第8話 旅は道連れ、死なば諸共

「目を覚ませ‼ 娘‼ 拾い食い娘‼ 腹が痛いのか?」

 背中から魔剣ダレヤネンがココに呼びかけるも気持ちよ~く睡眠中にの主ココ。

「すや~っ…ZZZZ」

 漫画のような寝息をたてて寝ている。

「毒ではなさそうですが…」

 ココの頬を軽くペチペチと叩く騎士団長トマ。

「ケヒヒ、そのとおり罠ではあるが毒ではないぞケヒヒヒ」

 杖をついたババアが家から出てきた。

「その通りですわ毒ではありません、しかし罠です」

 ババアの後から少女が出てきた。

 見たところココと同い年くらいか。

「毒ではないが…罠…つまりヤバイ薬がキマッてる状態かー‼ 大丈夫か娘‼ 川だけは渡るな‼ 俺には経験があるんだ、花畑に行ってはならんぞ‼」

 一度、大霊界に行ったダレヤネンの説得は重みが違う。

「だから毒じゃないって言ってるでしょうが‼」

 向こうの娘は、いささか短気なようである。

「ケヒヒ、まぁ拾い食い娘を中に運べ、少し話をしようかねケヒヒヒ」

「また罠か?」

 トマがココを抱きかかえ老婆に尋ねる。

「もとより、そんな見え透いた罠に引っ掛かるとは思ってはせんかったんよ…呆れるわいケヒヒヒ」

「それはもっともだ」

 魔剣ダレヤネン、思わず納得の一言である。

「罠じゃないから、さっさと入りなさい」

 向こうの娘がサッサと家の中へ戻る。

「罠じゃないなら私もケーキをいただこう」

 トマがケーキを所望した。

「ケヒヒ…薬の入ってないケーキはないがね~、まぁ付いておいでケヒヒヒ」


 ………

「さて…まぁどこから話そうかね…」

 家の中で丸いテーブルを囲む老婆と孫、そしてトマ。

 ココはベッドに寝かされ、魔剣ダレヤネンもココの横に置かれた。

「ワシは『ヘガ・デルト・グモーデル』この森で薬草を育てる魔女じゃ」

「私は『クイ・コムト・グモーデル』魔女ヘガの孫です」

「私はナの国、騎士団長『トマ・トアッカイ』」

「あぁ知っているよ…大陸最弱の騎士団の団長さん…ケヒヒヒ」

 魔女ヘガがバカにしたような顔でトマを笑う。

「クッ…」

 トマが悔しそうに顔を歪ませた。

「おいトマ、オマエ弱いの? 強そうには見えないけど大陸最弱の騎士団ってオマエ、マジ?」

「ケヒヒ、本当じゃダレヤネン、貴様どころか、その拾い食い娘にも勝てんよ、ケヒヒヒ」

「哀れな…悲惨過ぎて言葉もでねぇ…中学生の女子にすら勝てねぇとか? もう笑えん」

「黙れ‼ 貴様なんぞココ殿が振らなければ鞘から出ることもできんではないか‼」

 トマとダレヤネン、どうにも相性が悪いらしい。

 フンッと鼻息荒いトマ、自分をJC以下とバカにする魔女ヘガに矛先を向ける。

「大体、こんなリザードマンの群生地みたいな森で、のほほんと暮らしているアンタ達は何者なんだ?」

「ケヒヒ、言っただろトマ、私は魔女、家の周りに生える野草は悪しき者を寄せ付けぬのじゃケヒヒヒ」

「御婆様の強力な結界もあり、この周囲だけは安全なのですわ」

「ご都合のよいことで‼ どうも信用できねぇな~」

 ダレヤネンは、魔女を疑っているようだ。

「さぁ、トマ様もカッカなさらずにケーキでも食べて、御婆様の話を聞けば納得できますわ…どうぞ」

 トマの前にスッと皿に乗ったショートケーキ。

 魔女の孫クイが差し出したケーキを食べるトマ。

「あっ…馬鹿‼」

 ダレヤネンが思わず大きな声を出した。

「ん? どうした、美味いぞ……んがっ‼」

 バタッと机に倒れ込むトマ。

「ケヒヒヒ…学習せん男よの~」


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