第8話 魔女っ娘ツインズ
会場に入ると、昨日はリスさんがいた教壇に魔女っ娘ツインズが立っている。
今日の先生は2人なのかな?会釈して、とりあえず空いてる席に着く。
前の方の席には、作業員軍団と姫みたいな感じで、ギャル風姉ちゃんを囲んで座ってる。
「結構スゲーんだぜ!俺のスキルってやつ。なあー、ユイ聞いてるー?」
「シンジうっさいっ!みんな静かにしてるんだってっ!」
隣の席の男の子は、ずいぶん背が高い。ユイさんって名前なのね。ユイさんの口調からすると、ギャル風っていうよりヤンキー風かな?
その隣には、家政婦の北さんと、魔性のねねさんの女性陣が並んでいる。
ねねさんが小さく手を振ってくれたので、こちらも軽く会釈をしておいた。
俺の近くには、バス運転手の山本君、ピアノ調律師の佐々木さんがいた。
山本君は、事故のショックから立ち直ったみたいだな。山本君が悪いわけじゃないから。
あの場所で猛スピードで突っ込んできたトラックは、どうやっても避けられなかったよ。
佐々木さんは、ほぼ同い年の、俺と同じ残念スキル仲間だ。
ゲーム好きが講じて、異世界でも需要のありそうな『僧侶』を希望したのだが、スキルが『読経』だった。「失敗したわ~」と悔やんでた。
わかるよ、その残念な気持ち。
回復魔法を求めて、供養魔法だったときの喪失感。成仏したい亡霊にとっては癒やしだよ。
仕事の調律と相性いいんじゃない?と言ってあげたら、「なるほど。物は考えようか」と、だいぶ持ち直していた。
コティ村上さんと、高校生グループが見当たらない。
村上さんは、超筋肉痛かな?回復したら、スーパーなんとか人みたいにパワーアップしていることを願おう。
■
そんなことを考えていたら、魔女っ娘ツインズからこの世界の地図が配られていた。
今日の講師は、宮廷魔道士のサミィさんとタミィさん。ローズムーン伯爵家だそうだ。
お姉さんがサミィさんで、妹がタミィさん。なんと、勇者の家系らしい。
先祖が転移者ってことね。
やはり双子だそうだ。2人の違いが全く分からん。せめて服とかリボンとか何か変えてくれればいいのにと思う。
「それでは、私達が勇者の先輩として、皆様に授業をして差し上げますますわっ。よろしくて!?」
「‥‥よ、よろしく‥‥」
なるほど。ノリがいいのがお姉さんで、気弱なのは妹さんだな。妹のタミィさんはもう顔が真っ赤だ。
□
地図を見て、世界観の違いが身に沁みる。
この世界は正方形の1つの大陸になっており、海がない。ゲームの世界地図か、箱庭かと思われる様相だ。
大陸が移動するとか、海の生物から進化したとか、そういう概念は無いのだろう。異世界だもんね。
世界の真ん中には、どデカイ火山がそびえ立っている。山の名前はそのまま「火山」。
すべての国にまたがっていて、どの国でもこの名称とのこと。
正方形の大陸の外側は、全て森で囲まれている。そこには『深淵の森』と書いてある。
「深淵の森の木は、『魔木(マボク)』と呼ばれていますわ。とても硬く、魔導具の材料や、燃料エネルギー、武器の材料や建築資材など様々な用途で利用されていますのよ」
真四角な大陸、真ん中にどデカい火山、外側にはどの国も深淵の森があり、地図の中心点から放射線状に真っすぐ8分割され、各国の領地とになっている。
同じ面積で、8つの国があるってことだな。国同士での争いとかは無いのかな?
地図には、大きい湖や山脈、街の名前が記載されている。
正方形の土地が直径で1000km。各国の国土は125,000km平方メートル。
火山を抜かしたら、日本の東北地方と関東地方を足したぐらいの面積か?思っていたよりも広い。
世界地図からこの世界を例えると、フチの大きい真四角なフライパンの真ん中で、目玉焼きを焼いているような形。例えが良くないか。
「例えれば、正方形のピザを、真ん中から8つに切り分けた形になっているのですわっ」
サミィ先生の例えも、俺とあまり変わりがなかった。
この世界のピザは、四角いのだろうか?生地を作るとき伸ばしにくいけど。
8つ国がある中、現在国として成り立っているのは6つの国で、人間の国が3つ、獣人の国、ドワーフの国、エルフの国がそれぞれ1つずつだそうだ。
やっぱりエルフは居るんだ。ホント、小説みたいな、ゲームみたいな世界。やっぱり、耳はとがっているのだろうか?
過去に2つの国が禁忌を犯して滅んだらしい。では何が国を滅ぼしたのか。それは、魔物と呼ばれる存在だそうだ。
禁忌とはなんぞ?教えて!サミィ先生!質問してみたら、「神様のルールですわっ」と言われた。やっぱりいるのか神様。
この世界を作ったのが神様だそうだ。その神様が作ったルールを破ると、スゴイ被害が襲うらしい。何がスゴイのか?とてもスゴイらしい。
永遠に終わらないので、質問をやめた。何を禁忌とするかの定義は、まだ解明されていないようだ。
「話が逸れてしまいましたわねっ。世界の説明に戻らさせていただきますわっ」
俺のせいですね。ごめんなさい。
世界の外側はとの境目には、『世界の果て』と呼ばれる透明な壁があり、この世界の住人は通過ができない。
魔物は、世界の外側から、『世界の果て』を超えて来る。すでに滅んでいる2つの国は、大量の魔物の襲撃により滅んだそうだ。
魔物は、自分たちが知っている動物のような『生魔物』と、心臓の代わりに魔石でエネルギーを産み出している『魔魔物』はに分かれている。
生魔物は食材や、毛皮などを加工した装備品として利用される。魔魔物は魔石を残し消滅するらしい。
魔魔物は食べることができないわけか。ゴーストとか幽霊とかの分類かな?あっ、一緒か。それならば佐々木さんのスキルは有用そうだな。
深淵の森が広がったり、森に住み着いた魔物が溢れ出して街を襲うことがあるので、木工ギルドと、冒険者ギルドが伐採や駆除をしているとのこと。
やっぱりあるんだな冒険者ギルド。そして木工ギルドか。伐採って言うことは、生産系ギルドではなくて、木こりのギルドみたいな感じなのかな?
冷蔵庫も、トイレもシャワーも魔木や魔石で動かしているらしい。
なるほど。乾電池みたいなものか。魔石は魔木より魔透効率がいいとのこと。
何だろ?魔透効率って?またサミィ先生に質問したのだが、専門用語が多すぎて分からなかった。
とりあえず、魔木よりも魔石の方が希少で、火力が高くピザが美味しく焼けるのだけはわかった。
セシリア王国内には、領地内に5つの壁が存在し、深淵の森の拡大防止や、魔物の侵入を防ぐ役割をしているそうだ。
王城は第2門の内側にあり、このバリテンダー城は、4つ目の壁と一体になったお城らしい。
う~ん、情報が多すぎて、そろそろお腹がいっぱい‥‥‥
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