第37話 信じれば夢は叶います…か?

「クソ儲かっているわね」

 遠目で見ても、そう思いはしたが、扉の前に立つと腹立つくらい儲かっていまっせ感が露骨に圧をかけてくる『カント寺院』

「ねぇ、凄いよね~玄関前で金持ちってわかるもん」

 ココ、門番の装飾溢れる鎧を珍しそうに鞘『キリりょ』でコンコンと突く。

「やめれって、ウチでコンコンすんなし…門番、ぷちギレしてるって、ちょっとココ」

 言いつつも楽しそうな魔封具キリりょ。

「行くわよ~晩飯前に済ませたいからね」

 ゴンッと扉を開けたクイ、ズカズカと、祭壇前まで歩いていく。

「蘇生おねがいしたいんですけど?」

 受付の坊主に蘇生を願い出たクイ。

 ヒョコッと顔をココの方へ向けた受付の坊主。

「どちら様を?」

「こちら様を」

 杖の先に雑に括りつけられた布を突き出すクイ。

「………灰ですね」

「はい」

「灰ですね?はいだって、ココ」

 ツボが浅い魔封具『キリりょ』面白げな様子である。

「お代の方なのですが……」

「はい」

「現金でよろしかったでしょうか?」

「……コレで」

 クイは、城で集めた金目の物をガラガラと机に出した。

「まずは換金してからお願いいたします」

 カント寺院、現金主義である。


 ………

「コレ、ホントにお金になるの~クイ」

「だよね~、不安だよね~」

 ココと鞘に心配されるクイの目利き。

「大丈夫よ‼」

 鑑定するにも鑑定料が発生するわけで…

「こんなところでしょうか?」

「えっ?」

 クイ驚きの激安プライス。

 再度ちゃんとした鑑定士に再鑑定を依頼する勇気がない。

「あのババァ…吸血鬼って貧乏なのかしら‼ あの貴族っぽい雰囲気はなに‼」

 店の外で壁をガシガシと八つ当たりするクイ。

 お店もいい迷惑である。

 そんなクイにドンマイ的な顔で話しかけられるココ。

「クイ、吸血鬼に金はいらないから…血しか飲めないし…夜しか動かないし」

「そうそう、しかも鏡に映らないから装飾は愚か、なんなら化粧もいらねぇし」

 再びココと鞘キクりょに正論を吐かれる、なんかこのコンビプレー、ムカつく。

 ガンッ‼

 最後に渾身の蹴りを壁にお見舞いして大きく深呼吸するクイ。

 再びスタスタと店内へ戻った。

「全部売ります」

 下手に正式鑑定を依頼すると鑑定料の方が高くつきそうだと判断したのだ。

「毎度~」


 ………

「クイ…足りなくない? 全然足りなくない? これだけじゃトマ復活できなくない?」

「トマ? 灰の人ね…えっ?吸血鬼って灰からでも復活するんじゃなかったけ?聞いたことある説」

「説あるか~」

 ココとキクりょの会話に、何かを思いついたというか決意したクイ。

「その説…乗ってみるわ」

「……黙って聞いてりゃ、のるんかい?」

 久しぶりのダレヤネン、どうも鞘『キクりょ』に収まっていると眠くなるらしい。

 宿に戻る途中、園芸コーナーで腐葉土を10kg買ったクイ。

 持たされたココが文句を言いながら宿に運び入れた。

「ほんのり香る…なんかフガフガする…総じて不愉快」

「風呂に入ってきなさいココ」

「そうする…けど、その土…腐葉土?どうするの?」

「昔、聞きかじったことがあるのよ、吸血鬼って腐った土に灰を巻くと復活するとか…しないとか」

「無責任な‼」

 キクりょがクイの、いい加減な知識にツッコむ。

「うるさいわね~、お金が無いの‼ 腐葉土買った出費すら痛いほどに、金がないの‼」

「俺、腹減ってきた…なんか生気吸いたい」

 魔剣ダレヤネン空腹を訴える。

「アタシの中で食っちゃ寝してんじゃねぇよ駄剣が‼」

 どうも魔剣ダレヤネンには厳しい呪鞘キクりょ、鞘が合わないとは、こういうことなのである。

「まぁダメもとでもやってみるわ…わずかな可能性を信じて」


 ……

 深夜、街も眠りについた頃、そっと宿の中庭に腐葉土を巻くクイとココ。

「クイ…ワタシ、イケる気がしない」

「ミー・トゥよココ」

「え~っ?」

「でもねコレで復活したら安上がりなの、信じて、そして祈って…もうアンタにはそれくらいしか期待してないわ」

「だいたい腐った土ってどゆこと?」

「さぁ? 腐葉土ってソレっぽいかなと思っただけよ、根拠はないわ、インスピレーションで買ったの」


 適当に土を慣らして、いよいよ灰を巻くクイ。

「あのさ、今、思ったんだけどさ」

「なに?」

「コレって一発勝負くさくない?」

「………祈って‼」


 吸血剣士『トマ』の復活はココの祈りに託されたっぽい説。

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