21、目的の確認

「はぁはぁ、ようやく、着いたっ」

「着いたぁぁっ!久しぶりの家ぇっ!」

「ついたー!やたー!」

「キューっ!」


 みんなでお土産やら荷物を分担しながら運び、アットマインからアットサマリーの家までの距離を歩ききった。


 アルスタールの百葉亭での荷物は、後日届くように手配をしてある。

 帰りに買った「地竜ステーキ(冷凍)とジャーキー」は配送分以外に、フェリの「かえりもたべたいから」と、多めに買ったのも許そう。唯の分も、追加のお土産ということで大目に見よう。美味かったから。

 同じ土産物屋でフェリの誕生日プレゼントとして買った全長2.5mの地竜の剥製(配送不可)。フェリが「とても気にいったっ!」らしいので、はてなボックスに収納して運べたので、それもギリ許そう。


 ねねとネルミルさんは、セシリア王への報告のため離脱をした。

 タミィは、もうしばらくの療養のため、アットマインのサブリン爺さん家で別れた。

 

 問題はその後だ。セシリア王国の帰りの馬車は、俺らの家まで運んでくれなかった。

 アットランドの王都で「契約がここまでですので」って降ろされた。

 

 乗合馬車には断られた。誤算だったのは俺の箱だ。デカいし重いのだ。俺は重さを感じない。馬は重さを感じる、それもスゴク。

 追加料金とか関係ないんだってさ。次の予定があるんだってさ。


 こんな時に「無料転移」のサミィは居ない。一般の転移陣はバカ高!

 5日かけて歩いたさ。温泉で取れた疲れは舞い戻った。




「第2回、家族会議を行います」



パチパチパチパチ

 帰宅翌日の昼下り。乾いた拍手が響く。参加者は4名。

 1匹は、同種シンパシーを感じるのか、最近お気に入りの地竜の剥製の背中でお昼寝中だ。ゴツゴツしているのだが痛くはないらしい。


 第2回目の会議は、今後の方針を決める会議だ。

「んで、むぐ、何を決めるのっ?」

 唯、お土産の地竜饅頭を食べながら話すのはやめなさい。そして、昨日会議の内容は話したよね。

 

 

「今後のどういうふうにしていくのがいいのかだね。

 日本に帰るっていう目的は変わらないけど、そこまで花びらをがむしゃらに探す必要はないんじゃないかと思ってる。

 っていうか、俺はのんびりしたいっ!」

 バトルだぁ、策略だぁは他の物語でやってくれ。脇役として生き、脇役として日本に帰りたい。


「そうね。今回の件で協会も少しは大人しくなるんじゃないかしら。

 国の方も今は何もしてこないはずよ。アルスタールの監視も、トモが理解したのを知ったから解かれたっていうネルミルの予想が、タイミング的にもあっていると思うし。

 このお団子美味しいね」


 セシリアでの任務を終えたねねは、そのまま無期限の休暇となった。

 このまま、俺らと行動するらしい。ねねさん、貴女は悪い輩に狙われたんだよ。休暇だと護衛とかいないよ。ああ、俺がすればいいのね。


 真聖女協会と世界救済会は、各国で共通の危険分子として認定されたそうだ。表立った活動は制限されることになった。

 まあ、名前を変えて裏で活動は続けるんだろうが、露骨にねねだけを狙うのは減るだろうとのことだ。

「アルバード様への報告後、トモが花弁を集めることについて確認を取ったのよ。『特に問題はない』っていうのが回答だった。どういう考えかはわからないけど、泳がされているのは確かね」


 『理解』している勇者ねねとネルミルさん、『理解』していない勇者の愛子さん。セシリアではそれ以外にも召喚勇者を抱えているだろうが、どちらも使いようがあるってことなのだろうか?

 考えてもわからないので、泳がされているならば泳いで見せようホトトギス。



「うゎうゎ、えうぃわううぉううぁいうぁい!」

 フェリは、食べ終わったら話そうか。




「では、まとめます!」



○最終目標は、日本に帰ること。

○まずは獣人の国ライオネス。その後、すべての国へ『旅行』に行く。

○勇者、花びら、又は案内人が『見つかるなら』情報を集める。

○ハクの母親、及び竜族の情報収集。

○強くなるための努力をする。

○王族、貴族とはできる限り関わらない。

○いのちをだいじにガンガン行こうぜ。



 とりあえず、こんな感じでまとまった。

 日本に帰ることはみんなの同意だが、いつまでにという期限などは設けないことになった。

 出来れば早く帰れるに越したことはないのだが、条件がある程度わかったことで、「そんなに簡単なことではない」こともわかったからだ。


 秩序の花を揃えるために、各国に居る案内人に会って、花弁の力を得ること。

 現在、俺が知っている情報は、トラヴィスから聞いたアットランド、ザムセン、ライオネスの3枚分。

 アットランドは手に入れたが、『洗礼の泉』で力を得ることができるザムセンは、現在国が半壊滅状態。肝心の泉は深淵の森に飲み込まれている。

 よって、次の目的地は獣人の国ライオネスとなった。

 

 ハクの母親の情報も集めたい。竜族は、人族よりも獣人やエルフとの交流が多かったそうだ。

 竜族とドラゴンとの関係がいまいちわかってないが、シュラスの生き残りがいるならば手がかりが見つかる可能性もある。


 唯とフェリは、今回の誘拐事件で自身の未熟さを痛感したということで、さらなるレベルアップを図りたいという。

 俺からしたらもう十分だと思うんだけど、上を目指すのは悪いことではない。

 強いものが上に立つという考えのライオネスでは、定期的に武道大会なども開催されているとのことだ。

 修行道場も多く存在しているらしいので、鍛え直すにはもってこいの国らしい。


 俺も、手品師スキルの鍛錬は毎日行っている。いつどこでどうなるかはわからないからね。

「パパもいっしょにしゅぎょうする」

「そうだよっ!トモもパワーアップして、筋肉マッチョ手品師を目指そうよっ!」

 って勧誘されたが、丁重にお断りしました。良いとは思うよ、筋肉手品師も。俺も今はうっすらだけど腹筋も割れてるし。

 もしも本職の手品師がこの世界にいるならば、弟子入りしてでも技術を磨きたい。そろそろお遊戯手品だけでは知識が足りないのだ。

 手品道場も探してみよう。あって欲しい。無いかな。


 ただね、「上腕二頭筋からカードが出ます」とかを目指してはいないんだよ。

 そうだった。俺は手品師でも使える魔法が欲しかったんだ。自分目標に設定しておこう。

 


 面倒ごとに巻き込まれないようにしながら、最後の「いのちだいじにガンガンいこうぜ」。

 今回、結果的には死体だったとはいえ、初めてスキルで人を殺した。

 この世界で人が殺されるのは嫌というほど見てきた。殺されかけた事も何回もあった。ただ運良く、殺さず殺されずに済んだだけだった。

 大切なものを守るため、自分が生き抜くために、人を殺さなければいけない事も増えるだろう。

 臆病だけでは生き残れない。臆病に攻める。そんな意味の目標とした。



 そろそろ唯とねねとの関係もなんとかしないと、アルスタールでも圧に耐えきれなくなってきた。

 


 

 う~ん。どうしたものかなぁ。


 ライオネスに行ってから考えようか。うん、そうしよう。



〜 2章 完 〜

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