二 赤ずきんちゃんの恋物語~セバスチャンの誘惑

 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 まりんがまだ幼かった頃。幼稚園を卒業後、小中一貫の学校で、クラスメートとなった細谷くんと出会った。そんな細谷くんのことを、異性として意識し始めたのが中学一年生の頃。当時、家で飼っていたトイプードルのララが老衰のため、まりんとその家族に見守られて息を引き取った。爽やかな五月の風か吹き抜ける、初夏のことだった。

 まりんは、ララのことをとてもかわいがっていた。だから頭で分かっていても、ララと別れるのはとてもかなしくて淋しかった。

 葬儀を執り行い、家族とともに最愛のララを天国まで送り出して数時間後。まりんはひとり、家を出た。

 まりんには時に厳しく、時に優しい両親と、仲良しの兄が二人いる。そんな家族に行き先を言わずに家を出て来たのは、これが初めてだった。誰とも話したくなくて、誰もいないところに行きたい。ただひとりになれる時間が欲しくて、それが出来る場所を求めてまりんは、自宅から徒歩三十分圏内にある浜辺へとやって来た。

 澄み渡る青空が広がり、緩やかな潮風が吹き抜ける浜辺にはまりん以外、誰もいななった。穏やかな波と潮風の音、それ以外は何も聞こえない。先が見えないくらい、果てしなく続く海原を暗い表情で見詰めるまりんの目から、大粒の涙がとめどなく溢れ出た。

 まだ、人生の半数も生きていない自分よりも早く天国へ旅立った、最愛のララを想いひとしきり泣いた後、手の甲で涙を拭ったまりんは、もっと近くで海原を眺めようと歩き始めた。と、その時。慌てて浜辺に駆け付けた誰かがガシッと、まりんの左手首を掴んだ。

「細谷くん……?」

「……いきなり、ごめん。たまたまこの近くを通りかかって……砂浜に、絶望的な顔をした赤園が立っているのを目にして、海に向かって歩き始めたから、思い留まらせようと思って」

 真顔で手短に要件を伝えた細谷くんはなにか、とんでもない勘違いをしているらしい。息を弾ませているところを見ると、慌てて砂浜を駆けて来たのだろう。そんな細谷くんに腕を掴まれ、引き戻されたまりんは微笑むと、

「ありがとう。でも大丈夫。私は、命を粗末にしたりなんかしないから。ララの分まで生きるって、たった今、天国にいるララに向かってそう誓ったばかりなの」

「ララ……?」

 まりんが口にした『ララ』の名前を耳にし、不可解な顔をした細谷くんに、まりんは天国へと旅立った愛犬ララのことを話して聞かせた。

「そうか……そんな事情があったんだな」

 まりんからララの話を聞いた細谷くんは沈痛な面持ちでそう告げると、

「なぁ、赤園……迷惑じゃなきゃ、今から赤園の家に行ってもいいかな?俺もララに、線香をあげたいんだ」

 真剣な面持ちでそう、いま抱えている率直な気持ちをまりんに打ち明け、切願した。

「いいよ。細谷くんならきっとララも喜ぶし、うちの家族も賛成してくれる筈だから」

 ふと優しく微笑んだまりんはそう告げると、細谷くんの申し出を快諾したのだった。


「今日は本当に、ありがとうね」

 自宅前まで細谷くんを見送りに出たまりんはそう、控えめに微笑みながらお礼を告げた。

「いや、俺の方こそ……ララのこと、話してくれてありがとう。ずっと前に家で二匹の猫を飼っていたことがあって……だから、ララを亡くした赤園に共感したんだ」

 細谷くんがそう、まりんと同じく控えめに微笑みながら返事をする。

「そうなんだ……良かった、少しだけでも細谷くんと気持ちがシェア出来て」

「赤園と気持ちをシェア出来て、俺はすっごく嬉しいよ。だから……泣きたくなったらいつでも、俺のところに来ていいからな。大きい悲しみも、小さい悲しみも全部まとめて受け止めるから。また、お互いの気持ちがシェア出来るといいな」

