第11話 家族会議と答え合わせ

「では、第1回家族会議を始めます」



 現在、アットマインのサブリン家のリビングをお借りして、食後のコーヒーをいただいている。

 鉱山を出てから、ま~それはそれは、もみくちゃになるほど大変だった。


 火山警備隊へ報告と、簡単な引継ぎを終えシュラス国を出た後、この街に戻ってからは熱狂的な市民の歓迎にあい、領主様に呼ばれ、色んな人に挨拶され、ギルドに行っても、色んな人に挨拶され。あとはどこに呼ばれたっけ?

 ぐったりなのだが、今みんなで決めておかないと、後々大変なのである。


「はいっ!議長っ!質問ですっ!」

 唯がノリノリで元気よく挙手する。街に戻ってから1番もみくちゃにされたのに元気だな。


「はい、唯クン。発言を許可します」

「これって、家族会議でしょっ?アタシの立ち位置は『妻』でいいですか?」

「ちょっと、なんで唯ピーが『妻』なのっ!?トモ、唯ピーの発言撤回を求めます!そして私も『妻』を求めます!」

 ねねが発言を撤回ではなく使いまわしてきた。


「それって大事?『長女』『次女』とかでいいん

「「大事っ!!」」

 2人の圧と『これだけは譲れない』というすごみに負け、立ち位置制を許可しました。

 

 その後、タミィが「私も‥‥『妻』がいいです!」となり、3者の話し合いの結果、ねねが『妻』で、唯が『嫁』、タミィが『奥様』で決まったらしい。


「アタシはっ、『うちの嫁さんっ』って言われるの好きなんだよねっ」

「今の時代、嫁って言うのは時代錯誤じゃない?まあ本人が言うならいいのかな、異世界だし」

「‥‥ワタシが『奥様』っ‥‥‥」

 まあ、本人たちが良くて、会議が円滑に進むなら今は良しとしとこう。


「ガハハッ。ではワシは『じいじ』だな。こんなに早くひ孫の顔が見れるとは思わなかったぞい」

「んっ。フェリは『むすめ』。これだけはゆずれない」

 豪快に笑うじいじと、その膝の上でバターサンドを食べるひ孫娘。


「では、お姉さんは『愛人』ということでっ、ネッ♪」

 ネッ♪じゃないでしょネルミルさん。

 

 3人の妻と、娘と妻の親が同席している場で愛嬌を振りまく愛人がいる状況。修羅場しか予想できない展開だよね。


 サブリンさんとネルミルさん、タミィにも会議に参加してもらっている。ちょっと大事だから、この世界の住人先輩として外部の意見も貰いたい。信頼できる3人だ。

 ちなみにサミィは、転移術の使わせ過ぎで現在就寝中。セシリア王国への報告など、バンバン飛んでもらったので、後でお礼をしないといけない。



「すぅ〜、はぁ~。あ、あのっ、皆さんのお蔭で、全て回復しました。本当にありがとうございましゅ」

 タミィが初めに挨拶する。みんなから拍手が起こる。サンドライトの抽出が終わり、アーノルド率いる宮廷薬師による処方で、タミィの呪力も回復された。


 原因は、俺の無理やり呪い解除だったわけなので、完治して良かった。1つ肩の荷が降りた感じだ。

 タミィの話では、呪い返しのことは理解していて、以前にも擬似訓練と治療は行っていた。その時は、契約の破棄と専用の薬での治療で治っていたらしい。


 呪いの装備というのは、解呪するとその装備している持ち主から外れるか、装備が消滅するかのどちらからしい。

 多分だけど、『呪いの装備を解呪したけど、なぜかそのまま装備を解除していない』という、意味不明な現象が起きてしまったことによる作用が働いてしまったのではないかと予想を話した。


