第1章 湖①

 20○○年9月初旬――。


 明日おれはタイへ1週間の出張に行く。


 2回目だからそんなに緊張はないが、同行の上司は黒川さん。真面目過ぎて固すぎる60代おじさんだから、おっさんと二人なんて絶対つまらん。向こうに行っても退屈でしかないんだろうな。今回の出張では、3名の取引先のタイ人が付き添ってくれ計5人で行動するらしい。取引先3名のうち1名は初めて会うし、この出張は精神的にも面倒になりそうだ。


 今日は高校時代の友人の誠也と大阪でご飯の約束をしていた。この出張の唯一の楽しみになるんだろうな。この日は、お互いの仕事の話で盛り上がった。誠也の会社はかなり人手不足らしい。約1年ぶりに会ったが、毎日夜10時に帰る生活をしていてかなり体が瘦せていた。ちょうどその日は、転職先の面接だったようだ。手応えはあったようで、仕事も結婚生活も順調に上手くいけばいいなと思った。お酒が入り、気分が良くなった俺は誠也の案内のもと、飛田新地に行った。日頃のストレス解消のためかわいい子と一緒に一汗流した。またここには必ず来よう。

そして、俺たちは駅で解散した。明日からタイか・・・。

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