0−5
「おほーっ!こりゃスネークダイルだな?
おいおいっ!こりゃ大量だな」
俺たちは1階に降りて、運んできたワニの素材を黒い箱から取り出して、ギルドの素材担当職員さんに、運んできた魔物の確認をしてもらっていた。
人体切断マジックのこの黒いはてなマークの箱だが、ワニの素材集めで色々試した結果、フェリならば蓋が開けられて、中に物をしまえることがわかった。
物に関しては、中に人が入った状態で真ん中の箱をずらしても死なないのと同じように、状態保存が適用されるのか、温度や鮮度も保たれるようである。
今はワニ十数匹分の素材が、ギッチリと解体され整理された状態で、最大の大きさのはてなボックス内の満タンまで詰まっている。
でかい箱を軽々と片手で持ち運ぶ野郎が、受付の前で一瞬で持っている箱を消し、大量の魔物の素材が出てきたわけだから、混み合っていないギルドの中でもちょっとした騒ぎになってしまった。
俺はワニの行商ではないよ。
「アリシアー!こいつらのギルドカード作ってやれ。青でいい。
んでだな、野郎の方。お前は目立ちすぎる。バレたくなかったら名前を変えろ」
2階から降りてきたサレンダーさんから、いきなりの改名の申し出が来てしまった。
確かに、唯やフェリと違って、メインウェポンをはてなボックスにしている俺のスキルは目立つ。
サレンダーさんが、俺たちが勇者っていうことを言葉に出さなかっていうことは、黙っていろってことね。
アリシアさんの方へ行き、登録をお願いする。
「では皆さん、こちらに名前を書いてください。過去の犯罪歴もあれば記載してくださいね。スキル職の記載は任意で構いませんよ」
青色のカードを渡された。表にはこのギルドのマークが描かれている。裏には記載欄がある。
ギルマス権限で、駆け出し、見習いを飛ばして、下級冒険者からの登録だった。
「スネークダイルを潰せる奴らを『駆け出し』にはできん」ということだそうだ。
違いがわからないから、ありがたいのかもわからない。
俺は名前欄に『ナナム』と記載し、犯罪歴は無し。無しだよね?バリテンダー城から少しだけ食料とか頂いてしまったけど。
聞いたら、国の逮捕歴などが無ければ大丈夫だそうだ。
名前登録の必須はもちろんだが、スキル職登録は、ギルドからの職種別の依頼斡旋や、特別な施設の入場時などに確認されることがあるという。
ウソの職業を書くこともできるのか。俺が魔法使いとか。
「ハイ、可能ですよ。ただし嘘を貫き通してくださいね。虚偽とわかったときには信用を失います。
再登録はありませんから、信用を失った時点で全てを失います。気をつけてくださいね」
怖っ!俺の予感があっているならば、相当厄介なルールだぞ。
サレンダーさんが言ってた名前は変えても大丈夫なのか訪ねた。
「高位な方がお忍びでギルドに登録することもありますからね。
それともナナムさん、名前を偽ることでギルドとの信用に関わる何かがあるんですか?」
無いです無いです。
スキル職欄は書かずに提出する。手品師はセシリア王国にバレてるからね。
フェリの分も書いてあげる。そういえば、フェリのスキル職ってなんだ?
というか魔物にスキル職ってあるのか?
そういえば、ミレイさんがこのギルドの所属って言っていたな。もしも会えたら確認してもらうのもいいな。
唯も書き終わったのでこれで登録完了。ギルドの説明を聞きたかったのだけど、素材担当の職員さんに呼ばれてしまった。
スキルでの魔物の解体は、バリテンダー城のコックさんにも認められるほどの精度だったので、ギルドの解体専門職員にも相当驚かれ、歓喜の質問攻めにあった。
特にスネークダイルの素材が十数匹ということで、『サービスエリア』や『妖精の薔薇』パーティにも必要な部位は山分けをしたが、肉や表皮、血や内臓までも新鮮な状態で出現したわけなのだ。
こんな良い状態で持ち込まれるのは珍しいらしい。
マジックバッグ持ちかと聞かれたけど、やっぱそんなのあるんだマジックバッグ。
見た目よりたくさんものが入る鞄で、値の張る物だと鞄の中の時間が停止された状態で留まるらしい。
この話に、俺の手品師スキルの可能性がピーンと来た。
人体切断マジックの箱、中に入った経験のある俺からすると、外側の穴から剣を刺されても、中には剣が入ることなく俺は無事だった。
イノシシのときには分からなかったが、箱の中側と外側の世界が異なっているという結論が出せたわけだ。
時間が異なるのか、空間が異なるのか。それを時空とも言うだろう。
そうっ!時空魔法なのだよっ!とうとう俺にも魔法を使える可能性が出てきたってわけ。
そして、そのマジックバッグ。安い方は空間が、値の張る方は時間と空間が異なっているわけ。
そして、この世界には一般的に知られている範囲で実際にそれがある!
値段を聞いてみたが、安い方で大白金貨千枚ぐらいするんだとさ。
夢のまた夢だった。10億円だ。どでかい宝くじを当てないと買えない額だった。
ただ希望は捨てない。俺は魔法使いになって、ファイアーボールを撃つのだ。
「パパー」
フェリに呼ばれて我に返る。査定が終わったらしい。ワニの買い取りで白金貨8枚になってしまった。日本円で80万円だ。
「うわっ!ヤバっ!アタシたちお金持ちだねっ!」
唯の言うお金持ちなのかは別として、支給された手持ちと併せて110万円だ。
このお金で住む場所や冒険者としての装備などを揃えなくてはいけない。3人分で、特に唯とフェリは女性だ。ある程度治安のいいところを、そんなところがあるのかわからないけど選びたいところだ。
そう考えるとちと心もとない。
「おっといい所に。おいミユキ。ちょっとコイツラを見てやってくれ」
サレンダーさんがミユキさんって方を呼んで、俺たちの対応をしてくれるらしい。
「あぁっ、なんだよ?めんどくせぇな。なにもんだお前ら?」
なんだか口が悪いが、名前からして日本人だろうか?
眼鏡をかけた神官服の女性がこちらに向かってくる。手にはメイスを持っている。
「ははぁ、テメエら、セシリアの勇者だな」
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