PM1:30 五時限目:数学(リョウ視点)

五限目は数学である。この学園はなぜか数学の授業の進度が速いことを誇っているのだが、あまりに速すぎるため、授業についていけなくなった脱落者がかなり存在している。そして、それが原因となってか、学園全体の数学の成績は他校と比べて、低い水準となってしまっている。本末転倒。


この学園は、数学の教師が多く勤めており、この授業は妻子持ちの平田アツシが担当している。この教師は数学教師の中では、珍しく穏やかな人柄であり、生徒にも優しいのだが、声が小さく、ボソボソ喋るため、声を聞き取れない生徒が多発している。そのため、授業中は睡魔に負けて机に伏してしまう生徒も多い。


「えぇー……ここで……二倍角の公式を……することで左辺は……についての……式として…表すことができる………」


(あいかわらず誰に喋ってるのかわからない授業だなあ。もう少し大きな声で喋ればいいのに。)


今日も例にもれず下を向いている生徒が多い。


「条件から…角θの範囲は……0からπなので……答えは……π/3となる……」


(ほんまになんて言っとるんやろうか。)


時計を見ると、まもなく授業が終了する時刻のようで、寝ていた生徒が目を覚まし始めた。


「はい……今日はここで……終わります……」


平田の号令により、五限目が終了した。

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