 これが細谷くんなりの、気遣いなのだろう。細谷くんは小学生の頃からしっかり者であったが、中学生になってから一段としっかり者になっているような気がする。

 細谷くんとは単なる仲の良いクラスメートの印象しかなかったが、この時からまりんは細谷くんのことを異性として意識するようになった。

 基本、泣きたくなったらひとりきりになれる場所で思い切り泣く。それでも足りなければ細谷くんのところへ行って事情を話すと、細谷くんは何も言わずに抱きしめてくれるようになった。

「こうすれば、何も見えないから、思い切り泣けるだろう?」

 細谷くんがそう告げて、人前で泣くことを恥ずかしがるまりんに配慮してのことだった。仲の良い友達にも言えないまりんの悩み事も、時々相槌を交えて細谷くんは聞いてくれる。哀しいことも、楽しいことも、嬉しいことも、まりんは細谷くんと気持ちをシェアした。

 気持ちをシェアするうちに恋が芽生え、最初は友達同士で遊んでいたまりんはいつしか細谷くんと二人でいることの方が多くなった。

 そんなある日。家庭科の授業で、一階にある調理室にて実習をしていた時のことだ。四人組の班に別れてカレーを作るための調理をしていたまりんはタマネギを切っている最中、うっかり包丁で指を切ってしまった。

 細谷くんとは班は分かれていたが、保健委員ということもあり、細谷くんが保健室までまりんに付き添って行くことに。

「細谷くんありがとう。ごめんね……手当までしてもらっちゃって」

「いや、気にしなくていいよ。俺が勝手にやったことだから……けど、このくらいの怪我で済んで良かった」

 控えめに微笑んで、申し訳なさそうに告げたまりんの、左中指に絆創膏を貼った細谷くんがそう、気さくに笑って返事をした。

「細谷くんって、本当に優しいね」

「相手が、赤園だからだよ。俺は、他の人にはこんなに優しくないから」

「え?それって、どう言う……」

 その後の言葉は、不意に顔を近づけてきた細谷くんに遮られてしまった。

「こう言う……ことだから」

 まりんの唇にキスをした細谷くんは、いきなりのことに頬を赤く染めてきょとんとするまりんの目を見詰めながら、そう告げた。

 真顔で返事をした細谷くんの頬も赤く染まっていた。これがまりんにとって、細谷くんとのファーストキスだった。

 それから時が流れてまりんはこの春、美南川県立美舘山高校へと進学するにあたり、美舘山と言う名のこの町で新生活をスタートさせた。

 時を同じくして、まりんの故郷からこの町に引っ越してきた細谷くんも、最寄り駅から自転車で五分ほどの距離にある、七階建てのマンションを借りて住んでいる。まりんと細谷くんはこの春、美南川県立美舘山高校に入学、県立高で唯一認められた、フラワーアレンジメント科のクラスメートとして高校生活を送っているのだった。 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 なんだ、両想いじゃん。

 それが理解出来た瞬間、まりんは満面の笑みを浮かべて歓喜した。

「細谷くん、私……」

 続けとばかりに口を開いたまりんを、まっすぐ見詰める細谷くんが静かに制す。

「後で話を聞くよ。今は……ヤツをなんとかしないとだから」

 細谷くんはそう言うとまりんに背を向け、不敵な笑みを浮かべる相手と向かい合った。

「きみが何者かは知らないが、このまま放っておくわけにはいかない」

 相手はそこで一旦区切ると、細谷くんに迫る。

「彼女を渡してもらおう」

「断る」

 凄みを利かせた相手に、細谷くんは毅然と拒否。

「ならば仕方がない。手荒なことは避けたかったが……力尽くで、奪うまでだ」

 冷酷に言い放った相手は、念力で以て銀色の大鎌を出すと、対戦モードに入った。相手が発する闘心のオーラに圧倒される。こうみえて俺、結構強いんですけど。とでも言うような威圧さえ感じる。死神の相手が放つオーラに当てられ、まりんの全神経がぴりぴりした。

