第29話 死なないだけなら怖くない
ココの手から離れた魔剣ダレヤネン、まさかの自立歩行手段を得るとは…。
コレもココが、よくポイッと放置するせいなのであろうか?
放任主義が生んだ奇跡なのかもしれない。
貴重な魔剣であるはずなのに…。
「なんか…気持ちわるっ‼」
クイが露骨に嫌な顔をする。
禍々しさに悪趣味が足された仕上がり、なんか生涯馴染めなそうなフォルムである。
魔剣ダレヤネンVer2より、シチューを選択したココ。
チラッと見たが今は興味はないようだ。
モクモクとシチューを食べている。
その背後にスクッと直立する雄々しき魔剣、その足元に転がるオバはんの生首、身体が千切れかけたヴァンパイアと千切ろうとしている首無しスク水ヴァンパイア。
ココ、神経は図太い。
神経ごんぶと娘、その横で猫+人÷2の1/2である上半身がシチューを食べている。
クイから見た光景はカオスである。
(コレは現実なのかしら?)
夢であれば悪夢である。どストライクの悪夢である。
シチューを食べ終えたココ。
改めて状況を目の当たりにした。
「…………クイ~……なんかアタシ怖い~、特にダレヤネンがキショイ~」
ココ、ちょっと涙目。
ココの目の前にある光景に蠢く生物達、人類ヒト科が1体もいねぇ。
「今更、何言ってんの‼ 今度から背負わなくても良くなったんだと前向きに考えなさいココ‼」
「そうだココ、オマエ以上に俺が驚いている‼」
魔剣ダレヤネン突如生えた足に困惑気味である。
「ちゃんと背負うから~、できれば足ひっこめてよ~」
柄から生えた無駄に逞しい足が、なんか生理的に受け入れられないココ。
「バカ‼ アンタの剣なんだから、どんな姿になろうと最後まで責任持ちなさいココ‼」
クイ、拾ってきた犬の散歩を1週間で面倒くさがる娘を持った心境でココを叱っている。
「理~不~じ~ん‼」
勝手に尻の穴に刺さってきて『主』認定で大陸最強の帝国へ少人数で攻め込むとか?
考えてみれば職業『勇者』なんてハラスメントの極みなのである。
それが例え、大陸でも10指に入るであろう戦闘力を秘めたココであろうとも。
「えぇい‼ もう、そんな粗末なキノコの山はいらないわ‼」
首だけになったスク水オバはんが吠える。
「なんなら皮付きのタケノコの里じゃない、そんなもん放っておきなさい、アタシのBODYよ‼」
生首の声に反応したスク水BODY、トマの身体を引き千切ろうとバタバタしていたが、急にムクッと立ち上がり首を探すようにウロウロと徘徊している。
「不気味悪い…」
クイが露骨に嫌な顔をする。
「コッチよ‼ あー‼ 違う‼ 右手のほうよ、違うお箸持つほう‼」
生首の指示が左右逆転しているのか、誘導に苦労している。
「逃げられると思ってるの? あつかましい…」
生首に体重をかけ足で踏みつけるクイ。
「痛い痛い痛い痛い‼」
「あん? 遺体? 知ってるわよ~アンデットですもの遺体なのわ‼」
「ダレヤネン‼」
「おう?」
「身体を斬り刻んでしまいなさい‼」
「ん? そうなのか? まぁいいけど…」
スパスパスパパーン‼
魔剣ダレヤネン軽快に体を揺らし水着ごと身体を斬り刻む。
「ふんふふ~ん」
鼻歌交じりで、こころなしか楽しそうである。
「あわわわわっ…」
ココがオロオロと状況に流され、トマが荒い息を整えている。
地面に散らばる吸血鬼の身体、グネグネと動き続け、元に戻ろうとしている。
「凄~い…こんなにされても復元できるんだ~♪」
クイが意地の悪い笑みを浮かべる。
「ヴァンパイア舐めんじゃないわよ‼」
「どうしてくれようかしら~?」
クイのニマニマとした笑みに戦慄を覚えたココであった。
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