放課後③

ようやくクシャンが合流し、リョウたちは学校を出発し、山下りを始めた。山登りと比べれば、楽ではあるものの、授業で疲れているので、かなりの苦行である。


「いやあ、それにしても寒いなあ。つい最近まで11月終わりで9月の平均気温とかいう滅茶苦茶な状態やったのに。」

とリョウが言う。

「ほんまにそれ、リョウが『おお、綺麗に紅葉してて、気分が高揚するなあ、光陽だけに。』とかしょうもない事言うたんほんのちょっと前やで。それのせいで寒波が吹いたんちゃうか。」

とシトラスが、

「その時って、リョウが橋で紅葉背景に、見返り美人図取ろうとした時やっけ。」

とクシャンが続く。

「うわ、そんなことあったわ。その時写真撮ろうと橋に近づいて行ったら、知らないおじさんが橋の上で腕振り回してるのが見えて、

怖くなって諦めたやつや。」

とリョウが言う。

「今日はその人いなさそうやけど、写真撮るか?亅とシトラスが聞くと、

「さすがにいいわ、もう結構枯れちゃったし。風情がない訳では無いけど。」とリョウが答える。


そんなことを話して、ゆっくり歩き、ようやく駅が見えてくる頃合になった。そして、同時に電車の発車する音が3人の耳へと届いた。


「うわ、電車行ってもうた。あと十分待たなあかんやんけ。はよう帰りたいのに。」

とリョウが言うと、

シトラスが

「イヤホン批評再開するしかないねえ、これは。」

と笑みを浮かべて言う。

「もういいってえぇぇぇぇ。」

リョウの虚しい叫びが周囲に広がっていった。




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