第1章 湖②
次の日――。
俺と黒川さんは、関西空港を9時に出発して現地13時にスワンナプーム国際空港へ到着した。9月のタイは暑かったが、予想外にも日本の方がもっと暑かった。相変わらず、子供や若い人が多い国だな。日本とは大違いだ。到着してすぐにマスク姿の3名が車で迎えに来てくれた。取引先の男性のポンさんとカンさんは会うのが2回目だった。もう1名は小柄でつぶらな瞳をしたタイ人だった。初めて会う人は女性だったんだな。この女性は、マスクを取ったらどんな顔をしているのだろうか。
おれたちは車内に乗り込んで自己紹介が行われた。まずは、黒川さんの番。「黒川です。よろしく。」黒川さん以外はみな20代のため、少し雰囲気が凍りつく感じがあった。相変わらず、堅苦しい挨拶だな。みんな引いてるじゃないか。次に、おれの番。普通に部署名と名前だけではつまらないため、おれは年齢も踏まえて自己紹介することにした。「人事部の星大河です。年齢は28です。」すると、「私も28ですよ!!」と元気で明るい声が返ってきた。あまりに咄嗟すぎて驚いたのと、コミュ力たかっ!とおれは思った。その声の主は、つぶらな瞳の女性だった。なかなかのコミュ力じゃないか。タイの女性はあまり年齢を気にしないのかな。そして、最後に彼女の番になる。「ランです。日本に来て10年目になります。本日から1週間よろしくお願いします。」
自己紹介が終わり、車内ではビジネスの話や雑談になった。ランは流暢な日本語で俺と会話した。俺が働く会社にも日本語が話せるタイ人がいるが、その人たちはどこか話が嚙み合わない時がある。しかし、ランとの会話は日本人と同じか、それ以上に会話が弾んだ。ここまで話すのが上手いタイ人は初めてだった。
そして、俺たちは車から降り、レストランへ向かった。おれの左隣の席はランだった。とにかくランはコミュニケーションスキルが高い。初対面の俺に日本語で上手な冗談を平気でついてくる。今までこんなに話せる外国人がいなかったから俺にとってはかなり新鮮だった。今年一驚いた。そして、肝心のマスクを外した顔も、日本人らしい顔つきだった。広瀬すずのような雰囲気があった。ランも俺と楽しそうに話すし、波長や気が合うのが初日にして伝わった。帰り際、おれはランとLINEの交換をした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます