第6話 旅立ちの日
ココの涙が白い頬をつたい床に落ちる。
立ち尽くし静かに涙する美少女。
壁の隅に喋る魔剣『ソウルイーター』が転がる。
握り潰したボラギ〇ール。
静かに微笑む騎士団長。
玉座に王様、気を失っている母、ムカチャッカファイヤーして情緒不安定な父。
いい汗かいた占い師のババア。
その他諸々の王宮務めの面々。
なんかカオス…。
「娘…いや、選ばれし者よ、殴り飛ばした剣を取りナの国を救ってくれ」
ケヒヒヒ笑う不気味なババアが神妙な面持ちでココの前で跪き頭を垂れる。
さっきまでとは別人のようである。
「選ばれし者…アタシが?」
泣き顔のまま人差し指で自分を指さすココ。
「そうじゃ、ココ、そなたに封じられていた無敗の騎士『ダレヤネン・ソーレ』の御霊は魔剣『ソウル・イーター』へ移された…誰にでも扱える代物ではない、そなたしか扱えん、宿主としての宿命じゃ」
「何が…なんだか」
「ココ、ワシからも頼む、この国…いや、この大陸を乱世に終止符を打ってくれ」
玉座からヒマン王が頭を下げる。
(ダレヤネン…ソーレ…俺のことだよな?)
魔剣が転がったまま事態を把握しよとしている。
「俺…えっ? 魔剣とか…御霊とか…」
どうやら『ダレヤネン・ソーレ』自分が禍々しい魔剣に封じられていることに今、気づいたようだ。
殴られて目が覚めただけかもしれない。
「なんか…アタシ、その剣嫌い」
なんというか、禍々しいとか、重そうとか、どうにもコーディネートできそうにないビジュアル。
「ココ殿、ソレは…やはり…その、穴を傷つけたから?」
遠慮がちにトマが尋ねた。
顔を真っ赤にして、うつむくココ。
恥ずかしいのか?
ズムッ‼
トマが着用している軽装鎧、脇腹の隙間にココの拳が減り込む。
腹立たしかったらしい。
「ココ、よく聞いてくれ…」
しばらくカオス色に染まった王の間を静観していたヒマン王が口を開いた。
「この大陸は、今や暴力が支配する平和とは程遠い時代を迎えた、余は平和で大陸を統治したいと願うだけで、この時代に抗う力は持っておらぬ、頼む‼ その魔剣を持って闇の世を祓って欲しい…闇は、更なる闇でしか祓えぬ‼」
ヒマン王が玉座から降り、ココの前で跪く。
「ココよ、この魔剣には無念の死を遂げた無敗の騎士の魂が宿っておる」
占い師アンがソウル・イーターを拾い上げココに差し出す。
「騎士の魂…」
ココがソウル・イーターに手を伸ばす。
剣を握ると不思議と馴染むような気がする。
「おぉ‼ やってくれるかココ」
ヒマン王の顔がパッと明るくなる。
「者ども、ココの、英雄の出陣じゃ‼」
「うぉぉぉぉー‼」
「えっ? えっ? なに?」
ココがアタフタしている間に、鎧が運ばれ、旅支度がテキパキと進んでいく。
「ではココよ、騎士団長トマ・トアッカイを従者とし旅立つがよい‼ まずは大国ペ・ペロンチノ‼ モブ・デ・ゴザールの首じゃ‼」
「えっ? ペの国? モブ王…ラスボスじゃん‼…じゃん…じゃん…じゃ…ん…ん…」
ココの、たまげた声が王宮に木霊する。
『モブ王…モブ・デ・ゴザール‼』
突然ソウル・イーターが叫んだ。
「おぉう? アタシのテンションと真逆に、この不気味な剣がヤル気になっている~」
そんなわけで、細長い少女は無敗の騎士の魂を宿した剣を背中に担いで旅立つのである。
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