第5話 『マジシャン』違い
魔女っ娘ツインズに誘導され、転送魔法陣なる絨毯でまた違う場所に移動させられた。
その後、メイドさんに、ホテルの1室みたいな部屋に案内され、ベッドに倒れ込む。
今日は色々あったので、心身的に疲れた。
■
ベッドにうつ伏せになり、先程のやり取りを思い出す。
右手には先程渡された、
『スキル : コインマジック』
と書かれた紙。
手品師。
うん、マジシャン違いだな。
確かに昔、会社の忘年会で数回、手品を披露したことがある。
だけど、100円ショップで販売してるアイテムを使った簡単なマジックだ。
手先は器用な方だけど、手品の知識なんて、その時見た入門書や、テレビで見た知識くらいのもの。
部屋に置かれていた水差しから水を注ぎ、喉を潤す。
「まあ、しょうがないか。気持ちを切り替えて行こう」
なってしまったものはしょうがない。プラスに考えよう。
時々あるよね。弱いスキルだけど、頑張って育てたら、最強だったみたいな話。
手品師ならば、もしかしたらそのうち手から火くらいは出せるかもしれない。そんなマジックを見たことがあった。
ただ、攻撃火炎魔法までは行かないだろうし、さてどうしたものか。
スキルを伝えられてから、頭にモヤがかかったようにボーッとしたままここまで来てしまったけど、水を飲んで少しやる気が出た。
さてまずは、この世界を生き抜くために、現状把握と検証から始めようか。
□
まずはこの『手品師』のスキルから。
コインマジックか〜。
左手のコインが右手に移るみたいな感じかな?
とりあえず、財布から10円玉を取り出し、握りしめて念じてみた。
ん?
なんか左手が光ってる気がする。
両手を開くと、右手に10円玉が移動していた。
おおっ!!成功したよっ!!
今度は右手に握りしめ、念じてみる。今度は右手が光っている気がする。そして、左手に10円が移動した。
全く、魔法っぽく無いが。
手品だし。
いくつか試した結果として、『コイン』ならば成功した。
続けて左手10円玉、右手100円玉の同時移動を試したが、これも成功した。コインが交換された結果だ。枚数も何枚でも移動ができた。
回数を重ねても、魔力切れみたいなことにはならなそうだ。
マジックポイントみたいな概念ではないのかな?
それともコインの額面が影響するとか?
しかし、1000円札やコップと水差しなどで試したが、これは何も起こらなかった。
コインと紙幣の同時移動に挑むが、移動したのはコインだけ。
『スキル : コインマジック』
コインじゃないと発動しないのだろう。カジノのコインでも可能なのだろう。
スキルの詳細説明が欲しいな。
‥‥‥う~ん、
この世界の魔物がどんな生物なのかわからないけど、確実にわかることが1つ。
これで魔王を倒すのは無理ということ。スライムすら倒せない。
弱いスキルだけど、頑張って育てたら、弱さは変わりませんの可能性が出てきた。
これでは、戦いの異世界は生き抜けない。ってか、手品師って言う職業は、戦闘職ですら無いんだろう。
戦闘系=✕、生産系=✕、補助系=✕、回復系=✕、楽しませる系=○
昔やってたRPGのゲームの遊び人を思い出した。レベルが20になったら、賢者に転職出来るんです!
しかしこの世界、レベルシステムも、転職システムも無さそうなんです!
日本ならば、日曜日の駅前ロータリーで披露すれば、おひねりくらいは稼げるかもしれない。
しかし、この世界で生きていく中で、大道芸で生計は立てられるものだろうか?
住民が居るならば、娯楽は必要だろうからなんとか生きていけるかな?ただ、コインマジックだけでは?地味すぎる。
住人の生活水準はどれくらいなんだろう。貴族とかがいるならば、最悪、娯楽要員として雇ってもらえないかな?
勇者とは言っても、ある程度の知識チートがすでに実践されている世界。
実績のない俺の履歴書は、特技欄の「なんと!コインが動かせます」だけ。
うん。書類選考で落とされるレベルだわ。
無理な場合は他の職を探すか、魔物がいる世界ならば、テンプレ的に冒険者ギルドなんかも存在しているかもしれない。
どっちにしても、まずはこの世界の事をもっと知る必要があるなぁ‥‥‥
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