 一方、まりんを背に佇む細谷くんだけは、いたって沈着冷静な雰囲気を漂わせていた。まりんにかけられた強力な呪いを、簡単に解くくらいだ。戦闘モードの死神を面前にしても、落ち着いていられるのだろう。

「言っておくけど、手加減なしだから」

 相手は冷やかにそう言うと、携えた大鎌を振りかぶって突進。

 キイィィ……ン

 細谷くんが瞬時に張った結界に接近する大鎌の刃が衝突、金色の波紋が広がった。

「へぇ……死神除けの結界なんて張れるんだ」

 わざとらしく驚いて見せた相手が、細谷くんの面前でそう言うのが聞こえた。

「この日のために、日頃から鍛練しているからな」

 細谷くんはそう、人差し指と中指を突き立てつつ、冷やかな口調で応じる。

「そうかい。でも……赤ずきんちゃんを護るにしては、とても脆いよね」

 冷笑を浮かべて細谷くんにそう告げた相手は大鎌に力を込めた、次の瞬間。


 ビシッビシッ


 力が増した大鎌の尖端から、細かい亀裂が生じた。金色に輝き、徐々に広がって行く。

 細谷くんの結界が……それくらい、彼は強い相手なの?

 固唾を呑んで見守るまりんがそう思った時だった。細谷くんを嘲笑う相手の顔が、突如としてむっとした顔つきになったのは。

「前から言おう言おうって、思ってたんだけどさぁ……いい加減、俺のことを『相手』呼ばわりするの、やめてくれない?」

「はぁ?この期に及んで、なに言ってんだおまえ」

 これ以上、亀裂が広がらないよう、念力で以て結界の強度を上げながら、細谷くんが呆れつつも面倒臭そうに言った。死神と言う名の相手は話を続ける。

「考えてみろよ。『ゆるほら――赤ずきんちゃんの物語――』が始まってもう二十八話めだぜ?なのにまだ、俺だけ名前が出てないのおかしくない?」

 今はそれどころじゃないと思うのだが……突飛な発言に、まりんは呆れつつも、なんとなく嫌な予感がするのだった。

「長編小説『ゆるほら――赤ずきんちゃんの物語――』における『もうひとりの主人公的存在』と言っても過言じゃないこの俺がまだ『相手』呼ばわり。これはどうみても納得行かないね!」

 腕組みした相手はそう、腑に落ちない顔でぼやく。

「じゃあなにか?死神太郎とか、死神花子みたいに呼んでもらいたいと?」

「ナニその大事な書類の記入例みたいな名前。つか男女ごちゃ混ぜじゃねェか!」

 チョー面倒臭くせぇ……

 今にもそう言いたげな顔で尋ねた細谷くんに、むかっ腹を立てた相手がすかさずそう、冷静につっこみを入れた。

「じゃあアレだ。ある日突然、空からノートが落ちてきて……」

「先に言っとくが、ライトでもねーからな」

 相手が、細谷くんが面倒臭そうに口にした物語のあらすじ冒頭で遮り、先読みして正解を口にした。その言動が癪に障った細谷くん、チッと舌打ちする。

「きみ、ぜってーやる気ないだろ」

「ぶっちゃけ、どーでもいいもん。おまえの名前なんて」

「それ言っちゃう?!このタイミングで、それ言っちゃう?!」

 やる気のなさ、百パーセントの細谷くんの言動でショックを受けた相手はすかさず、

「そんなこと言わないでさぁ……きみと僕の仲だろぅ?」

 ねぇねぇと言葉を付け加え、細谷くんにすり寄ると甘え出した。一瞬のうちに気が散った細谷くんが、自身で結界を解いてしまい、隙を見せた時のことだった。

「いちいち気色悪いんだよおまえは!」

 離れろ!

