87話目「姉妹百合にならないつもりの妹の話」

「あ、雪ちゃん。おかえり、今日は早かったね。部活は?」

「……来週からテスト期間だから」

「あ、そっかそっか。それじゃあ勉強で分かんないところあったら教えてあげるけど?」

「ん――、ありがと」

 それは学校から帰宅したばかりの妹と、妹を出迎えた姉の日常会話だった。

 姉の音羽はリビングでソファに腰掛け、のんびりとテレビを見ていた。

「あ、今ならお風呂あったかいよ」

 音羽は言う。

 この姉はしずかちゃん並みの風呂好きであり、今日も昼間から入ったらしいのだが――、

「……」

「雪ちゃん、どうかした? 顔赤いけど?」

 音羽は首を傾げたが、雪は「別に」と言って自分の部屋へと引っ込んだ。

 ただ、たった今の音羽の姿が目に焼き付いて離れない。

 パンツ一枚で、肌の九〇パーセントが露出されていた姉の姿を。

 豊かな胸としなやかに括れたウェストを持った姉の姿を。

 ――そういう趣味のつもりはないのだけれど。

 雪は自分の顔を覆った。

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