第2話 起承転結の"起"
〈
「ごめん遅れた」
今は部屋にあった制服に袖を通し、準備を済まして鞄を持ち、朝ご飯を食べ終えたところだ。
ちなみにご飯は
〈
「もー、ゆう
玄関で急いで靴を履く妹もとい如月夏。
エロゲーなら絶対に、序盤から妹に萌える主人公なんて展開はない。ないのだが...
俺にとっては妹でもなんでもない赤の他人なわけで!意識するなって方がムリ!!そして男子校出身の俺には刺激が強すぎる。
いきなり朝からカワイイ女の子と朝ごはんを食べることになるとは...
〈如月夏〉
「ほら、ゆう兄ぃー!走るよ!」
〈優斗〉
「お、おう」
玄関を出て学校に向かう。
走りながらも思考を止めたらダメだ。
そもそも如月夏に先行させてるから道が分からないとかはないが、覚えなくては家に帰れなくなってしまう可能性がある。
目印になりそうな物を探す。
景色を見るだけでなく、スマホも使いながらマップも開く。
知らない場所でも、近くに何があるのか覚えておくと、迷子にはなりにくいはず。
ほう、家から商店街が近いようだ。走る方向と真逆なことから学校とは逆方向っぽいがこれからお世話になるかもしれない。
〈如月夏〉
「ゆう兄ぃなにキョロキョロしながらスマホいじってんの?...まさかこんな時までゲームしてるの?ほんっと好きだね〜」
しばらく走っていると、前を走る如月夏が少しペースを落として、横並びになり俺に話しかけてくる。
〈優斗〉
「いいだろ別に」
それにふわっととても良い匂いがした。こういうのってあまり妹キャラに対して使う言葉ではないかもしれないが、俺はいいのだ。
それにしてもこの子は恐らくあれだ。運動能力高い系の妹だ。恐らく成績も優秀な万能妹タイプ。
俺はこの距離で大分疲れてきたが、妹の方はまだまだ余裕がある。負けてられない。
道が分からないから横並びにならないように気をつけて、遅刻しないように走った。
⭐︎★⭐︎★⭐︎
〈優斗〉
「ここが...」
声が漏れてしまった。でもとても大きな学校で、木造の校舎がいくつも見える。
転生する前の俺の学校はこの学校に比べれば学校の面積は2分の1か3分の1くらいだ。
大きく"蒼桜"と書かれた校門をくぐり、校内を如月夏と歩いていく。
主人公の持ち物を調べた結果、どうやらこの
〈如月夏〉
「ふぅー着いたね。私はもう少しゆっくりできたけど、愛しのゆう兄ぃの為だけに走ったのです!」
〈優斗〉
「ん?」
〈如月夏〉
「いや、ん?じゃないでしょゆう兄ぃ。ゆう兄ぃは転入生なんだから、ちょっと早く行かないといけないんでしょ?」
〈優斗〉
「あぁー!そうだそうだ!ありがとうな、如月夏」
〈如月夏〉
「もう〜...ゆう兄ぃは職員室でしょ?私は教室だから。じゃね!あと学校終わったらお昼用意しなくちゃだから先帰っとくね」
〈優斗〉
「了解」
〈如月夏〉
「あとゆう兄ぃ。遅くなりそうだったら?」
〈優斗〉
「へ?」
〈如月夏〉
「へ?じゃない!れ・ん・ら・く!!わかった?」
〈優斗〉
「わ、わかりました!」
〈如月夏〉
「よろしい!じゃねー」
如月夏が足早に別れる。ということは目前にあるここの靴箱が...2年生用か。
つまり、俺がこの学校の2年生、そして妹である如月夏が1年生か。
少しずつ設定を理解していく中で、思いついたことがある。
他の日じゃなく、今日に俺が転生したのには理由があるんじゃないのか?という疑問だ。
俺にとって今日は、この
エロゲーにも当然、起承転結がある。それは物語にとって必要不可欠。
つまりだ。今日ほぼ間違いなく何か起こるはずだ。
この世界には、ヒロインが4人いる。
いつか見たPVの情報を頭の中で必死に再生する。
金髪の
妹枠の如月夏ちゃん以外のヒロインとも、今日なんらかのフラグが立つはずだ。
理由?そんなのない。それがエロゲーの定めだからだ。
できるなら全てのヒロイン毎のルートに行ってみたい。セーブロードとか...はさすがにないか。
だがその為なら、エロゲーの主人公のように振る舞う必要が当然ある。つまりこっからだ。ここからが俺の正念場だ。
できるできないじゃない。やるんだ、俺のエロゲー知識を総動員させて。
物語を予測しろ。これが俺の物語の起承転結の"起"だ。
⭐︎★⭐︎★⭐︎
〈???〉
「...セーブしたわよ」
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