 飼い犬の如く、自身の体にすり寄る相手に眉をひそめ、細谷くんは怒鳴ると嫌がったのだった。

 いいなぁ……楽しそう。

 二人のやりとりを見ていたまりんは内心、心細そうに羨ましがった。

「それにしても、死神の彼……一体、どんな名前なのかしら」

 ふとその事が気になり、まりんが思わず疑問を口に出してしまった時だった。

「気になりますか?」

 背後から突如として、爽やかな青年の声がしたのは。その声にはっとしたまりんは、条件反射で振り向く。耳にかかるくらいの、ゆるふわにウェーブした銀髪。色白で、瑠璃色の目をした、優しい顔の青年がにこやかに佇んでいる。

「私なら知っています。あそこで人間とじゃれあう死神の名前を」

 この人……不思議な感じがする。

 両手を後ろに組み、にこやかに話しかけるその人に、まりんは何故か、かれるものがあった。

「その前に……あなた、誰?」

「申し遅れました。私はセバスチャンと申す者。以後、お見知りおきを」

 セバスチャンは片手を胸に添えると、丁寧に頭を下げた。白く細長い十字架のロゴが入った、瑠璃色のスカーフをネクタイ状に結わいている白シャツと黒ベスト、そして灰色の燕尾服に身を包んだ容姿端麗の青年。やんわりと微笑むセバスチャンはまるで、『なんでも出来る上質な執事』のように見えた。

「セバスチャン……さんは、ご存じなんですね。あそこにいる、彼の名前を」

「ええ、彼とは何かと、ご一緒することがありますので」

「それなら、教えてください。彼は、なんと言う名前なのですか?」

「それは……」

 不意に真剣な表情になったまりんの問い。充分じゅうぶんに溜めてから、セバスチャンは微笑みを絶やさず、返答した。

「ガクト・シロヤマ。これが、彼の名前です」

 意外にかっこいい名前っ……!

 嫌がる細谷くんと戯れる死神の名前を知ったまりんは、それ相応の名前に拍子抜けしつつも、衝撃を受ける。

 でも待って、その名前って……

 相手の名前に聞き覚えのあるまりん。しばし考えた後、はっとした顔で思い出したように「あぁぁぁ!!」と絶叫したのだった。

「あの時と全然……雰囲気が違っていたから、なかなか気付かなかったわ。もう……それならそうと、早く言ってくれればいいのに」

 誰に言うでもなく、顔をやや下に傾けたまりんはそう、もどかしい気持ちで呟いた。

「ただ単に、名乗るタイミングを逃していたのだと、思いますよ」

 優しく微笑みながら、セバスチャンは言った。

「彼にも、悪気はなかった筈です。そして私も……」

 意味ありげに言葉を区切ったセバスチャン。徐にまりんに近づき、ぐっとまりんの体を引き寄せた。

「赤園まりん。あなたには、ありとあらゆる世界を揺るがす、強大な力がある。故に私は、その力を最大限引き出せるようにするため、あなたを育てていきたい」

 怪しく光るセバスチャンの目が、にわかに動揺したまりんの目を捉えていた。

 セバスチャン。あなたは、気付いているのね。私が……堕天の力の使い手であることを。

 平静を装い、ポーカーフェースでセバスチャンの目を見詰め返すまりんはそう思わずにはいられなかった。

「……あなた、何者なの?」

 まりんの心の中を見透かしているような、なんとも言えない不気味な雰囲気を纏っているセバスチャンを不審に思い、凜然と睨めつけたまりんはそう、警戒するように尋ねる。

 まりんの問いに、不敵な含み笑いを浮かべたセバスチャンは、静かに応じた。

「あなたには、知る必要のないこと。とだけ、お伝えしておきましょう」

 なによ、意地悪。

 まりんは不愉快な目つきでセバスチャンを見上げた。

「それはそうと……いい加減、離してくれません?」

 むっとした表情で、まりんは刺々しく掛け合う。

「申し訳ございません。ですが今は、これがちょうど良いのでございます」

 これがちょうどいいなんて。セバスチャンは一体、なにを考えているの?

