第17話 人体実験スタート
今回は、結果から行こう。
ハク、カモン!
「キュイイイイーン!!」
パチンコのパトライト音みたいな登場ありがとう。
「はくー!!おめでとうー!!」
「ハクちゃん、良かったですぅ!」
「キュゥン!」
■
ネルミルさんのアシストと、タミィの呪い拘束によって、なんとか鬼と化したねねを振り切り、悠久の翼の根城ヘ。
メリッサさんに説明をし、メリッサさんへの協力とトラヴィスへの脅迫でOKが出たので、それで進めることとなりました。
「じゃ、フェリ、顔の扉を開けて」
「んっ」
扉は俺は開け閉め出来ないので、アシスタントのフェリの仕事です。
「パタッ」「てめぇっ!本当にっ「バタンッ!」
「パパ、うるさいからしめた」
よくできた娘だ。コミカルマジックショーで食っていけそうだ。
「パタッ」「て、いや〜、メリッサ、随分と久しぶりだが、また可愛いくな「バタンッ!」
「閉まっててもこっちの声は旦那に聞こえてるって言ってたっけ?全く、数ヶ月会わなかったけど、血色も肌の艶もいいし、だいぶ肥えたね。こっちはこっちで気苦労している間にブクブク育ちやがってっ!」
だいぶご立腹です。ご愁傷さま。
「この箱は、どのくらいこのままにしておけるんだい?」
「試したこと無いんですが、感覚的には、俺が消さない限り死ぬまで永遠にこのままも可能かと」
普通ならこんなことしないしね。まぁ色々実験出来るチャンスと考えよう。
箱を解除すればトラヴィスは自由になれる。真ん中の箱をスライドしてから解除すれば、キレイに解体される。解除さえしなければ、戻せば無傷で元にに戻る。
メリッサさんの許可を得て、人体切断マジックショーの始まり始まり〜!
体の部分をスライドさせてっと、
「パタッ」「おいっ!!!俺の体が途中で消え「バタンッ!」
フェリの蓋閉めのタイミングがプロ並み!
スライドを元に戻す。
「パタッ」「ちょっ、待てよ「バタンッ!」
まさかっ!月9が異世界で再現されるとはっ!!
「箱の中での飲み食いはどうしているんだい?」
メリッサさんが、みんなの昼食を用意してくれた。ありがたくいただくことにする。
メリッサさんに、元々持っていたものは中で食べたり飲んだり出来る話をする。
「パタッ」「‥‥なぁ、俺は何も持ってきてないんだが」
とりあえず、無言で開けた蓋からパンを渡してみる。が、残念ながら俺の手が箱の境目でパンごと消える。手を引くと、パンごと戻ってきた。
「横にある剣を刺す穴もそうなんですが、箱の中は異空間なので、見えたり話したりは出来ても、物を渡したり、武器で刺したりは出来ないですね。
おそらく、魔法とかの攻撃も無理かと思います。まぁトラヴィスさんは、それ以前に無効化しますけどね」
半分理解していたけど、手品でも顔はあんまり触っていたのを見たことがない。
ただ、手穴だけは、出した手でハンカチをヒラヒラさせているのを見たことがある。そう言えば、地底湖で水が触れたのを思い出した。
「トラヴィスさん、手元に穴があるんですけど、手首辺りまで出してもらっても良いですか?」
「‥‥‥これでい「バタンッ!」
フェリ、非道な仕打ちだ。
とりあえず、出ている手にパンを握らせる。あっ、パンと手が箱に入った。これは行けそうだ。
「パタッ」「パンが手に入ったが、箱が狭すぎて口に持っていけねえんだが」
そういえば、余裕のある最大サイズではなくて、トラヴィスジャストサイズで箱を発動してしまったことに、気が付いたところでどうしょうもない。
しょうがないので、顔窓を開けたまま体の部分をスライドしてみる。
もう、トラヴィスさんもツッコまない。そんなんじゃ芸人失格ですよ。
フェリに体、足の蓋も開けてもらう。
「はぁー、不思議な光景だね〜。これで生きてるもんなのかね」
体だけズレているがトラヴィスさんは、なんともない。変わったといえば、ムスッとした表情が悪化したぐらいだろう。
とりあえず気持ち悪いので、顔以外の蓋は閉めてもらった。
「フェリ、あきたよパパ」
うん、ごめんな。わかるよ。ツッコミの無いボケほど、虚しいものはないよね。
フェリには、後日の夕食をローストビーフにすることで手を打ってもらった。
■
「なぁ、ウ○コしたいんだが」
あれから2時間。進捗無く、フェリは酒場で悠久の翼のメンバーとナイフ投げダーツで遊んでいる。メリッサさんは、用事があり出かけているので、 トラヴィス箱近辺は俺1人だ。
「嫌だけど、そこで出すしかないんじゃない?」
「マジかっ‥‥」
きっと臭いは籠もるよな。唯ねねの時は、いい匂いが充満してたもんな。
箱を消せば、物体は消滅するんだけど、パンツの付属品扱いで消えないか。なぜ、こんなロリコンオッサンのウ○コの事を真剣に考えなきゃいけないのか。
「諦めは肝心です。放出しなさい。アーメン」
「おいっ、なんとかしてくれよっ!この年で脱糞かよっ、クソっ!」
上手いこと言っても、ボーナスポイントは付きません。付くのはウ○コだけ。
さらに2時間。フェリは酒場のお姉さんの膝の上で寝息を立てている。
俺もそっちがいいわ。なぜ、オッサンのウ○コの臭いにむせる嗚咽音を聞いてなきゃいけないんだか。
さらに2時間。メリッサさんが帰ってきた。俺に顔だけ見せ、「どうだい?」と尋ねてくる。「臭そうです」と返事をした。
時々、手穴から手が出て来る。換気したいのだろう。残念ながら臭いは漏れない。なんとも高性能な人体切断ボックスである。
■
「今日は泊まっていきな」と言われたので、お言葉に甘えて夕食とお風呂をいただいた。
フェリは、悠久メンバーのセリカさんとお風呂に入った。膝枕のお姉さん。雰囲気がなんとなく唯に似てるんだよな。
□
フェリと一緒に、借りたベッドで朝を迎える。顔を洗い、歯を磨き、箱男トラヴィスの下へ。
泣いていた。メリッサさんも。
一晩中、二人で話していたのかもしれない。そして、トラヴィスが切り出した。
「トモって言ったか?すまねぇ。俺が悪かった。どうか協力してくれ、頼む。このとおりだ」
トラヴィスは動けないので、土下寝の仰向けバージョンだ。
メリッサさんも、涙を拭った目で、許してやって、って言っている。
俺は、はてなボックスを解除した。
臭いと共に、トラヴィスが解放される。長時間箱に固定され、体が固まったトラヴィスを、メリッサさんが抱き起こし、寄り添いながら、風呂場の方へ向かっていった。
感動的な、夫婦の邂逅であった。
この、残り臭さえ無ければ。
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