16、水着とアオイ湖

「じゃじゃーんっ!見て見てっ!カワイイっしょ!」



 旅館に戻り、夕飯を食べて、温泉で疲れを癒やし部屋に戻った俺を待っていのは、唯、フェリ、ハクの2人+1匹のファッションショーだった。

 今着てるのはお揃いの、ほっとす君Tシャツである。

 ほっとす君は、この街、ホットスプリングのゆるキャラらしい。

 確かに見ていてホッとする顔立ちをしている。ただ、姿は蜘蛛である。タランチュラっぽい。

 もっとゆるキャラっぽい動物とか選べばいいのになぜタランチュラ?ペンギンとかのほうがカワイイと思うんだが。


「ペンギンは、このページの『ウォームタウン』のゆるキャラですね」

 と、なぜ持っているのかわからないけど、タミィがゆるキャラ図鑑のページを見せてくれた。

 さっき王都で買ったらしい。


 唯達に、王都での尾行について聞いたところ、「あ~、あの人達は護衛だよっ!フェリがすぐ見つけて話してたからっ。

 この国の護衛の人って、アタシ達の邪魔にならないように少し離れた所から見守っているんだってさっ!」


 すぐ見つかっちゃった尾行の騎士を不憫に思う。フェリの鼻と機動力を甘く見てたんだろうな。王宮で絞られていないことを祈ろう。


「あら?そんな護衛の方がいたんですね♪こちらは気が付きませんでした♪」

 勇者ではないネルミルさん達には尾行の必要は無かったということかな?

 まぁどっち派でも、ネルミルさんには、いつか確認しなければいけない時期が来るだろうから。

 あとはねねがやるだろう。俺は、今まで通りノータッチの方向で。


 なんせ、俺等はのんびり休暇に来ているのだっ!ここに来てから、のんびりしてないじゃないかっ!

 卓球したり、襲撃されたり、卓球したり、誘拐されたり、卓球したり、卓球したり。


 ガイドブックを読んでいたタミィがいきなり立ち上がった。

「明日は、みんなでこの『アオイ湖』に行きましょう!温泉の湖なので、この時期でも泳げるみたいです。

 貸しボートや釣りも楽しめるみたいなので、1日遊べます!」


 そういえばタミィは初日にボートに乗りたいって言ってたな。

 じゃあ、明日はそこに行ってみようか。泳げるって言っても、水着とか持ってないけど。

「大丈夫ですっ!このお店で水着も売っているみたいです!食事もできるみたいなので、1日中満喫できます!」


 ガイドブックのページを指さして得意げなタミィ。偉いぞタミィ。こういう下準備と計画が得意な人がいるとありがたいよね。


 ふむふむ、おおっ!ハンズ大臣の言ってた地竜のステーキも提供してるじゃないか!


「フェリ、地竜のステーキが載ってる」

「えっ!?たべる、たべるたいっ!」


 フェリ、それは絵だ。食べれないぞ。ほら、タミィが買ったガイドブックがベトベトになってるじゃないか。

 すまんタミィ、明日もう一冊買おうな、しょんぼりするな。

 はいはい、ヨシヨシヨシヨシ。

 唯は、頭突きが痛いぞ。ねね、そこは股間だ。



 昨日の卓球は激しかった。フェリがスリッパでの直角サーブと、手前に戻るスマッシュを覚えやがった。

 スリッパだぞっ!ラバーとか無いのよ!?


 そんなこんなで、アオイ湖である。ハクと一緒に着替え待ちである。

 俺はハーフパンツタイプの水着を購入した。ピッチリしてないやつね。

 唯にブーメランタイプを勧められたが、流石に若返って腹筋割れていてもこれを履く勇気がない。


「おまたせ〜っ!どうっ?似合うっ?」


 女性たちが着替え終わり、外に出てきた。オー!スバラシイ!

 唯は、チューブトップのビキニだ。ふくよかな胸が眩しいっ!

 ねねは、トップにフリルがついたビキニ。ボトムは短パンみたいな水着だ。デカい胸がフリルで更に強調されている。

「なんかいつもより目がエロいよね」


 そりゃそうだろっ!こんな状況で、賢者になってどうするんだっ!


「お姉さんも少し恥ずかしいわね♪」

 おおっ!デ、デカい!ねねよりデカいメロンが、脚のスリットの深いパレオが一体化した水着に包まれてやがる。

 

「‥‥皆さん、スタイル抜群過ぎです」


 タミィも、上下フリルでセパレートの可愛くて、冒険した水着で攻めてきた。

 このメンツでは仕方ない。タミィはまだまだ成長株だからね。ハーフドワーフだっけ?そういえばお母さんのミミィさんも、体型はほぼ同じだったっけ?

 大丈夫。ハーフだからね。


 フェリは泳ぐ気満々の競泳用の水着と、獣人用スイムキャップ、水中メガネ、シュノーケル、フイン。完璧だな。何その右手の銛は?突くの?



「凄く温かいっ!本当に湖とは思えないわね」

「いや~気持ちいいわ。家族連れとかも多いね。ようやく休暇って感じがするわ」

 ねねはシャチの形の、俺はスタンダードな浮き輪に乗って湖面を漂っている。ここはギリ足がつく深さだ。

 親切設計で、浅い子供が遊べるエリア、素潜りエリアなどと別れており、所々に監視員らしき人も居る。

 唯、フェリ、ハクは、深めの魚のいるエリアで狩猟に励んでいる。

 もちろん漁業権など無いので、魚を採っても貝を採っても逮捕されることもない。

 水の魔物もいるようだが、定期的に駆除されているらしく、比較的安全とのことだ。

 ネルミルさんは、水辺のビーチチェアとパラソルの下でお休み中だ。


タミィがビーチボールを浮き輪代わりに泳いで近づいてきた。

「トモさん〜、ねね様〜。後でスイカ割りしましょう!お店でスイカ割りセットが売ってました!」

 タミィ居ないなと思っていたが、そんなこと調べていたのか。

 昨日、興奮してあんまり眠れていないんだから無理はしないようにね。

 タミィは今まで、友達含めてこういった遊びをしたことが無かったようなので、とても嬉しいみたいで、真面目な性格も相まって無双状態になっている。きっとそのうち電池切れになるから、気をつけて見ていてあげないと。



「パパー!さかなとれたー!」

 遠くの方から声が聞こえた。後ろを振り返ると、遠くでフェリが体長3mほどありそうな魚を銛でひと突きにして、こちらに見えるように片手で持ち上げていた。



 それは魚なの?魔物なんじゃないのかな?食えるならばいいのか。

 


 



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