 得体が知れない男性にハグされたままと言うのは、どうもいい気がしない。寧ろ、気分が悪くなって来る。

 事実、セバスチャンに体を抱き寄せられた時から、まりんは気分が悪くなっていた。頭痛やめまい、全身のだるさに気持ち悪さがプラスされ、風邪で高熱を出した状態に近い。

 一刻も早く、彼から離れなければ、命に係わる。

 そう思った矢先、高熱が頂点に達したのか、急速に体が楽になった。

「存外、脆い力だったようですね」

 意識が朦朧とする最中、冷めた口調で呟く、セバスチャンの声がまりんの耳に届く。

「ただ今をもって、細谷健悟との契約を解除。代わって私、セバスチャン・パティンソンとの契約が完了いたしました」

 契約完了……?それも、セバスチャンとの??

 徐々に意識がはっきりとしてきたまりんは、包み込むようにハグするセバスチャンの腕の中ではっとした。たった今、セバスチャンはまりんとの間で結ばれていた細谷くんとの契約を解除したのだ。そして強引なやり方で、まりんはセバスチャンと契約させられた。まりんは、恐怖に襲われた。セバスチャンの正体が掴めていない今、そんな状態で契約を結んでしまったがために、何をされるか分からないからだ。



 ……マジか。いやいやいやいやこれは流石にヤバいでしょ。

 思わぬ光景を目の当たりにし、驚愕したシロヤマは内心、慌てふためいた。

 どうするよ……セバスチャンが相手だと勝てる気がしねェ……

 けど、このままじゃ……

 唇を噛んだシロヤマは、冷静になりつつ頭の片隅で思った。

 とりあえず今、言えることは……

「ついに……ついに俺の名前が世に出たぞォォォ!」

「ああ、そうだな――って、それをいま言うのかよ!」

 いきなり俺と向き合い、ただならぬ雰囲気でなにを言うかと思ったら……

 いヨッシャァァァ!!と大きくガッツポーズをしながら叫んだシロヤマに対し、思わずノリツッコミをした細谷くんは拍子抜けした。もう既に、主人公の赤園まりんが、半年前の過去を振り返るシーンでシロヤマの名前は出ているのだが、もっか細谷くんと一緒にいるシロヤマ本人はそのことを知らない。したがって、シロヤマは既に自身の名が世に出ていることを知らずに歓喜を爆発させているのだ。

「ここで言わなきゃ、いつ言うの?今、でしょ。俺はずっと、このタイミングを待ち続けたんだぞ」

 真顔で腕組みしながら返事をしたシロヤマは、

「まァ、冗談はさておき……」

(冗談かよ!とまた、細谷くんのツッコミが飛ぶ)話を切り出した。

「手短に、用件を伝える。一刻を争う、緊急事態だ。よって……」

 今までと打って変わり、精悍な面持ちで口を開いたシロヤマ。張り詰める空気が辺りを満たし、対面する細谷くんの顔に緊張が走る。充分に溜めた後、口を真一文字に結んでいたシロヤマが、出し抜けに言葉を付け加えた。

「まりんちゃんで、僕と握手!」

 かつて、「後楽園遊園地で、僕と握手!」と、当時人気を博していた戦隊ヒーローが、最後に視聴者に向けて手を差し伸べるテレビCMが流行っていた。細谷くんがまだ幼稚園児だった頃、両親が懐かしむようにそう教えてくれたのだ。おそらく、細谷くんの両親と同世代なのだろう。見た目は二十代なのに。細谷くんに握手を求めるシロヤマはまさに、その戦隊ヒーローと被っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る