閑話 唯


アタシは彩芽唯

 唯って呼んでいいよっ!



 アタシが高校3年の冬、両親が離婚した。原因は両親の不仲。


 父の会社の倒産と借金からの自己破産。転職して個配軽運送の運転手になったが、ほぼフルパートの母親とすれ違い、顔を合わせることが減り、喧嘩が耐えなかった。


 アタシと3人の弟全員が母親の親権で、母と一緒に暮らした。弟達が12歳、8歳、6歳とまだ小さかった。パートに出る母の代わりに家の事をしないと、回らなかったから。


 彼氏とも別れた。夜と土日のファミレスバイトで、時間がなくなっちゃった。美術部だったから、ホントはデザイン系の専門に行きたかった。



 高校を出てからは、キャバクラでバイトしたっ。店では結構人気だったんだぜっ!お金も良いし、楽しかったしっ!でも〜、ちょ〜っと嫌な客に付き纏われて。店を変えても。


 それに、夜の仕事だと、朝のご飯と準備、寝てから、夜のご飯と出勤。アタシもお母さんも、すれ違って、喧嘩が増えて、健と悟が、一時期小学校不登校になっちゃって。寂しくなっちゃったみたい。


 お母さんと話し合って、アタシは昼のバイトに変えたんだ。正社員も考えたんだけど、ちょっと今はね。お母さんは、唯ゴメンねって泣きながら言うけど。アタシは大丈夫だからっ!



 お父さんとは、あ~、月1回会えてた。一緒に暮らしていたときより少し痩せたけど前より元気みたい。アパートでご飯を作ってあげると、毎回泣くんだぜっ!全くみっともないよなぁ。



 警備会社のバイトは時給がいいから1年くらい続いた。弟達の学校の行事とかも出れるときは出れるし、融通を聞かせてくれるっ!何より人間関係が悪くないっ!これが1番大事だなぁって。

 時々、通行人や車が、女のくせにって言い放って行っちゃうけど、もう慣れたけどね。実は結構腹立つっ!アンタに関係ないしっ。



 んでっ、気がついたらこの世界だったっ!ビックリだよねっ!でも、ゴンさんとかデラさんも居て、まぁ最初誰だかわかんなかったんだけどねっ。シンジはずっとスキルだぁ、メイドだぁうっさいし。


 あっ、そうそうっ!アタシのスキルはガードウーマンになったんだっ!

アタシが皆を守って、他の人が敵をやっつければ最強じゃない?って考えてたらこうなったっ。


 女の子がアタシの他に4人いてねっ、沙織と香は高校生で、‥‥北さんと、ねねちゃんは社会人。アタシはちょうど真ん中世代。

 最近ガールズトーク皆無だったからさぁ、結構楽しかった‥‥。




あのときまでは。




 あのときのことを思い出すと、まだちょっと怖いっ。でも、最近は思い出すこともなくなってきたっ!


 毎日がさぁ、充実してるっていうか、うん、ま、まぁ楽しくてねっ!いいじゃん、べつにぃ、ヒヒッ!


 フェリが、日々成長しているのを見ると、なんだか生きてるって気になるんだよねっ!

 最近は日本語も覚えようとしてる。パパとママのことばもしりたいんだってっ!そんなのっ、天才じゃないっ!?


 ハクが来てから、お姉ちゃん、お姉さんかな?とこで覚えてくるのかわからないけど、ちょっと大人びた言葉も使うようになってきた。

 アタシもフェリに負けてられないよねっ!



 あー、ホント、トモには感謝してるっていうか、最初はお父さんっぽいオジサンだったんだけどねっ!歳もお父さんと同い年だったし。


 もし、トモが居なかったら、死んでただろうなって時々、ふと思うんだよね。時々、ブツブツ言いながら、よくわかんないことやってるけど。いざっていうとき頼りになるっていうか、いざ以外あんまり役に立たないっていうか。フフッ。



 トモに、ドラゴンスレイヤーになってって言われたときは、こんなに大変だとは思ってなかったんだよっ!


 知らない王様に呼ばれるわ、言葉遣いはわからないわ、知らない冒険者にもみくちゃにされ、握手され、サインなんて書いたこと無いんですけどっ!

 

 愛子さんからは、「やったじゃない唯っ!運も流れも実力の内よっ!」って、多分、なんとなくわかってるみたいっ。

 他の輩に目をつけられる事も増えるだろうから、精進するのよって。流石お姉さんだな〜って感じだよねっ!



 そうそう、ハワード商会のマリリンさんがスゴク喜んじゃって、『ユイバックラー』にしましょう!ってっ!

 流石に恥ずかしいから『ドラゴンバックラー』っていう名前で増産するって張り切ってたなぁ。



 そ、それとね、昨日ねねちゃんに会っちゃって、言っちゃったんだぁっ!「隠し事は無しで、正々堂々ねっ」って約束してるからっ!



 ‥‥その時はアタシが浮かれてたんだけど、今思えば、笑顔のねねちゃんの血管ピクついてたわ。


 ‥‥ねねちゃんとの打ち合わせの件は、トモにバレてないはず。




 ま、まぁ、トモの抱え込んでいる事が少しわかったから良かったかなっ!トモってあんまり、自分の事を言わないから、伝わらないんだよねっ!もうっ!



今後の、アタシの目標はっ、


イチっ!トモとフェリとハクと一緒に日本に帰ることっ!


ニィッ!もっと、みんなを守れる強さを手に入れる事っ!


サンッ!トモをアタシの魅力で、魅力って言ってもこれからだけどっ!メ、メロメロにしてやるから待ってろよぉぉぉっ!




 明日は、王様との謁見の日っ!



 トモの話だと、明日にはハクがずっと外に出ていられるようになるって言ったっ!


 ハクも、人間の姿に戻れるようになるといいなっ!





え〜とっ、終わりっ!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る