三時限目③(クシャン視点)

 色々話していたが、とうとう授業が始まりそうになった時に、ある生徒が、

「プリント持って来るの忘れました。」

 と先生に言った。

「…前に取りに来なさ…」

 と間口が言う前に、突然教室の扉が開いた。

 そこに居たのは、巡回中の開祖様(校長)だった。ちなみに、開祖様と呼称する所以は、その素晴らしい希哲学思想が、自分によく共感できるものであったからだ。

「何をやってるんですか!間口先生。そこの生徒、なぜプリントを忘れたのに平然としている。授業にプリントを持ってこないのは、戦場に銃を持って来ないのと同じだ!お前はそんなことができるというのか!」

 と開祖様の激が飛ぶ。

「……いや、…できないです……」

 とその生徒は答える。すると、

「そもそもなぜ忘れた?無くしたのか?それとも家に忘れたのか?ロッカーに入れたままなのか?」

 と開祖様は続ける。

「…多分、家にあります。」

「なぜ、そこで断言できない?プリントに足でも生えて勝手にいなくなるとでも言うのか?」

「····……………」

 生徒が黙り込んでしまった。

「おい、そこの生徒!字が見にくい!

 殴り書きのような字、細かすぎる字、薄い字、これらは全て採点対象外ですよ!」

「さらに、そこの生徒、何という腑抜けた面をしている!授業中ぐらいしっかりした顔をしなさい!」

「そして、そこの生徒、そうそこのさっきまで寝ていた生徒、授業を受ける気がないなら、荷物をまとめて帰れ!」

 と開祖様の怒りは静まらない。

「最後に、間口先生、生徒にはもっと厳しくしていくべきですよ、義務教育じゃありませんし、やる気のない生徒は帰らせていいんですよ。」

「ああ、…はい。…そうですね。」

 開祖様は先生に素晴らしい助言をして去っていった。授業中に姿を拝めるなんて、なんと幸運なことよ。

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