0−2
「トモーっ!!フェリが、ワニにっ!!」
唯とフェリの周りに、ワニのようなヘビのようなの魔物が十数匹集まってきていた。一匹一匹がデカい。頭をかま首のように水面から出し、2人に狙いを定めていた。
二人がいる場所は浅瀬のようで、水は膝辺りまでしか浸かっていない。
唯はスキルが発動しているようで、金色に光っていた。
その唯を護るように動きながら、フェリが立ったままの臨戦態勢を取り、迫るワニに対して威嚇の唸り声を上げる。
フェリの右手の爪が5センチくらい伸びている。サーベルキャットの能力だろうか。だが、あの爪がワニの体に効くのかがわからない。
「フェリっ!ママは大丈夫だから、そこから離れてっ!」
唯はスキルでワニの攻撃を無効に出来るはずだ。俺はフェリに叫ぶ。
「アタシもさっきから言ってるんだけどっ!フェリに伝わんないっ!」
スキルの影響で動きが取れない唯は、フェリに呼びかけを続けていた。
「グルルルゥゥゥゥっ!!」
フェリは本能で唯を護ろうとしているのか、こちらの言葉が聞こえていないっ。
ワニもフェリの威嚇に警戒しているのか、膠着状態で二人との距離が一定に保たれている。
その隙に、俺は兵士の剣と盾を持って、一匹のワニの背後に回り込む。
水辺を走る音に気がついたワニが、こちらを振り返らないままのけぞり、遠心力を使ってムチのように首を叩きつけてきた。
「ヤバっ」
俺は大盾でその攻撃を防ぐ。しかし、力負けして後ろに倒れ込んだ。
「うぷっ、危なっ!!ちょっ、これワニの動きじゃないぞっ!」
「フェリっ、右っ!右のワニっ!」
唯が叫んでいる。向こうのワニもフェリに攻撃を仕掛けてきていた。
フェリが全てのワニの攻撃をかわし、ワニの体に爪を突き刺す。
ガキンっと金属がぶつかったような音がして、攻撃したはずのフェリがのけ反る。
このワニの皮膚、相当な硬さだ。
唯のスキルで敵の注意を引けるのは1体限定のようだ。スキルの効果で唯の正面のワニは動けていない。
俺に反撃をしてきたワニも、フェリの方に近づいている。フェリは、数匹のワニの攻撃をかわし続けているが、なんせ数が多い。
俺は走り出して、さっきのワニに人体切断マジックを発動する。
箱がワニの手前に出現した。半分水に浸かっている。
今までならば箱の中に獲物が収納されていたのだが、ワニには効果がない。何故!?
とっさにその箱の穴に手をかけ、フェリを狙っているワニに箱を投げつけた。
ドーンっと音を立て、箱がワニ2匹を押しつぶしたようだ。ワニの血が水面を赤く染めている。
その衝撃音に、他のワニも、フェリと唯も動きが止まって驚いているようだ。実は俺も。
えっ?あの人体切断マジックボックスってそんなに重かったのっ!?
それでも他のワニのフェリに対する攻撃は怯んでいない。ワニ達はすぐに攻撃体制に移行している。
俺は、急いで箱を取りに走る。
別の一匹のワニが、俺を狙っていたのことに気が付かなかった。浅瀬を走っていた俺の背中に、ワニの頭突きが叩きつけられた。
「ぐはっ!」
痛えっ!!叩き飛ばされ、バシャンっと水面に叩きつけられた。
「トモっ!」「パパっ!」
俺が飛ばされたことでフェリが正気に戻ったようだ。援護のため俺の方に向かってきている。
だが、俺を襲って来ているワニとフェリはまだ距離がある。こっちは俺がなんとかしないと俺がヤバい。
投げた箱までは距離がある。手元に武器も盾もない。ワニは首を左右に振り回しながら素早くこちらに迫ってくる。
あ、マズったな、と思うのと同時に思いついた。
今出現している箱を解除し、新たな箱を発現させた。
手元に箱が出現した。ギリで箱を盾にしてワニの攻撃を防ぐ。
「こんにゃろーっ!!!」
箱を持った状態で、その箱の天面でワニを殴り突く。グシャっという音と共に、ワニの頭が潰れたようだ。
これなら、なんとか戦えるか!?
その時、陸の方から何かが飛んできた。俺の近くのワニの両目に矢が刺さっている。ワニがもんどり打って倒れた。
さらに飛んでくる矢が次々とワニの目にピンポイントで刺さっていく。
「嬢ちゃんは魔物の目を狙えっ!!野郎はその武器で地面を叩けぇっ!!」
坊主頭のオッサンが叫んでいる。矢を撃っているのはそのオッサンの周りの人達だ。敵ではなさそうだ。助かった。
俺は言われた通り、両手で箱を持ち、おもいっきり地面に叩きつけた。
ドカーンっという振動と大きな水しぶきが上がる。その衝撃でワニがビクッとなり動きが止まる。
矢とフェリの爪が残りのワニの目を突いていく。
数分後、逃げたワニもいたが、俺たちを襲ってきた周辺のワニは全滅した。
「トモ〜っ!!」「パパーっ」
唯とフェリが俺の方に駆け寄ってくる。唯は、敵が全滅してスキルが解除されたようだ。
はぁ~。この世界に来てほぼ初めての魔物との戦闘と言える戦闘。
1手間違えたら死が待っている詰将棋だ。
「はぁ~、助かったぁ」
その瞬間、俺は腰が抜け、仰向けで水辺に倒れ込んだ。
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