89話目「超高身長の女の子と付き合っている女の子の話」

「ねえねえ、きみ読モ? 超可愛いね。いや、俺、一目惚れしちゃったんだけどさ」

 花奈は身長一四〇センチと小柄である。

 そのため気弱に見られがちで、駅前で突っ立っていればナンパにもよく遭遇する。

 お持ち帰りしやすそうと思われているのだろう。

 ただ――、

「あの、私の彼女に用ですか?」

 ナンパ男の背後からそう声をかけたのは花奈の彼女である遊真。

 そして、

「え? ――うわっ! え!? いや――あの――彼女? ――あ、いや――」

 遊真を見ればたいていの男は慌てふためく。

 なにせ遊真は女ながら身長が二〇九センチと超高身長なのだ。

 しかも肩幅も決して小さくなく、そこらの小男なら軽く殺せるかもしれない圧迫感を持っている。

 なので、

「いや、べつに……」

 このナンパ男も頭をかきつつも引き下がったし、たいていの場合も同様である。

 そして花奈は改めて遊真の腕に飛びつき、しつこいナンパ男など忘れ、デートを始めるのだが、

「ちっ。クソデカレズが――――グホェェッ!!」

 男は遊真に対して捨て台詞を吐いた直後に吹き飛ばされた。

「今なんつったァ!!」

 そう怒鳴る花奈に。

「ちょ、ちょっと、花奈……、私は気にしてないから……」

 遊真はおろおろと花奈を宥めるが、既に怒り心頭の花奈はそれを無視し、男の胸ぐらを掴む。

「テメェが勝手にナンパしておいて、なんだその言い方は? アァ!?」

 花奈は唾を飛ばしながら怒鳴るが、男は最初の一撃で気を失っていた。

 花奈は、空手の黒帯であったのだ。

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