイライラする。この痛みが走るたびに枕に拳を打ち付けてうめいてしまうほどに。
どこかで味わったことがある気がするが、どうにも思い出せない。
「うー!!!」
ばしん、とうめきに合わせて拳を振り下ろす。子どものかんしゃくみたいだが、どうあがいても痛い。情けないやら痛いやらでまた半泣きである。
枕が少しぼふっと動いたとき、そばに置いていた何かが跳ねるのが見えた。
最悪救急車を呼ぶかと手元に置いた携帯電話だった。
液晶画面をのぞき込む。
時刻は、2時12分との表示だった。
この際もう寝て、意識を手放してしまった方が早いのではないか…
寝る?
そう、この時気づいたのだ。
その気づきに愕然としてしまったのだ。
こんなに痛いのに、こんな土下座フォームでなんとか少しだけましになってるのに。
この先、どんな姿勢で眠れば…いや、まず寝ること自体可能なのか…?
1日目、深夜。
長い夜の始まりだった。
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