第8話 反省


「イヴって言います!」




その男は教室に顔をひょっこり出し言った。




「八村君?大丈夫?お話があってきたんだけ──」




「飢鬼対策課の佐賀平子だ!八村シンをこちらに渡せ!」




イヴが言いかけた時、佐賀が口を遮った。




「はぁーあ。つまんないのぉー。もっと楽しいやつとヤりたかったのに。チェッ…」




イヴは退屈そうに軽く舌打ちをした。




『佐賀さん。気をつけろ。見たことない飢鬼だ。』




「…どうでもいい!蓮は援護射撃だけ!」




『どうでも良くない。今は任務だ。ここはコンビネーションを取らな───』




「だーかーらっ!いいっつってんの!」




佐賀が通信を乱暴に切る。




「ぉ?仲間割れ?いいじゃんいいじゃん。楽しくなってたねぇ…!」




イヴがさっきと打って変わって楽しそうに言う。




「佐賀平子…だっけ?ロームが確か言ってたなぁ…。かなり強ぇんだっけか。お手並み拝見ウォームアップと行きますか!」




男がそう吐き、触手を出す。


ドリル先端がドリルのような形状になっていて高速回転している。




「うぉッ!やっば〜…。やられたらひとたまりもないな…」




佐賀がつぶやき、デザートイーグルモデルの対飢鬼用駆除銃を取り出し、構える。




「ゲホ…ッゔッ!はぁ…はぁはぁ…」




「八村君!大丈夫か?…やっぱり…あの光景を見ればな…」




佐賀がシンの方向を睨み、呟く。




「八村君のことはどうでもいいから。俺とタイマン張れや。」




イヴが言う。




「…あぁ!やってやろーじゃねぇーか!」




佐賀がそう言い、イヴが佐賀のいる方向へ走る。




「肉えぐられて、骨だけになりなッ!」




イヴがそう言い、触手を前へ突き出す。


佐賀がかわそうとするが、風のような速度で突き出された触手は肩をかすめる。




「チッ…速ぇな…」




『司令室、至急第3部隊に応援要請を。』




佐賀が舌打ちをし、司令室へ通信する。




「あれー?仲間呼んじゃうの?タイマンじゃなかったっけか〜?」




イヴが佐賀に言い、地面を蹴り、高く飛び佐賀の後ろに回る。




「…クソが…!」




「貰いよ!佐賀平子!」




イヴの触手が佐賀の背中に迫る。


触手の先端が数ミリでも触れたら最後。高速回転している触手は肉をえぐり、辺りに血飛沫を飛ばす。


その時───




パーン!


と乾いた音が鳴る。




『お前イキッといてそれか?フッ…俺は見てることしか出来ないけど頑張れよ。』




































『長官。発砲許可を』




武内が通信で聞く。




『発砲許可、降りました。』






「なぁ舞。」




「…はい?」




武内がスコープを覗きながら畑中に言う。




「昨日俺が言ったこと、もう1回見つめ直したんだ


俺酷かったなって。ごめん」




「ぇ…先輩…そんな、気にしてないですよ!先輩は先輩なりでいいんじゃ───」




「周りが良くないんだよ!舞だって佐賀さんだって!俺が冷たいから昨日、変な思いにさせて…。」




「…先輩。それ……」




「ん?」




「荒口さんに相談しましたね…」




「ぇ…」




「ま、まぁ?人が良くなったなら私も嬉しいですよ!」




「は、はぁ。」




「と、とにかく!今は任務に集中───」




パーン!




「狙撃。命中。触手に当たった。舞。状況伝達を」




「は、はい!」
































「イッタァ〜…俺の触手がぁ…」




その乾いた音が触手を貫いたかのように見えた。


イヴの触手がちぎれかけになる。残った触手の肉の部分が糸のようになり、ちぎれた触手の部分が垂れ下がっている。干し肉を干しているような感じだ。




「形勢逆転。貰ったのはこっちだね。」




イヴの額に当てられた銃口。青い顔になるイヴ。




「ぅー…やっべ…」




イヴが呟く。




「けどさぁ…佐賀平子だっけ?樹液、分けてくれてありがと。」




「は?」




イヴがそう言い、佐賀の首を掴み触手を腹の近くへ持ってくる。




「はい。これでお互い膠着状態。どっちが先手打つかな〜。」




イヴがそう言った瞬間、イヴの肩から赤色の水の噴水のように血飛沫が飛び出る。




『佐賀さん。2回目だよこれで。学習しな。』




「…ふふ…学習能力ゼロの私に何がわかるんだろーねー。あと…由衣ちゃんもそろそろ到着だね。」




佐賀がニヤけながら言う。




「さぁさぁ!飢鬼さーん!出てこいよ!佐賀さんの手焼かせやがって!」




「また、形勢逆転されちゃったか…」




サブマシンガンを持った女が叫びながら入り、イヴがため息を着く。




「八村君…助けてよォ…形勢逆転されちゃった…それも2回…」




イヴがそう言い、シンの方を向く。




「はぁ…しょうがねぇなぁ。」




「?!」




シンが立ち上がり、言った。それに驚き、その場にいた全員声が出ない。




「で?見苦しい戦い繰り広げてたのはどちら様で?」




シンが言い、イヴが口を開く。




「ぉ、俺じゃねぇよ?だって…なぁ?」




「そうかそうか。なら向こうの方始末しねぇとな…ってそうなると思った…か!」




シンがそう言い、イヴの腹を殴る。




「グッ…ゔ…ガハ…ぁ」




イヴがうずくまり、倒れる。




「やっべぇ…こいつ…八村シンじゃねぇなぁ…」




汗をかきながら佐賀が言う。




『佐賀さん。戦況報告を。』




『え?さっきまでうずくまってたシンが立ち上がってよく分からん飢鬼腹パンして飢鬼ぶっ倒れた。多分…逃げた方がいいかと…てか逃げたい!』




『逃げるな。撤退命令は出てない。』




「何通信してんだよ。佐賀平子。」




シンがそう言い、佐賀を睨みつける。




「ひっ…えっと〜…」




「まぁいいや。俺、お前と戦ってみたかったんだ。どう?1回やらない?」




シンが佐賀に言う。




「…」




「はぁ…黙ってるってことは…やるのね!」




シンがそう言い、触手を出す。




「…や、やってやろーぜ!佐賀さん!」




「あ…お、おう!」




女が佐賀に声をかけ佐賀が頷く。




「2対1?ま、いっか!」




佐賀が飛び出し、蹴りを入れるが、シンは容易く受け止める。




「その程度?しょーもな。」




シンが呟く。




「まだまだあるけど?」




佐賀が言い、足を巧みに動かし、シンの胸、顔、腹に蹴りを入れようとするも全て防がれる。




「相棒!出番───」




「おっと!それ禁止で!」




佐賀が言いかけたのをシンが遮り、佐賀の構えたデザートイーグルを殴り、窓の外に落とす。




「ぁ!…チッ!」




佐賀が舌打ちをする。




「じゃ、今度はこっち───」




「後ろ、気をつけな!」




女がシンの後ろに立ち、サブマシンガンを構える。




「チッ…つまんな…」




「待て!相手は───」




ダダダダダ…




無数の乾いた音が教室に響き渡る。


耳がキーンとなり、赤色の液体が床に流れる。




「ぁ……」

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