第3話 久々


朝、目が覚めると隣にいるはずのミユキがいない。


リビングにはカイトがいるようでどうやら朝飯を作ってくれてるらしい。




「おー、いい匂いじゃん。てかミユキ見てない?」




俺はいつも通りの雰囲気でカイトに話す。俺の中はいつも通りじゃないけど。




「ミユキか?あいつなら弟呼びに行ったぞ。」




カイトが箸を片手に俺に言う。


エプロンしっかりつけて、そーゆーところイケメンだし真面目だよなー……。




「弟?レオンか。あいつ学校来てなかったよな」




桜レオン。ミユキの弟だ。ミユキの1歳下で中一の入学したばっかの時にいじめにあって、不登校になったとか。


2年くらいあってなかったし顔合わせてみるのもいいかな。




「ただいまーっていうかシンの家だけど…、レオン連れてきたよー。」




ミユキが玄関のドアを開けて大声で言った。




「お、お邪魔します…」




レオンが気まずそうに、緊張してそうに入ってきた。




「レオーン!久しぶりー!」




カイトが走ってレオンに抱きつく。




「っ…!カイト…久しぶり…」




レオンが恥ずかしそうに挨拶した。




「そんな固くなるなよーっ。ほら、飯作ってるから。」




カイトがレオンをほっとさせようと優しい声をかける。




「ん〜…おはよぉ〜…。」




ナナがあくびをしながらリビングに来た。




「ぉ、全員揃ったな。じゃみんなで食べるか!」




カイトが先導して椅子に座り、手を合わせる。




「いただきます。」




食卓に並べられた食パンとハム、目玉焼き。


みんな美味しそうに食べてるが俺にはとてもそうに見えない。食えない。食いたくない。まずそう。絶対まずい。




「ん?どうした?シン。手進んでねぇじゃん。」




カイトが俺を気に止めて、聞いてきた。




「あぁー…俺、そんなお腹空いてないんだ…ハハっ…」




俺は苦笑いをしながらカイトに答える。




「あの…1個聞きたいんだけど…さ…」




レオンが口を開く。




「昨日…なんであんなことあったのに…そんな笑っていられるんですか…?絶対…なんかトラウマとか……あ、ごめんなさい。急にこんな話…」




「…」




確かにそうだ。俺だって絶対何かしら引っかかるものがある。




「な、なぁレオン。敬語やめてくんない?なんか、違和感あるから。もっと距離近く置こうよ。」




カイトが口を開く。


いつもそうだ。カイトがなんでも先導してやってくれてる。俺だって何か出来ることがあるかもなのに、あいつは先走ってばっかで正直鬱陶しい。




「あ、うん…」




レオンがコクリと頷く。




「よし。飯食べ終わったら駅行って東京まで行くぞ。」




俺がみんなに言う。


東京 新宿 飢鬼被害特別支援高等学校。




全国で飢鬼の被害にあった学生を保護する施設。


国から特別に許可を得て作られた支援学校。


作ったのは飢鬼対策課と呼ばれる団体。




俺らはそこに行くことにした。


分かっているのはそれだけだが、そこで保護して貰えるならば行くしかない。










午後2時。


福岡駅にて




「よし、あと新幹線乗って東京までだ。たぶん…4時間くらい乗っとけば着くだろ。」




俺がスマホで電車の時間表を見ながら言う。




「よーし!行こー!東京!東京!」




ナナがはしゃぎながら言う。




「そういや、ナナとカイト親とかに言ったの?」




ミユキがカイトとナナに聞く。




「え?俺は父さんが東京にいて仕事してて、母さん家にほとんどいないからほぼ一人暮らしよ?親に許可なんて取らんくても大丈夫。」




「私は親に言ってあるよ。許可とるために電話したら泣きながら電話でてきて、安心したんだろね。」




カイトとナナが答えた。2人にも事情があるもんだ。


家族関係は俺にはわかんない。小さい頃に親が死んでるから。






駅への入口を歩く。人混みで目眩がしそうな通路を歩く。


しばらく歩いていると全身怪我だらけの女性がいた。




あの人…。夢で見た人だ…。


ボブの髪の毛に隊服みたいなの着てる。


すると、向こうがこちらに気づいたようでギョッとした顔で俺の事を見る。


なんだよ…と思いながらも道のりにそって歩く。


するとその女の人は着いてきて、後ろからいきなり俺の肩に手を置いた。




「君。ちょっといいかな…?飢鬼対策課の佐賀平子って言うんだけど…、もしかして──」




まずい。飢鬼対策課って俺…殺される…?


直感的に気づいた俺はその佐賀平子という女性が話終わる前に言う。




「すいません…。人違いじゃ───」




「───八村シン君かな?」




俺はギョッとした顔をしながら振り向く。


走る…?逃げる?この電車逃したら…どーなる?




「シン?どーしたのその人。」




ミユキが俺が止まっているのに気づき、みんなを止め、俺に話しかける。




「あ、ごめん。今、この人とお話したいんだ。」




佐賀平子がミユキに言った。




「その前に、まず名を名乗るべきでは?」




カイトがミユキの前に立ち、佐賀平子を睨みつける




「ひっ…えーっと名前?飢鬼対策課の佐賀平子です…」




「え…?ぁ、ごめんなさい!南カイトって言います!睨みつけてしまい、ほんとに申し訳ない!」




佐賀平子が怯えながら名前を言ったかと思うとカイトが謝る。


なんでカイト謝るんだ…?




「あ!電車!やばいって時間!」




ナナが口を開いた。確かにあと20分しかない。


俺は掴まれていた手を振りほどき、急いで改札を通る。




「ねぇ!待って!まだ聞いてないことが──…行っちゃった…。まーた長官に怒られる…」






























「よーし!何とか間に合ったー…あとはこっから4時間くらい乗ってれば東京だーっ!」




ゴウンと音がしたと思うと見えていた景色が少しづつ流れていく。そのまま流れの速度は早くなり、近くにいた人達がグングンと通り過ぎていく。


見慣れていた街の景色から一変して、どんよりとした街に入っていった。




















数時間前──




「よーしっ。ヴィルさーん。ホテル行こっか。仕事も終わって、サンプルも持ったし、」




ロームがウキウキしながら言う。


ロームの隣にいる女、ヴィル。2人とも、飢鬼だ。




「にしても、ちょっと荒らしすぎじゃない?わざわざ、FMの姉妹会社襲って、サンプルゲットなんてさ。」




ヴィルが荒れまくった部屋を一望しながら言った。




「よし、ロームかえ───」




「シーッ…」




ヴィルが言いかけた途端、ロームが遮る。




スタスタスタスタスタスタ…




上階から足音。


数名来ている。


足音がどんどん近くなる。




「よし!戦闘態勢入っとくかー!ヴィルさーん?準備オーケー?!」




「おうよっ!やってやろーじゃねぇか!」




ロームとヴィルが大声で叫んだかと思うと、隊員たちがドアを蹴破り入ってきた。




「飢鬼対策課の佐賀平子だ。てめぇらを潰しに来た!」




「ハハッ!佐賀さん!久々じゃーん!でも、しょーがないなぁ…。やってやろーか!潰されるのは、お前らだけどな!」

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