第三章 王都制圧編 本章

第36話 ここからが本編だ

「カント寺院?」

「そうよ『ペ・ペロンチノ王国』通称『ぺの国』にある30%くらいの確率で灰からでも冒険者を復活させる奇跡の寺院よ」

「そっかぁ…トマ大丈夫かな~?」

「なんとかなるんじゃねぇか? トマだし」

「70%ダメじゃん…説ある…」

「説あるか~…説あるコアトルだねクイ」

「……」

「あっウチ、『キクリ』『キクりょ』って呼んでくれし、ヨロ」

「おけまる~」

 軽い狂戦士ココ、色々と順応力が高い。

「言い難いんだよキクリでいいのに、なんで小さい『ょ』がはいるんだよ」

「うっせぇな~っ、この剣はよぉ~、絞め殺すぞ、キクりょの『りょ』は了解の『りょ』なんだよ」

 黙って歩いていたクイ。

 とりあえずココが集めた灰を袋に入れて杖の先に括りつけ『ぺの国』を目指していた。

 そして思っていた。

 隠密行動は今後は無理そうだ…と。

 言語を操ることで文明を残し、また発展させてきたであろう人類、その人類が生み出した魔道器の方が、よく喋っていて、いいのだろうか?

(コレもバベルの呪い…なのかしら?)


『文句の多い剣』と『よく喋る鞘』

 現在の所有者ココの戦闘能力は飛躍的に高まったと言ってもいい。

 なんなら剣士トマなぞ要らないと言ってもいい。

「なんだか持ち運びやすくなったよ」

 そう抜き身の魔剣を背負っていたココにとって、納刀すると鞘の形に収まるという便利な機能が付与されたことは大きな喜びであった。

 よく背負ったまま扉の前でガンッとなっていたココ、それだけでもご機嫌なのだ。

アンデットキラー不死者狩り』なんぞ、まぁ今までも困ってはいなかったのでオマケみたいな能力でしかない。

 それに腰に携えることで『大剣を振り回す狂戦士』から『異国の手練れな剣士』感が醸し出されて…。

「なんかカッコいい」

 そういうことも大事な年頃なのである。

 もちろん王国の騎士トマと違い剣技なんぞ習っているわきゃ無いのだが。


「俺は、なんかブロードソードの方がしっくりくるんだけどな~」

 魔剣ダレヤネン、思えば非業の死を遂げ、ココの身体に魂が宿り、魔剣ソウルイーターに魂を移され現在に至る。

 本人は復讐を糧に生きている?わけで問題はないのだろうが、宿主『ココ・ドコデスノン』にとっては迷惑な話以外、なにものでもない。

 いきなり王急に呼ばれ尻の穴に魔剣を突っ込まれるという辱めを受け、現在に至るのだ。

 その復讐劇の舞台となるであろう『ペ・ペロンチノ王国』は目の前である。

 すでに大陸の7割を武力制圧した剛の王『モブ・デ・ゴザール』が住まう城は山の頂にそびえ、そおの配下に巨大な街が形成されている。

 すでに攻めるものなどいないという自信の表れか城壁は低く、見た目には穏やかな王都として映る。

「ところがぎっちょん…これから攻め落とされるんだな~コレが」

 魔剣ダレヤネン、いつに増してヤル気満々である。

 山賊紛いのモブ王に仕えていただけあり、思考がバーバリアンなのである。

「攻め落とす前に…トマの蘇生が先よ、もう乾パン飽きたわ」

 クイがカリコリと乾パンをかじりながら不満を口にする。

「だよね~、トマいないと料理ができないんだよね~焼くか煮るかの2択になっちゃう…スイーツ的なものが食べたい早く王都に入りたい」

 ココは乾パンに付いている水あめを舐めている。

 所持品で唯一の甘味が水あめなのだ。

「まずは宿をとりましょう」

 クイが歩き出した。

「攻めるってなに? ココ、この剣何言ってるの? ワンチャン死ぬ説ある?」

「あるある、死ぬ説ある」

「ワンチャンどころか…2人でどうこうできる話じゃないのよ」

 クイが呆れた顔で鞘『キクりょ』にボヤく。

「そうか? なんかバーッと行って、ダーッとなれば、ゴーッとなるんじゃねぇかな~」

 魔剣ダレヤネン、騎士団長時代も、こうだったんだろうな~。

 部下が気の毒に思える。

「あの~、ダメかもしれないんですけど~アタシも、バーッと行けばなんとかなる気がしてます」

 ゴンッ‼

 クイがココの頭部を杖で強めに小突いた。

 パラパラと落ちるトマの灰。

「アーッ‼クイ、トマがこぼれたー‼」

「もういいわよ、多少欠損したまま蘇生しても文句言われた筋合いじゃないわよ」

「ウププ…蘇生して欠損? ウケる」

「ちょっと指が短くなったりして、トマ…可哀そう」

 ウケる鞘、心配するココ。

「そうね…調理に支障ださなきゃいいけど…」

 遠い目をするクイ。

 その先に無駄にでけぇ『カント寺院』がそびえ立っていた。






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