第14話 食う寝る遊ぶ

「地下2階までしかなかったね」

 ココが残念そうに壁にもたれ掛かる。

「たいして広くもねぇしな…ミノタウロス以外、ロクなもんが住み着いてねぇ…つまらん」

「そだね…」

 ココがつまらなそうに答える。

「じゃあ戻る?」

「そだね~」

 ココが嬉しそうに答える。

「戦利品は鼻輪だけだったね~」

 ココがブラブラと金色の鼻輪をトマの鎧に引っ掛ける。

「あげるトマに」

「おぉ~似合っているぞトマ」

「鎧も同じ金色だしね…いいんじゃない」

「なんでやねん‼ カタカタうっさいだけやろがい‼」

「………」

「トマ…なにかあったの?」

 クイがトマの肩に手をポンッと置き声を掛けた。

「クイ殿…自己啓発というヤツですねん‼」

 根が真面目なトマ、武の才は並盛だったが、文の才は大盛であったようで、『カーンサ・イ訛り』の基礎はマスターしたらしい。

「自己啓発~?」

 クイが眉をひそめてトマを見る。

「アンタら、の言動、行動にビシビシとツッコミますよて、覚悟しぃや‼」

 薄暗いダンジョンで松明に照らされたトマの表情は不気味に生き生きとしている。

「トマ…ヤバげなキノコとか食べたんじゃ?」

 ココが様子のオカシイ、トマを心配する。

「キノコなんか食ったか? 朝飯キノコあった?」

「無かったわ」

 クイがキッパリと否定した。

「じゃあ、またクイが変な草混ぜたんじゃねぇか?」

「失礼ね、意味なく混ぜないわよ‼」

「そっかぁ~拾い食いしたか~」

「誰が拾い食いしてんねん‼ アンタだけや落ちてるもん食うんわ‼」

 グイグイくるトマに引き気味のココ。


 何はともあれ、本人が楽しそうなので特に止める気にもならず、好きなようにさせておくことにした。


 ダンジョンから出ると太陽の傾き加減から察するにお昼を過ぎていた。

 それ以前にココが空腹を訴えていたので確認するまでもないのだが。


「牛肉…食べれないね」

「ミノタウロスを牛肉と位置付けているの、大陸でもアンタくらいよ」

「尻尾はあるから、テールスープだけでも…トマ、作れる?」

 ココがリュックからズルッとミノタウロスの尻尾を取り出した。

「持ってきたんかい‼」

「無駄にデケェな…さすがというか…3mくらいあったもんなアイツ」

「なんか、美味しそうって感じはしないわね」


 そうは言っても煮込んでしまえば美味しいスープであった。

「さっさと出発するわよ‼」

 グイッと口を拭ったクイが立ち上がる。

「え~、食べたばっかじゃん、昼休みは~?」

「学校ちゃいますんねん‼」

「食べたら眠くなる~」

「薬入れなくても勝手に寝たんじゃねぇかな…あんときも」

 もはやココは寝る態勢を整えている。

「よく寝たから、無駄に伸びたのかしら?この子」

 すでにココ寝ていた。

「ダメだ‼ コイツのペースで進んでいたんじゃ10年経っても『ぺの国』に着かねぇ‼ 俺が剣で無かったら…引きずってでも連れて行くのに‼」

 どんなに悔やんでも魔剣ダレヤネン、ココに連れて行ってもらう立場である。

 戦闘以外では、やかましいだけの存在なのだ。

 その、やかましい魔剣を放り出してスヤスヤと眠る持ち主の少女。

「さすがバーバリアンと呼ばれるだけあって、度胸がいいわ…バカだけど」

 クイも呆れる無防備さである。

「仕方ないわね…」


「って‼ オマエも寝るんか~い‼」


 トマのツッコミが冴えわたる日差しの良い午後であった。



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