「まあ、トモの手品は意味不明だからねぇ」

 ねねがバターサンドをつまみながら俺のスキルを褒め称えた。後でデコピンをお見舞いしておこう。


 どちらにしても、セシリア王国には、こういった事態あるということも念頭に置いて精進してもらおう。



「続いてドラゴンを退治したことについてですが」


「えぇぇぇっ!?ドラゴンを、退治したんですかぁ〜!!!」

 タミィが今まで聞いたことのないくらいの大きな声で、驚きを表す。


 そういえば、部屋で休んでいたタミィには伝えていなかったか、とみんなも驚く。


「ママがど〜んってしたの」

 街についてからフェリももみくちゃにされ、色んな人に聞かれすぎて、受け答えに飽き飽きしたのか、途中からこれに落ち着いていた。


「ど〜んってっ!!!スゴイじゃないですかっ!!って、えっ、皆さん、反応が‥‥弱くありません?」

 タミィが周りのみんなの反応を見て、急に恥ずかしくなったのか、声が小さくなっていった。


「まあね。唯ピーが1人で倒せるレベルのドラゴンだったら、私も大感激なんだけどね」

「お姉さんも、ねねちゃんをとっさにかばったけど、2人共というかみんな死んだと思ったわっ♪」

「ガハハッ。ワシですらあのドラゴンを見た瞬間、鉱山ごと消滅すると思ったからのう」

 そうだよね。俺も死んだと思ったから。


「それにね、唯の演技がヘタクソ過ぎるし、トモの表情が無表情過ぎるし!」

「ガーンっ!ヘタクソ‥‥」


 俺もかっ!しまった、ポーカーフェイス過ぎたか!でも、途中途中、ツッコミたくてしょうがなかった俺を自制出来た自分をを褒めてあげたい。


「それで、ドラゴンはどうなったの?まあ、大体は想像出来るんだけど」

 ねねがジト目で睨んでくる。妻に浮気を疑われる夫の状況だな。ここ会議上では、当事者だらけで疑いではないようだが。


「実は、ここにいるんだよね。出ておいて、ハク」


 そう言って、手に持っている黒い布袋の紐を解いた。そこから、手に乗るほどの大きさになったアルビノミニドラゴンが飛び出してきた。


「キュゥゥゥゥゥ〜!」


 ハクは、サブリンさんの膝に乗るフェリの方へ翼を羽ばたかせ飛んでいった。

「はく〜!おかえり」

「キュゥゥン!」


「これがドラゴンですかっ!可愛いですぅ!」

 タミィも近寄り、フェリのお腹に乗ったハクに指を差し出して、頭を撫でた。ハクも気持ちが良さそう。初対面だが、危険な人かそうじゃないか判断出来ていそうだ。タミィの性格や雰囲気がそうさせるのかな?



 最初はコインマジックの『コインを付属した物が消失するマジック』で対応しようとした。

 これならば気配は消せるし、一緒にいれば隠れたままここを出れるのではと。

 ただ上手く行かなかった。対象が大きすぎたのか、対象に対してコインが小さすぎたのか、手品としての消せる範囲を超えていたのかはわからない。

 ただ、姿は消せてもハクの大きさでは通れない場所をどうするかの問題があった。『コインの消失マジック』では、消えるのではなく、見えなくなるだけだから。

 

 そして、もう一つの可能性を試してみた。アシスタントの追加だ。現在、フェリが手品のアシスタントになっている。これがもう一人くらいは追加出来るんじゃないかと踏んでいた。


 結果としてはダメだった。まず、ハクが、ドラゴンから男の子に戻る事が出来ないようだった。フェリがそう言っているから確実だろう。

 そして、ドラゴンがアシスタントにはなれなかった。これは、大きさの関係なのか、アシスタント後のイメージなのか。もしかしたら、性別の関係かもしれない。


「トモのアシスタントって、バニーガールになっちゃうもんねっ。エロだからっ」

 唯一、フェリがバニーガールに着替えていた事を知っている唯がそんなことを言う。

 エロではない。エロだが。手品のアシスタントはバニーガールだろっ!これは男のロマンだぁ!

 叫んだら、ねねと唯に呆れられた。タミィは、「‥‥私は、バニーガールでも、いいですよっ‥」って恥ずかしがりながら呟いていた。それを聞いてガハハと笑うサブリンさんの目が笑っていない。


「お姉さんは、まだバニーガールでもイケるかしらっ♪」

 ネルミルさんが色気タップリに流し目をしてくる。

 おー、いつでもウェルカムですっ!!って言ったら、ねねにグーパンチされた。


 ねね自身だったら絶対エロバニートークに乗ってくるはずなのに、ネルミルさんのエロ誘導にはグーパンチという恐妻だった。



 話が逸れた。もとに戻るが、あれこれ試したところ、ふと「鳩なら行けるんじゃないか」と思ったときに、『シルクハットからハトが出るマジック』が発現した。


 ハトでは無くドラゴンだけど、飛べれば一緒だ。その影響で、ハクはハトサイズになってしまったわけだが。

 シルクハットが無かったので、フォブさんから受け取って余っていたこの黒い布袋を代用した。


『鳩(サイズのドラゴン)をシルクハット(のような袋)から出現させるマジック』


 サンドライトの魔力を相殺しない特殊な袋だから成功したのかもしれない。

 ハクは実際に袋の中にいるのではなく、別空間の小屋みたいな所にいるみようだ。


「まあ、そんな感じだとは思ったけど、ハトサイズのドラゴンになっているとは思わなかったわよ。本当に、トモの手品は意味不明だわ」



 まあそこは、異世界だからということで。俺にもわからんし。

 幸せならそれでいいよね。


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