閑話 緊急女子会
「第一回、緊急女子会を始めます」
トモとフェリちゃんが、トラヴィスの説得にギルド『悠久の翼』に向かった。
私は居ても立っても居られず、当事者である唯、当事者になりつつあるタミィちゃん、助言者としてネルミル、面白そうだから参加の愛子さん、心配でついてきたサミィちゃんの6名で、トモに対する対応を協議するため、私の部屋で女子会を開催した。
「まず、経緯を聞きましょう。唯、説明を」
「ちょっと硬すぎないっ!?ってかなんで愛子さんまでいるのっ!?ちょっと恥ずかしいんだけどっ!」
「わたし?いや、ネルから聞いて、すごーく楽しそうな話し合いをするらしいからついてきた。まさか唯が先手を取るとはねぇ~。アハハッ、だいぶ成長したよっ、さすがドラゴンに立ち向かっただけあるよっ」
「愛ちゃんがトモ君と面識があったなんてお姉さん知らなかったのよ♪今思えば、聖女騒動の時がそうだったのね♪」
「愛子様もネルミル様も、もっとタミィの応援をしていただきたいですわっ。ねね様も唯さんも、立派なレディですわっ。ご自分で恋の1つや2つなど解決出来るはずですわよねっ!
うちのタミィが、こんなに他人のことを思うことなんて今まで無かったことですわっ。
今日はなんだか、しょんぼりタミィですが、わたくしはタミィが幸せになれるなら、なんでもしますわよっ」
「‥‥お姉ちゃんっ!ワタシもっと頑張るねっ!」
「タミィっ!お姉ちゃんも頑張るわっ!」
「いや、結構ヘタレな2人なんだよな〜。ねねなんて、気持ちのない相手にはコロッと転がすことができるくせに、本気の相手には照れ隠しで冗談を混ぜちゃって、見ている方が恥ずかしいくらいだからさっ。
その点、唯は良くやったと思うよ。あのトモくんは、一発やればOKっていう感じじゃないし、一筋縄では行かない性格だしね」
「そうなんですよっ!1年になるくらい、トモと一緒の家で生活していて感じていたのは、やっぱり娘扱いだったんですよねっ!大切にしてくれているのは感じているんだけど、大きな娘のアタシと、小さな娘のフェリって感じなんだよねっ。
それでもアタシなりにはアピールし続けたんですけど!上手く躱される感じでしたっ。まあしょうがないか、急がず慌てずって思いながらも、やっぱり寂しいじゃないですかっ!好きな人が一緒に居るのに女として見てくれないのってっ!」
そうよね。唯の利点は、一緒に住んでいるってところ。一緒に魔の刻を生き延びたところ。そして、素直に自分の気持ちを表に出せるところ。
以前に、苦しい記憶を呼び起こしながらも、あのときの事を話してくれたことがあった。
まぁ~、そりゃ惚れるわ。あのときは、私がスキル目当てで避難させられてたことを恨んだっけな〜。
□
「‥‥って感じで、チューをもぎ取りましたーっ!」
みんなから拍手と歓声が上がる。
愛子さんからは大笑いの声と、「チュー学生レベルかいっ!」とのツッコミも。
その時居たタミィちゃんは、思い出し泣きなのか、悔し泣きなのか号泣している。サミィちゃんと唯がオロオロしながら慰めている。
「亡くなった奥さんと子どもたちね〜。5年でしょ?もう亡くなったのにまだ引きずるかね〜。男ってそういう変なとこあるよね。トモくんは恋愛経験少ないんじゃない?」
「トモって、自分の話をあまりしないんですよね」
「そうそうっ!あんまり自分に興味がないのか、他人に興味がないのか、スキルもそうなんだけど、本人もだいぶ変わり者だよねっ!アタシも人の事言えないけどさっ!」
「わたしの旦那なんかは、もう他の女とよくしてるんじゃないかな?そんな性格だったし、わたしもそっちのほうが気が楽だわ」
「えっ!?愛子さん結婚してたんですか!?」
「愛子さん、既婚者だったんですねっ!日本でのことですかっ?」
「うん。まーお互いサバサバしてたしね。子供もいなかったから、私が死んでこっちに来た当時はやっぱり気にはなったけど、死んでまで相手を縛りたくないし、長くなればなるほど思い出になっていっちゃうよね」
「トモは、日本に残した子供たちの事も結構思いだすみたいで、前の奥さんのマコトさんとの約束って、子供達の事が関係してるのかなって気もするんですよねっ!」
「子供達3人だっけ?」
「はいっ!上が高校生で、下が小学生高学年だったと思いましたっ」
「両親が居ないっていうのは確かに下の子がちょっとかわいそうかなってのはあるけど、もうわかる歳だしね。死んじゃってて何ができるわけでもないしね」
「その小学校とか、高学年とか言うのはどういうものですの?」
「ああ、ゴメンね。日本のノリで話しちゃったね。大体年齢で10歳前後だね」
「まぁ、10歳でしたら1人で生きていくための教えは習わなくて?」
「この世界と日本では、だいぶ違うからねー。そういえば、ネルの子供たちって今何歳になってるんだっけ?」
えっ!?ネルミルって子供居たんだ。知らなかった。
「あらあら、愛ちゃん。ナイショよナイショ♪」
「おっと失敬。勝手に口が喋っちゃった」
みんな口が開いて、驚きを隠せないみたい。そんな私も同じだ。
「もうっ♪愛ちゃんが余計なこと言っちゃうからみんなビックリしてるじゃない♪一応、子供たちはみんな成人して、元気でやってるのよ♪
あと、種族の関係でね、歳をとっても生命力が衰えないのよ。クウォーターエルフなの♪今の年齢はナイショね♪」
なるほど。謎が少し解けたけど、ちょっと話の方向が違う方に行っちゃったな。
「んでっ、トモの話に戻すけどっ、ねねちゃんも、今がチャンスだと思うんだよっ!ちょっと前にトモが提案して家族会議をやったじゃないっ?」
「唯さんが嫁で、ねね様が妻で、ワタシが奥さんだったあれですねっ!」
「お姉さんが愛人だったやつね♪」
「なんですのっそれっ!?本当に家族会議なんですのっ!?」
「アッハッハ。ホント面白いね〜」
「そうそうっ!あれのおかげで、トモの中での娘扱いが多少薄れて来てる表れだと思うんだよねっ。
アタシさー、初めてトモに会って話したとき、お父さんっていう感じを持っちゃってて、トモにもそれを話しちゃったんだっ!
