Act15 シーン1 タイムボカーン
ミーナは、聡の家を出てララがいる自分のマンションに急いでいた。
そして、その後ろから、聡と身体が大学生な美加島も全力疾走(ぜんりょくしっそう)で追いかけてきた。結局、二人は順子がいる聡の家にもいれないし、かといって、その辺で結果を待つ、という訳にもいかないのだ。なぜなら、身体を元に戻す為には、美加島と孝雄は手を握り合い、中身を入れ替える必要があるからだ。三人は走り出した。
「急ご! 段取りどーする」
「まず俺達は、ミーナちゃんの幼馴染だ!」
聡が提案した。
「あたし福岡なんだけど! 二人とも九州の言葉喋れる?」
「いや?」
「おれ 自信ない!」
聡は東京で、美加島は神奈川出身だった。気のせいか三人の走る速度が少し遅くなった。
「分かった。じゃあ 喋らなければいいわ!」
「どう説明する? ララちゃんに見つかった時、なんでさっき俺達逃げたんだ?」
美加島らしい冷静な突っ込みだった。
「それは恥ずかしがりやで人見知りだから! っていうのはどう?」
と言うと聡は前から来る人を避(よ)けた。
「それでいいわ! どっちが恥ずかしがりやの人?」
ミーナは、設定に無理があると思いながらも、話をまとめる。
「じゃあ 俺がやるよ」
「美加島」が立候補した。
「よし、じゃあ完璧ね、美加島さん! つまり孝雄君は恥ずかしがりやで人見知り!
両方とも九州から私に会いにきた友達で一緒に誕生日を祝いに来た!」
「わかった!」
「美加島」は大きく頷(うなず)いた。
「で作戦はどうする!」
聡がさらに戦略を詰(つ)めてきた。
「そーね! まず、ララとサキを孝雄から引き離す、そして真実を告げれば、能天気な孝雄だってわかってくれるんじゃあない、どう?」
「たぶん、大丈夫!」
聡は、親友の孝雄を信じてうなずいた。しかし、「美加島」はイマイチ納得せずに不安な顔をした。
「たぶん? で、もしあいつが俺と入れ替わろうとしなかったら?」と
「そんときは、3人で襲い掛かるのよ! 無理に握手すればいいわ!」
ミーナは、強気にランランと目を光らせた。
「強行手段か! 合図はどうする?」
「美加島」はもちろん強行突破に躊躇(ちゅうちょ)なくのってきた。聡も黙ってうなづいた。
「そうね、アドリブでいけるところまでいって、最終の合図は!「タイムボカン」三人がもう駄目だとおもった時につぶやくの! 三人全員が呟いたときが決行のときよ! どう? これなら絶対にタイミング合うわ!」
ミーナは、自信満々なドヤ顔で二人を見つめた。
「タイムボカーン?」
男二人は、作戦よりもそこに引っかかって首をかしげた。
「どうして「タイムボカーン」なの?」
聡が不思議そうな顔で聞いてきた。
「だって「時間切れ」って感じしない! だって「タイムがぼかーん」なのよ?」
ミーナ的には完璧な合図と思っている。
「確かに! 「タイムがぼかーん」だね!」
美加島は、心は大人なので? それともどっちでもいいのか? あっさりと受け入れた。
「あと、私がミーナに戻ってるのと、孝雄が、美加島さんなのは絶対に秘密にしとこうよ!」
「うん! 分かった!」
美加島はうなづいた。
「よし行こう!」
聡の掛け声のもと、三人はミーナのマンション目掛けて再度走り始めた。
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