SS 冒険者組の日常

なろう版がR18描写で非公開になってしまいました

なのでなろう限定だった部分もカクヨムにて公開します







【sideドミンゴ】


 俺とオットー、アカネは奴隷の仲間の中でも冒険者組と呼ばれていた。

 エルド様の命令で、冒険者として働いているからだ。

 俺たちの取り分は2割。

 これは奴隷としては破格の給料だった。

 基本的に、俺たちの普段の生活費はすべて主人であるエルド様が出してくれている。

 だからまあ、生活費はかからないわけだな。

 あと、武器や防具の手入れや新調のさいも、エルド様が支払ってくれているわけで。

 つまり、この報酬の2割というのは完全にお小遣いとして使えるわけだ。

 そう考えると、いかに破格かわかるだろう?

 普通の奴隷だと、いくら雑用をしても自分の財布を持たせてもらえるなんて到底ありえないからな。


 俺は今日も、意気揚々と冒険者ギルドにやってきた。

 俺とオットー、アカネはいいチームだった。

 まあ、俺たちが奴隷だってことで、よく思っていない連中もいるけどな。


「お、今日も奴隷組がやってきたぜ」

「はは、せいぜい頑張れよな」


 最初のうちは、そういう風に砂をかけてくる連中もいた。

 中にはいじわるして、ギルドのカウンターをつかわせないように邪魔してきたやつも。

 しかし、そんなのは実力でねじ伏せた。

 そのうち、俺たちが高ランクになってくると、そんな連中はいなくなった。

 なにせ、俺たちの取り分の2割ですら、そいつらの給料より高いんだからな。

 恥ずかしくて、もはやなにもいってこれなくなったのだろう。

 今は、俺たちのことはそっとしてくれている。

 もちろん、中には俺たちが奴隷であるにも関わらず、好意的に接してくれるやつもいた。

 受付嬢のリーシャはその中の一人だ。


「ドミンゴさん、今日も頑張ってくださいね!」

「あ、ああ……ありがとうリーシャ」


 リーシャはいい子だった。

 俺たちが奴隷であると知っていながら、態度を変えない。


「なにドミンゴ、顔が赤くなっているわよ」

「うるせえ」


 アカネがそう茶化す。

 正直、リーシャはくそかわいい。

 だけど、俺なんかはしょせん奴隷だから、恋心を抱くなんていうのは許されない。

 俺はこうしてカウンターごしにただみているだけで十分だった。


 冒険者には、ギルドとは別に冒険者組合なるものがある。

 しかし、冒険者組合に所属するには、住民票などが必要で、俺たち奴隷には不可能なことだった。

 冒険者組合に入ると、組合員だけのお得な情報や、狩りに必要なアイテム、情報が得られる。

 しかし、俺たちはながらくそれを得られずに苦労していた。

 だが、マードックが指南役としてついてくれたおかげで、それもなくなった。

 マードックはもと組合員だし、それにマードックの経験は下手な組合の情報筋よりも精度がよかった。

 マードックにいろいろな狩場を教えてもらった。


 おかげで、俺たちの稼ぎはさらに増えた。

 今日のクエスト目標は、毒怪鳥の討伐だった。

 俺たちは毒怪鳥を狩るのにいい場所をマードックから教わっていた。

 今回のクエストも楽勝だ。


 毒怪鳥は口から大量に毒を吐く化け物だ。

 正面から挑んだんじゃ、毒をまともに喰らって、やれたもんじゃない。

 マードックは上から撃つといいと教えてくれた。

 毒怪鳥が出没する地点に、ちょうどいい高台があった。

 マードックはそのポイントを正確に把握し、教えてくれた。

 オットーとアカネが高台で待機する。

 高台は小高い丘の上に岩場になっていた。

 

 俺は下に降りて、毒怪鳥を釣る役目だ。

 毒を喰らわないように、少し離れた位置から毒怪鳥を惹きつける。

 盾で身を守りながら、毒怪鳥をおびきよせる。

 そこをすかさず、高台からアカネが魔法で攻撃する。


 ――ズバババン!


「きゅええええええええええええ!!!!」


 さらに、オットーが弓でトドメをさす。


 ――ズシャ!!!!


「ぎゃああああああああああああ!!!!」


 ――バタン。


 毒怪鳥はその場に倒れた。

 やった!

 俺たちの連携はばっちりだった。

 あとは毒怪鳥の毒袋を浴びないように、綺麗に切り取る。

 それから死体をはぎとってクエスト終了だ。

 これもすべてマードックの指導のたまものだ。


 クエストから帰ったおれたちは、酒場で酒を飲む。

 クエスト報酬の2割がおこづかいなので、酒くらいは楽に飲める。

 酒を毎日飲んでも、クエスト報酬はまだまだありあまっている。

 やはり、奴隷といえども自分で働いて食う飯は最高に美味い。


「ねえドミンゴ、あんたリーシャちゃんをデートに誘わないの?」


 とアカネがきいてくる。


「そうですよ、さっさと誘えばいいのに」


 とオットーまで言う。


「馬鹿野郎そんなことできるかよ。俺は奴隷の身なんだぞ」

「愛のもとには関係ないですよ」

「ううう……そうじゃなくても、俺みたいな無骨なオッサン、誘えねえよ……」

「いくじなし……」


 俺だって、ほんとうはできるならそうしたいさ。

 だけど、金があるとはいっても女と付き合って養えるほどじゃねえ。

 だいいち、奴隷の身分で結婚なんかできねえしな。

 俺は先に金を払って、酒場を出る。


「おや、また風俗ですか?」

「うるせえよ」


 オットーのやつは童貞ぼうやだからわからんが、男にはこういうのも必要なんだ。

 俺は今日稼いだ金を持って、街の娼館によって帰るのだった。


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