アタシが、長女のあかりちゃんと歳が近いのもあるんだろうけど、最初にそう思わせちゃったのがここまで来ちゃった原因でもあるきがするんだっ!」
なるほど。私は最初、どうだったろう?
確か、最初はいつも通りの対応だったな。なんか気持ち悪い感じだった。
いつからか、話してて楽しい感じになってたっけ?
‥‥ああっ!言っちゃってるっ!「お父さんがもし居たら、トモみたいだったのかな」って!!
「‥‥唯ピー、私も、言っちゃってるわ‥‥お父さん発言‥‥」
「わっ、わっ!大丈夫だよっ、ねねちゃんっ!!あちゃーしなくてもっ!アタシもそこから挽回したからっ!」
「なるほど。そうなんですね、メモメモ」
タミィちゃんがいつの間にかノートにメモをし始めていた。
「でもさ〜トモくんも男だし、あっちの処理ってどうしてんだろね?」
「あっちの処理ってなんですのっ?」
「あらあら♪処理って言うのはね、ゴニョゴニョ♪」
「‥‥っ!!そうなんですのっ!?」
「お姉ちゃん、顔が真っ赤だよっ!大丈夫?」
「だ、大丈夫ですわっ!!タミィには、あ、後で教えますわっ!!」
「‥‥う、うん」
「男って、定期的に出さないと爆発しちゃうでしょ?娼館とかに通ってたりする?特に私達勇者って、体が若返ってるじゃない。
トモくんも、確か元は40超えてたよね。それがいきなり20だからね。頭の中はそのままでも、体は正直だよ」
「‥‥っ!!」
タミィがメモ途中の手が止まって真っ赤になっていた。
「夜はだいたい家にいるからー、昼間とかにこっそり行ってるのかなー。なーっ!それはそれでっ、なんか腹立つっ!!」
私もなんだかムカムカしてきた。こんなに近くの可愛い2人に好かれていることを知っておきながら、他の女のところに通ってるってっ!?えっ!?なにそれ!?
「‥‥ちょっと作戦を練りましょう。このままでは、トモをぶん殴りたくなってきました。いえ、足りません。股間を蹴り潰しましょう」
「ちょっとっ!!ねねちゃんっ!行き過ぎっ!それやったら元も子もないんだけどっ!!」
「アッハッハ〜!ヒーっ、お腹痛いっ。フゥー、いいんじゃないっ!?流石のトモくんも肝が冷えるでしょっ!アッハッ」
うん。行き過ぎだけど、これくらいがトモにはちょうどいいのでは?それでも私のこの怒りは収まりそうにないけど。
「‥‥あのっ!1つ提案があるんですけど、‥‥いいですか?
トモさんが、落ち着いたらのんびりしたいな〜って言ってたのを聞いていたのですけど」
「あっ!それアタシも聞いたかもっ!温泉とかあったらいいな~ってっ!」
「そうっ!そうなんですっ!あ、あの、ワタシ、お爺さまの家で療養しているときから、ずっと行きたかった温泉の旅館があって、あ、あの、みんなで、トモさんとの関係を深めるために、行きませんかっ?温泉旅行っ」
「温泉っ言ったら、アルスタールかい?いいねぇ、わたしも任務が無かったらご一緒したいねぇ〜」
「はいっ。雑誌で見た可愛い温泉旅館があって、元気になったら、‥‥ずっとみんなで行きたいな〜って思ってたんです。
アルバード様との謁見の中で、お願いとか出来ないでしょうか?」
「そうねぇ♪謁見っていうのは、王様からお褒めをいただくような場だから、こちらからの発言はそう簡単じゃないわねぇ♪」
「そ、そうですね‥‥ごめんなさい」
「いいですのよっタミィ!ここはアルバード様の前ではないのですからっ!タミィの望むことを、みんなで応援をしますわよっ!」
「‥‥お姉ちゃんっ」
「でもっ!王様の何かお願いをアタシたちでやりますよ、っていう形でなんとかならないかなっ!?交換条件ってやつっ!
ほらっ、トモがちょうどトラヴィスの件で、アルスタールの国とのいざこざを解決したじゃない?」
うん、それなら行けるかもしれない。そして私も本気を見せないと。うん、決めた。
「うん。アルスタール王国へ表敬訪問の使節団入りを申し出て見よう。
私のセシリア王国での勇者兼宮廷治療師としての立場、あとトラヴィスを説得した本人のトモがいれば、ねじ込める、ねじ込ませる。
大臣のハンズさんに、先に確認を取っておこうと思う。
それと私、宮廷治療師をしばらく休んで、トモと一緒にいることにする」
「「「ええっ!?」」」
これは私の決意だ。
「どうせだったらねねも唯も、トモくんと既成事実ぐらい作ってきなさいよ」
「しょうがないわね〜♪わたしもご一緒しますよ♪ねねちゃんの今の護衛ですからね♪」
待ってろよトモっ!私が一生幸せになってやるから。
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