第8話 魔女っ娘ツインズ

 会場に入ると、昨日はリスさんがいた教壇に魔女っ娘ツインズが立っている。

 今日の先生は2人なのかな?会釈して、とりあえず空いてる席に着く。

 前の方の席には、作業員軍団と姫みたいな感じで、ギャル風姉ちゃんを囲んで座ってる。


「結構スゲーんだぜ!俺のスキルってやつ。なあー、ユイ聞いてるー?」

「シンジうっさいっ!みんな静かにしてるんだってっ!」

 隣の席の男の子は、ずいぶん背が高い。ユイさんって名前なのね。ユイさんの口調からすると、ギャル風っていうよりヤンキー風かな?


 その隣には、家政婦の北さんと、魔性のねねさんの女性陣が並んでいる。

 ねねさんが小さく手を振ってくれたので、こちらも軽く会釈をしておいた。


 俺の近くには、バス運転手の山本君、ピアノ調律師の佐々木さんがいた。

 山本君は、事故のショックから立ち直ったみたいだな。山本君が悪いわけじゃないから。

 あの場所で猛スピードで突っ込んできたトラックは、どうやっても避けられなかったよ。


 佐々木さんは、ほぼ同い年の、俺と同じ残念スキル仲間だ。

 ゲーム好きが講じて、異世界でも需要のありそうな『僧侶』を希望したのだが、スキルが『読経』だった。「失敗したわ~」と悔やんでた。


わかるよ、その残念な気持ち。

 回復魔法を求めて、供養魔法だったときの喪失感。成仏したい亡霊にとっては癒やしだよ。


 仕事の調律と相性いいんじゃない?と言ってあげたら、「なるほど。物は考えようか」と、だいぶ持ち直していた。


 コティ村上さんと、高校生グループが見当たらない。

 村上さんは、超筋肉痛かな?回復したら、スーパーなんとか人みたいにパワーアップしていることを願おう。



 そんなことを考えていたら、魔女っ娘ツインズからこの世界の地図が配られていた。


 今日の講師は、宮廷魔道士のサミィさんとタミィさん。ローズムーン伯爵家だそうだ。

 お姉さんがサミィさんで、妹がタミィさん。なんと、勇者の家系らしい。

先祖が転移者ってことね。

 やはり双子だそうだ。2人の違いが全く分からん。せめて服とかリボンとか何か変えてくれればいいのにと思う。


「それでは、私達が勇者の先輩として、皆様に授業をして差し上げますますわっ。よろしくて!?」

「‥‥よ、よろしく‥‥」


 なるほど。ノリがいいのがお姉さんで、気弱なのは妹さんだな。妹のタミィさんはもう顔が真っ赤だ。



 地図を見て、世界観の違いが身に沁みる。

 この世界は正方形の1つの大陸になっており、海がない。ゲームの世界地図か、箱庭かと思われる様相だ。

 大陸が移動するとか、海の生物から進化したとか、そういう概念は無いのだろう。異世界だもんね。


 世界の真ん中には、どデカイ火山がそびえ立っている。山の名前はそのまま「火山」。

 すべての国にまたがっていて、どの国でもこの名称とのこと。


 正方形の大陸の外側は、全て森で囲まれている。そこには『深淵の森』と書いてある。

「深淵の森の木は、『魔木(マボク)』と呼ばれていますわ。とても硬く、魔導具の材料や、燃料エネルギー、武器の材料や建築資材など様々な用途で利用されていますのよ」


 真四角な大陸、真ん中にどデカい火山、外側にはどの国も深淵の森があり、地図の中心点から放射線状に真っすぐ8分割され、各国の領地とになっている。

 同じ面積で、8つの国があるってことだな。国同士での争いとかは無いのかな?


 地図には、大きい湖や山脈、街の名前が記載されている。

 正方形の土地が直径で1000km。各国の国土は125,000km平方メートル。

 火山を抜かしたら、日本の東北地方と関東地方を足したぐらいの面積か?思っていたよりも広い。

 

 世界地図からこの世界を例えると、フチの大きい真四角なフライパンの真ん中で、目玉焼きを焼いているような形。例えが良くないか。


「例えれば、正方形のピザを、真ん中から8つに切り分けた形になっているのですわっ」

 サミィ先生の例えも、俺とあまり変わりがなかった。

 この世界のピザは、四角いのだろうか?生地を作るとき伸ばしにくいけど。


 8つ国がある中、現在国として成り立っているのは6つの国で、人間の国が3つ、獣人の国、ドワーフの国、エルフの国がそれぞれ1つずつだそうだ。

 やっぱりエルフは居るんだ。ホント、小説みたいな、ゲームみたいな世界。やっぱり、耳はとがっているのだろうか?


 過去に2つの国が禁忌を犯して滅んだらしい。では何が国を滅ぼしたのか。それは、魔物と呼ばれる存在だそうだ。

 禁忌とはなんぞ?教えて!サミィ先生!質問してみたら、「神様のルールですわっ」と言われた。やっぱりいるのか神様。

 この世界を作ったのが神様だそうだ。その神様が作ったルールを破ると、スゴイ被害が襲うらしい。何がスゴイのか?とてもスゴイらしい。

 永遠に終わらないので、質問をやめた。何を禁忌とするかの定義は、まだ解明されていないようだ。

 

「話が逸れてしまいましたわねっ。世界の説明に戻らさせていただきますわっ」

 俺のせいですね。ごめんなさい。



 世界の外側はとの境目には、『世界の果て』と呼ばれる透明な壁があり、この世界の住人は通過ができない。

 魔物は、世界の外側から、『世界の果て』を超えて来る。すでに滅んでいる2つの国は、大量の魔物の襲撃により滅んだそうだ。

 魔物は、自分たちが知っている動物のような『生魔物』と、心臓の代わりに魔石でエネルギーを産み出している『魔魔物』はに分かれている。


 生魔物は食材や、毛皮などを加工した装備品として利用される。魔魔物は魔石を残し消滅するらしい。

 魔魔物は食べることができないわけか。ゴーストとか幽霊とかの分類かな?あっ、一緒か。それならば佐々木さんのスキルは有用そうだな。


 深淵の森が広がったり、森に住み着いた魔物が溢れ出して街を襲うことがあるので、木工ギルドと、冒険者ギルドが伐採や駆除をしているとのこと。


 やっぱりあるんだな冒険者ギルド。そして木工ギルドか。伐採って言うことは、生産系ギルドではなくて、木こりのギルドみたいな感じなのかな?


 冷蔵庫も、トイレもシャワーも魔木や魔石で動かしているらしい。

 なるほど。乾電池みたいなものか。魔石は魔木より魔透効率がいいとのこと。


 何だろ?魔透効率って?またサミィ先生に質問したのだが、専門用語が多すぎて分からなかった。

 とりあえず、魔木よりも魔石の方が希少で、火力が高くピザが美味しく焼けるのだけはわかった。


 セシリア王国内には、領地内に5つの壁が存在し、深淵の森の拡大防止や、魔物の侵入を防ぐ役割をしているそうだ。

 王城は第2門の内側にあり、このバリテンダー城は、4つ目の壁と一体になったお城らしい。



 う~ん、情報が多すぎて、そろそろお腹がいっぱい‥‥‥

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