閑話 サミィタミィ
わたくしはサミィ・ローズムーン。勇者の血を継ぐ由緒正しきローズムーン伯爵家の次女よっ。
あの由緒正しきマドモアゼル魔導学園を、優秀な成績で卒業したんだからねっ!
ま、まぁ、首席で卒業ってわけには行かなかったんだけど‥‥
それでもっ!!祝福の儀式で、ローズムーン伯爵家に代々伝わる『転移術』のスキルを受け継いだエリート中のエリートなのよっ!
そしてっ!お兄様やお姉様と一緒に、宮廷魔道士として、日々魔術を研鑽しているわっ!
宮廷魔道士として3年勤めてわかったことは、ホント、ここにいる魔道士はオバケばっかりだったってこと。
特に、今お使えしているリス・アルマティ様の大きい魔力には、ビックリだったわっ!!
最初にお会いしたときには、睨まれただけで、恐怖で少しオシッコを漏らしてしまったくらいでしたわっ。
あっ、これは一生誰にもナイショ。優しいお母様にも秘密にしているわ。
今回、18年ぶりに勇者召喚を行うことになって、領主になったお父様の代わりに、このわたくしが召喚術を行うことになったのよっ!
まだお父様みたいに、どこにでも転移できるわけではなく、魔法陣を設置した絨毯が置いてある所にしか転移出来ないのだけれど、今まで1回も失敗したことがないのがわたくしの自慢なのっ!
でも、本番では絶対に失敗出来ないし、お父様みたいに上手に出来るか心配で心配で、何回も何回も練習して、お父様に相談して、お父様の前で泣いてしまって、それでも優しい声でヨシヨシしてくれて‥‥‥
って、話がズレてしまったわねっ!
召喚勇者側の方は、リス様が座標と魔法陣を設置してくれるらしいから、私はいつも通りに転移術を発動させればいいって言っていた。
今回は、妹のタミィも一緒に参加するから、お姉ちゃんとしてしっかり守ってあげないとだからねっ!
タミィは、『呪術師』っていうスキルで、治療や呪いで活躍するスキルなんだってっ!スゴイでしょっ!
他の国の勇者召喚では、悪い勇者を召喚してしまった国があって、お城が吹き飛んでしまった事もあったみたい。
タミィも、『悪い勇者が出たら、私がお姉ちゃんを守るねっ』って言ってくれたっ!
タミィは、とっても人見知りで恥ずかしがり屋なのに、なんて可愛いのっ!
大丈夫よっ、タミィ!
悪い勇者が出てきたら、私の転移術で何処かに飛ばしちゃうからっ!
■
そして当日、召喚は無事成功したんだけど、セシルバンクル様がおっしゃっていたのは、今回の召喚者は多くて4人って話じゃなかったのっ!?
どうしようっ!?どうしようっ!?
倒れている勇者もいるみたいだけど、20人くらいいるみたいっ!!
どうしようっ!?どうしようっ!?
もしも、悪い勇者がいっぱいいたら、こんな小さい砦なんてすぐ壊されちゃって、タミィも、リス様も、私も死んじゃって、、、
怖くって、とても怖くって、涙が出そうになってたら、隣のタミィが、手をギュッってしてくれて、小さい声で「お姉ちゃん、大丈夫だよっ」って言ってくれた。
そうだっ!私がタミィを守らないとっ!怖いのはタミィも同じなのにっ!
リス様の方を振り返ったら、笑顔を返してくれた。
スゴく大きな魔力を発動させながら。
「何かあったらわたくしがタミィを、みんなを守るんだっ!」
杖を構えて、万が一のときの転移術の準備を始めた‥‥
■
結果としては、悪い勇者はいなかったみたいで、勇者たちは、冒険者のミレイさんが対応を進めていった。
『翻訳のミサンガ』には、わたくしたちに対して敵対心が働かないよう、タミィの呪いが付与されている。
あとは、一人づつバリテンダー城に転移させれば終わりって、言ってたのにぃぃぃっ!!
勇者の人数が多かったからって、わたくしたちで授業をしなきゃいけないのよっ!?
□
‥‥ま、まぁ、そうですわね。ローズムーン伯爵家のエリートですしっ、勇者血統の先輩としては、適任と言われればそうかもしれませんけど。
そんなっ!才能ってわけでは‥‥首席ではありませんでしたけど、努力はいたしましたわっ!
まぁ、お兄様やお姉様も‥‥
わかりましたわっ!!新人勇者様の皆様に、しっかり教育して上げましてよっ!!
■
そうと決まればっ!早速準備をしなければいけませんわねっ!
タミィも手伝ってくれるので、余裕を持って準備は万端、パーフェクトにしないとですわっ。
先輩として、バッチリなところを見せつけてあげますわよっ!!
■
「な、な、な、なんですのっ!?あれはっ!!前の方の男性達はっ!?
全員、途中から寝てましたわよねっ!?」
ローズムーン家として、先輩として、ムカムカが止まらないですわ。
「お姉ちゃん‥‥。でも、後ろに座ってた男の人は、メモまで取ってしっかり聞いてくれていたよっ」
後ろの、あぁ、少しボーッとした顔の17番の男性ねっ。
急に質問されたから、ピザの話になってしまったけど、食いしん坊って思われなかったかしら‥‥
後半の授業は、簡単に切り上げてしまいましたわっ!なんだかお腹が空いてしまいましたっ!
タミィと一緒に部屋に戻り、お弁当をいただくことにしました。
「一応これで、今回のわたくしたちのお仕事は完了ってことでいいのかしら?
お姉様には、目ぼしい男性がいたら‥‥なんて言われてましたけど、碌な方は居ませんでしたわねっ!」
一緒にお弁当を食べるタミィを見ると、なんだか顔が赤いですわっ。
「タミィは、気になる方が居ましたのっ?」
「私は‥‥」
タミィがこういうときは、きっと気になった方が居ましたのねっ!!
「そういえば、休憩の後に、タミィがコーヒーを持って行った方がいましたわねっ」
「‥‥‥っ!!」
まぁっ!!今まで、他人と接する事が出来なかったタミィが、真っ赤になるなんてっ!!
「‥‥気になるのかどうかわからないけれど、真っ直ぐな目でお姉ちゃんと私で作った授業の話を聞いていてくれてたから‥‥‥その‥‥‥」
これは、もう確定かしらねっ!!タミィが異性に興味を持つなんてっ!!
ここはお姉ちゃんとして、学園時代のお友達から聞いた、お友達の従兄弟の経験話で、後押ししてあげるしか無いわねっ!!
□
「それでねっ!その時のお相手の男性がねっ!」
わたくしのお友達のお友達の従兄弟の告白話を、タミィがニコニコして聞いていてくれたとき、
バタッと横向きにタミィが倒れ‥‥
「タミィっ!?」
すぐにタミィのそばに駆け寄って、声をかけたのっ!!
でも、返事が無くってっ!!
「誰かっ!!タミィがっ!!」
大声で助けを呼んだ。護衛の兵士や、メイド達が慌てて駆けつけてくれた。
ベッドに横になるよう寝かせたけど、意識は戻りそうにない。
私がなんとかしなきゃっ!
「リス様に連絡をお願いっ!わたくしとタミィは、お母様の‥‥、いえっ、ローズムーン伯爵家に転移で戻りますっ!」
すぐに絨毯を用意して、その上にタミィを寝かせ、上半身を抱きかかえるっ!
「後はお願いっ!」
転移術を発動させる。
タミィは、お姉ちゃんが守るからねっ‥‥
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