第4話 王都にて

「以上が、今回の召喚された勇者のスキルになります」



 ここは、王都セシリア城の一室。

 きらびやかな室内で跪き、報告するのは、特級宮廷魔道士のリス・アルマティ。


「引き続き、勇者の監視を続けよ」

 魔道士に返答した初老の男は、セシリア王国の大臣、ハンズ・クロウティー。

 先代の王より仕えてきた忠臣である。


「はっ」

 リスは踵を返し、謁見の間から退室する。



「17人か‥‥」


 召喚された勇者の数に対し、眉間にシワを寄せるのは、この国の王、アルバード・セシリア。

 先代の崩御に伴い、若くして王位を継承した国民に人気の高い君主である。


「どう思う、セシルバンクルよ」


 耳に特徴のある麗しき女が、前に出てくる。種族はエルフ族。

 若かりし国王と共に、国の危機を救った英雄の一人でもある。


「ザムセン国を襲った『魔の刻』は、勇者召喚、『クラス転移』が原因で起こったとほぼ立証されている。


ザムセンでは、

召喚勇者は40人だった。

有力なスキル保持者が複数含まれていた。

勇者は王城にいた。

40人全てが消えた。

王城を含めた8割の国土と、国王、王族含めたその土地にいた国民全てが消滅した。

召喚から3日目の暗刻だった。


これは『神のルール』なのだ。


ザムセンの消滅は、勇者と召喚国を狙ったもの。

勇者だけ差し出しても変わらない。


最悪の場合、3日目の暗刻に、国土の4割に相当する第4門までの王国民と土地、そして勇者が消える。


‥‥混乱は起きるが、消滅の可能性のある地域の王国民には退避の通達するべき」

 エルフの賢者は、長い髪をかき分けながら、推測を語っていく。


「第4門外の国民は、おおよそ50万人かと。

 特に第5門外には、魔木、魔物駆除の者たちが多く居住しています。

 今後の駆除と活動に影響が出るかと」

 大臣が補足の説明をする。



「‥‥ふむ。火山の活動はどうだ」

 王が大臣に、発言を求める。


「活発期は過ぎておりますので、ロクサーヌ城ならば、最終避難地として問題は無いかと存じます。

 王令は、第4門の外側の街、全てに公布いたします。

 国民の避難地は、マルティック伯爵領、ローズムーン伯爵領ならば、最適でしょう。

 隣国に近い地域では、隣国への避難もやむ無しかと。しかし、隣国に避難せよとは言いにくいですな」



賢者が続ける。

「有力スキルの勇者を、手元に置きたい。報告から、聖魔女を最優先。鑑定治療、ウオータージェット、ゴム人間が未知スキル」


「他の勇者は、『そのまま』でよろしいですね」


「‥‥‥」


「ではその流れで手配しましょう。聖魔女の勇者には、セシリア城での謁見の場を設ける『名目』を出します。

 隣国との折衝はどうなさいますか」



王は考え、結論を出す。



「天上会談の要請を出せ」



大臣は、指示を側近に告げる。



次の日、セシリア王国内の第4門外の全ての街に、王令が貼り出された。





『全ての民に継ぐ


セシリア王国内にて、バーンアップ、スタンピード以上の前兆あり。

バリテンダー城の立ち入りを禁止し、

即時、第4門内、マルティック領、ローズムーン領への移動を命ず』






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