第31話 放し飼いは迷惑
「ココ‼ アンタも、このタイミングで食ってんじゃないわよ‼」
「んぐっ?」
トマの温め直したシチューを食っていたココ、猫の下半身にも、オバはんの生首にも興味の無いココ、今はシチューで腹を満たすことが最優先です。
ゆえにクイが目の前でギャーギャー吠えようが、手だけは口にシチューを運び続けている。
「あのね、クイ」
「なによ?」
「あのね…肉がね…足りないの」
ココ、とりあえず肉を欲している。
吸血鬼の頭部など関係ないのだ。
「………ソレでも食ってみたら? 焼けてるわよ」
クイが燃えているスク水オバはんの身体を指さす。
「え~、人肉~?」
「吸血鬼を人肉というか否か…悩むところですなココ殿」
「吸血鬼のオマエが言う? トマ 俺笑っちゃうよ」
魔剣ダレヤネン、自分に至っては謎の武器のくせに。
「食う気かい? ひょろ長い小娘‼」
「……たっ…食べないよ‼」
「俺はオマエの間が怖かったぜ…ココ」
「試しに煮てみましょうか?」
「よして‼ そこから先は闇鍋の領域よ‼」
クイがトマを制した。
「闇鍋…アタシ一度やってみたかった♪」
「じゃあやっぱり」
トマが燃焼中のスク水オバはんの身体を見る。
「およしよ‼ 馬鹿どもが‼」
「ヴァンパイアってのは再生能力がハンパないのよね~」
クイがニターッと笑う。
「おう、俺も聞いたことがあるぜ‼ 灰からでも蘇生するってよ」
「そう…魔力を帯びた武器でなければ傷一つつけられない…魔法そのものに耐性もある…日光以外での消滅は在り得ないんでしたっけ?」
「オ~ッホッホッ、その通りツリ目の娘」
「いばるな‼ 生首‼ 朝を待ってもいいけど…助けてあげてもいいわよ」
「ん? クイ、なんで~?」
「そうだぞクイ、俺は朝日でボワッと消し去ったほうが世のためだと思うぞ」
「身体は放っておけばいいわ、首‼ 住処に案内しなさい‼」
「首ってワタシのことかい?」
生首オバはん事態が飲み込めてない。
「アンタ意外に誰が首なのよ」
………
そんなわけで、オバはんの生首は髪の毛を魔剣ダレヤネンの柄に結ばれ袋に包まれブラブラとココに担がれることになった。
「ク~イ~、アタシ嫌だよ~」
朝を迎え、自走する寝袋トマ、這う上半身の男、生首をぶら下げたJCを従えクイはツカツカと歩を進める。
生首の案内で昼過ぎに派手な古城に辿り着いた。
「売春宿みてぇだな…」
「悪趣味だわ…イラッとする」
「わぁ~派手な城だね~クイ」
「なんていうか…隠れて暮らす気が感じられないわ」
「なんで隠れて暮らすんだい?」
生首がクイに尋ねる。
「……吸血鬼ってそういうもんじゃないの?」
「なんで?」
「なんとなく…イメージ的に…」
「この方がいいのよ~、たまに馬鹿な男が勝手に入ってくるしね~」
「ゴキブリホイホイみたいだね」
「まぁ…男なんてゴキブリみてぇなもんだわな…ホイホイされちゃうもんだ」
「……馬鹿…」
………
そんなわけで生首の家にズカズカと上がり込むクイとココ。
「トマ、寝袋から出てもいいわよ」
「ホントですかクイ殿、騙してませんか?」
「アッハッハ、チャック開けたらアチッとかなったりしてね、今度やってみよ」
ココの悪戯心がファイヤーした。
「…よしてやれよ…マジで…シャレにならんから…」
誰よりも人離れしているが、この面子で一番マトモなのは魔剣ダレヤネンである。
「しかし…悪趣味ね…」
「小娘、人の城に上がり込んだら、まず嘘でも褒めるものよ‼」
「クイ、何アレ?」
ココ、テンション高めで柱の隅を指さす。
「何かしら? なんかモゾモゾ動いてるわね…」
「なんだい? とりあえず袋からお出しよヒョロナガ娘」
「ん?」
オバはんの生首を袋から出して両手で挟むように抱くココ。
なんか慣れたらしい。
「あ~、ありゃ…アレだ…誰かの紳士だね…本体の事は忘れたわ」
「………気持ち悪りぃもん放し飼いしてんじゃないわよ‼」
「ク~イ~、帰ろうよ~、入り口で嫌になっちゃったよ~」
テンションがガクッと落ちたココであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます