第5話

「まだ出てきませんね」


「日が完全に沈みきっていないからだろう。気を緩めるな」


 僅かに日の光が残る街のある場所にて、咲梨隊は待機していた。背中合わせのように、誰もが中心に背を向けて他方を向いている。


 風になびくそれぞれの髪と共に瞳の色も既に変色し、〈戦闘時強化能力ファイティングアベリティー〉を発動させている。


 闇が広がり始めるこの時間でも、耀祐ようすけ結庵ゆいあの銀髪は目を引いた。


『ただいま午後7時。多分、もうすぐだと思う』


 全員の耳に、真莉紗まりさの声が聞こえる。


 彼らは自身の腕時計で時計を確認した後、再び前を見据えた。


 そんな彼らの周りには、数個のグループがいた。救護部隊レスキュター処理部隊プロセスコープだ。


 鬼の殲滅に当たって、被害を受けた民間人を助けるための部隊。彼らも今、特異体質を発動させている。


 緊張感が漂う雰囲気に、他部隊もまた、気を引き締めていた。そして。


「きぁぁぁぁっ!」


 女性の悲鳴が聞こえたことで、張り詰めた空気が一変する。


「向こうだ!行くぞ!」


 隊長の耀祐の声を合図に、全部隊が走り出した。救護・処理部隊は道路を走り、咲梨隊は屋根を飛び交って最短ルートを行く。

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