第48話 エピローグ 奴隷解放
ある日のことだ、アルトが俺にこんなことを言い出した。
「エルド様、エルド教はいまやかなりの大宗教となりました。もはやエルド様は現人神です。そんなエルド様はすばらしいお方です。すばらしいエルド様はきっと、世界平和にも賛成してくれますよね」
「は……? なにがいいたいんだ……?」
「俺、奴隷制度を廃止しようと思うんです!」
「はぁ……!?」
正直、俺は困惑した。
奴隷制度を廃止したら、俺はどうなるんだ……?
そんなことをしたら、俺は稼げなくなるじゃないか。
アルトが奴隷制度を廃止しようとするのは、ゲームのシナリオと同じだった。
アルトは正義感が強く、平民の出だ。
だから、奴隷制度に疑問を持ち、それを廃止しようとするのだ。
ゲームの世界では、そのせいで、エルドはそれに歯向かい、大悪人だとして裁かれる。
奴隷制度が廃止となり、エルドは今まで虐げていた奴隷から復讐されるのだ。
つまり、俺はアルトに逆らえない。
奴隷制度廃止に賛成しなければならないわけだ。
「エルド様も、きっと賛成してくれますよね!?」
アルトはキラキラした目で俺にそう言ってくる。
「あ、ああ……もちろんだ……」
正直、奴隷商である俺の本心としては、賛成できない。
だが、ここで反対してアルトと対立すると、破滅フラグましぐらだ。
それに、今の俺なら、奴隷制度が廃止になっても、奴隷から復讐されることはないだろう。
今まで奴隷にはかなり媚びを売ってきているからな。
少なくとも、奴隷たちに恨まれているわけではないだろう。
◆
ということで、アルトは全国に奴隷制度廃止を施行した。
いろんなところで、奴隷商人たちが悲鳴を上げた。
だが、しいたげられていた奴隷たちは、解放を喜んだという。
それは、素直によかったなと思う。
それで、俺の家の奴隷たちなのだが――。
俺を恨み復讐してくるどころか、
「エルド様あああああ俺たちを捨てないでください!!!!」
「ここでまだ働かせてください!!!」
「ここにいさせてください!!!!」
と、懇願してくるのだ。
みんな、もう自由だというのに、俺のもとを離れたがらない。
「えぇ……お前ら、もう出ていっていいんだぞ……?」
「そんなこと言わないでください! 俺たちはエルド様のもとにいたいんです!」
ということなので、俺は彼らを正式な労働者として雇うことにした。
まあ、条件面はさほど以前と変わりない。
ただ、彼らのことを奴隷ではなく、労働者と呼ぶようになっただけだ。
ゲームの中では奴隷たちを酷い目にあわせ、復讐されたエルドだったが、
俺は奴隷たちを正しく扱い、こうして信頼を得られた。
おかげで、奴隷たちはみな労働者として、いまだに俺を慕ってくれている。
やはり、人にした行いはかえってくるものだな。
俺は、これで完璧に破滅フラグを回避した。
もうアルトに断罪されることもないし、奴隷たちに復讐されることもないだろう。
今後は、労働者たちを使って、さらに事業を拡大していくつもりだ。
============
【あとがき】
これにて物語は完結とさせていただきます。
最期までご愛読いただきありがとうございました。
月ノみんとの次回作にご期待ください。
作者フォローしていただけますと、新作をスムーズにお読みいただけます。
気が向いたときに追加エピソードなど書くかもしれないので、ぜひフォローはそのままで!
よければ★評価よろしくお願いいたします。
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