空は青を求めて
小林ナイン
Introduction
まずい。このままだと遅刻する…。
僕ー深月翔空は白い息を吐きながら懸命に走っていた。こうなったのも、昨日夜までアニメを見ていたせいだ…と怠惰な僕を恨む。街はもうクリスマスムード。この渋谷もクリスマスのイルミネーションだらけで、夜になると本当に目がチカチカする。独身の僕にとってクリスマスほど不要なイベントはない。
「く、信号待ちか…」
せっかく渡ろうとしていた目の前の信号が青く点滅する。このままでは本当にまずい。会社に遅れてしまう。昔から僕は怠惰だった。完全なる夜型人間。中学校のころはよくある友人に怒られていた。そんな懐かしい思い出を思い出していると、心なしか目の前で同じく信号待ちをしていた女性から懐かしさを覚えた。なんというか、背格好がどこかで見たことがある気がする。
ピッポピッポピッポピッポ…
信号の音がする。ぼーっとしているうちに信号も変わったようだ。そして、走りだそうとした、そのとき。視界の端に赤い車が見えた。車道は赤にも関わらず、止まる気配のないスピードだ。
「翔空は強くなったよ。君ならできるさ」
そんな懐かしい言葉が頭をよぎる。
僕は無意識に走り出していた。このままでは彼女が轢かれてしまう。
「あぶない!」
そう叫んで彼女の手を引こうとする。彼女が驚いて少し振り向く。しかし僕は彼女の顔を見る暇もなく走るのに必死だった。
「ふんっ…」僕は彼女の手を走りながらつかみ、止まらせる。しかし、全力で走り過ぎたせいだろうか。僕の足が止まらない。やばい!そう思ったその時だった。
ドシン…
背中に強い衝撃が加わるのを感じた
彼女は守れたのだろうかと思いつつも、段々と意識が遠のいていく。運動が得意じゃないとわかっていたのに。無茶しなければよかった。そう後悔しているうちに僕は意識を失った。
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