3、ハーレムロボ
脱衣所の外で待ち合わせて、3人で牛乳を飲んだ。
「トモっ!見て見て、卓球台があるよっ!」
ホントだ!なんか台の色が真っ黒だが卓球台だ。魔木なのか、この材質。無駄に贅沢な卓球台だ。
「どうするっ?少しやっていくっ?!」唯がウズウズしているのがわかる。体動かす系好きだもんな。
「やりたい気持ちもあるけど、ねねとかタミィとかも到着しているかもしれないから、また後でにしようか。夕飯食べたあとでも良いし」
「あっ、そうだねっ!アタシもお腹が空いてきたから、そっちのほうがパワー出せそうっ!」
卓球で、どれだけパワー使うのかは不明だが、まぁ時間があったらみんなで遊ぶのも旅行の醍醐味だからな。
ちなみに、スリッパが卓球台の両側にボールと共に置いてあった。
この世界では、スリッパは履くものではなく、振る物らしい。
■
部屋に戻ったら、ねねとネルミルさん、タミィが到着していた。すでにみんな浴衣姿だ。
ここでおかしいことに気がつく。
「あれ?部屋はみんな一緒なの?」
すでに一緒に住んでいる唯、フェリ、ハクは慣れたものだから別として、男が俺だけなんだが、特にネルミルさんは大丈夫なのか?
「あらっ♪お姉さんのこと心配してくれたのね♪大丈夫よ♪何だったら添い寝でもしようかしら♪」
セクシーポーズで迫るオッパイが2つ。っていうか、精神年齢は44歳の俺のほうが上だと思うんだけど。
ねねが背中から抱きついてきた。
「ほらっ、大好きなおっぱいに囲まれて幸せでしょ!」
ねねさん、浴衣のノーブラおっぱいが密着してますよ!
「ほらっ!タミィちゃんも、一緒に飛びつくよっ!」
「‥‥えっ!?は、はいっ!」
唯とタミィも両腕にしがみついてきた。
何このハーレムロボ。下半身に必殺技が充填されていくんだけど。
「あらあら、元気ねぇ♪お姉さんも参加しようかしら♪空いているのは正面だけね♪」
お姉さん、ロボの正面は巨大化した悪の怪人のポジションなので、どいてください。
フェリとハクがいないと思ったら、テーブルで煎餅をポリポリ食べていた。饅頭は無いけど、煎餅はあるのね。
友宏よ、無心だ。秋にベランダで死にかけているセミを思い出せ。ひっくり返ってジジジジジだ。
7年待って、地中から這い出たら、「あれ、周り居なくね?俺最後じゃね?」の気持ちになれ。
ふぅ、少し落ち着いたようだ。
ロボを一人づつ解除し、お茶を啜ろう。ズズ、ズズズっ。
これ、滞在の2週間、理性は保てるだろうか?
■
ご覧の通り、現在、ねねの鬼人化は解除されている。
謁見の後、俺は強制連行された。無論、弁護士は呼べない。
うなだれる俺。死刑台に到着したようだ。
「で?」
鬼の発した1文字が、なんとも、今までに、感じたことのないプレッシャーを味わう。
言い訳は無理だ。死より恐ろしい何かが待っている。短く、簡潔に、想いを伝えるしか、ここから生きて出られないだろう。
「ねねの気持ちもわかってる。俺にねねへの気持ちを伝えるシチュエーションと時間がほしい」
どうだ‥‥。
「そう」
2文字になったっ!
「俺の中に、もう人を好きになってはいけないっていうストッパーが働いているんだ。でも、そんな俺をいつも勇気づけてくれるねねを、俺は大好きだぞ」
本心だ。さあどう出る?
「うん。わかった、許す」
正解だった!勝訴だ〜!
ねねが俺に抱きついてきた。
その後、首に手を回したまま顔を少し離して、目をつぶりキス受けの表情となる。流れるような洗礼された所作だ。プロである。
腹を括ろう。そのまま、ねねに、長めの口づけをした。
「ねね、大好きだよ」
「私も、トモが大好きだよっ」
再び抱きしめる2人。周りから祝福の拍手。
恐怖から解放された唯とタミィが、八つ当たりを受けていたであろうネルミルさんが、安心感からか、涙を流す。
俺の頬にも涙が流れていた。
生還の涙である。
何このクソドラマ!?
こうして、世界は平和に包まれた。
小説やマンガで、鈍感系主人公っているけど、ほんと病気なんじゃないかっていうほど、スルーできるよね。
あれはもう、1つのスキルなんだろうな。
っと、一旦現実逃避してみる。
さて、これで右手側にねね、左手側に唯が装着された。王城の門をくぐり歩いている。花びらやライスシャワーが舞ったら、帰りのバージンロードさながらだ。
後ろには、「ワタシも頑張りますっ」って気合を入れるタミィと、それを暖かく見守るネルミルさんが歩いている。
さて、ほんとどうするか。二人共、大好きではあるが、理解と理性が、やっぱりどこかで娘という感覚が無くならない。
よくある、天使と悪魔がささやくような「グヘヘ、そんな事を気にせず、二人共お前のモノにしてしまえばいいんだぜ」みたいな悪魔が出ることもなく。
一応この世界は、多夫多妻制だ。子を残すための王族、貴族の社会として。死が身近な世界が関係しているのかもしれない。
まあ、深く考えてもしょうがないか。なるように生きよう。困ったら、その時は相談しながら考えよう。
今現在は2人とも 娘以上恋人未満辺りとします。とりあえず、ハーレム展開はまだ先の方向で。
ちょっと気分が楽になった。2人のおかげかな?
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