第2話 20代後半、半泣き。


痛みの中、腰をさする。


流石に本当に爆発したわけではなかったし、何か骨が飛び出てるとか、どこか動かせないというわけではない。


ただ腰全体が痛い。

いままで感じたことのない痛みが腰全体から発せられている。


「あぁ…おぉぉ…!」


口から勝手にうめき声が出る。

冗談でもなんでもなく、本当に勝手に口からうめき声が出てくるのだ。

もちろん深夜なのでそんな声だそうものなら家族にも近所にも迷惑なのでできるだけ声を殺そうとする。


「んんんん…うぅぅ…!」


でも出るのだ。

そしてそれ以上にものすごく痛い。

必死にどうにか痛みが少しでも和らぐ体勢を探り、奇妙なダンスでも踊っているかのように身体を動かす。


痛い、もうずっと痛い。

座っている体勢は無理だ。痛みだけではなく何かしびれのようなものまで感じる。

まっすぐには横になれない。なぜかよくわからないが肉離れや、つった時のように左足の先端までが猛烈に痛む。

立つこともできない。左の股関節が砕けたかと思ってしまうほどに痛く、姿勢を保てない。

これは、あれは、どうだ、どうだと試すたびに違う部位が腰と同レベルくらいに痛む。


ひぃひぃとうめきながらベッドの上の方がマシだとどうにか気づき、また体勢を変えながら痛みから逃げ出そうともがく。


痛い。横向きもうつぶせもあおむけも痛い。

最悪救急車まで考えて、携帯電話に手を伸ばそうかと必死に体制を変えたとき


少しだけ、痛みが和らいだ。


「はぁ…はぁ…うぅう…」


20代後半。秋の夜長にベッドの上で半泣きになりながらたどり着いたその姿勢は



土下座



見まごう事なき土下座であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る